2022年6月24日金曜日

青森県気質

 


「汝を愛し、汝を憎む」、太宰治が、自分の故郷、津軽に対する思いを発露した有名な言葉である。これは彼自身の偽らざる気持ちであり、故郷を離れると、堪え難いほど故郷のことを思い出し、懐かしいが、故郷に暮らすと、逆に息がつまり、もうここには居られないと思う。これは津軽を故郷とする多くの人々の声を代弁するものであり、東京に長年いて、老後は故郷の津軽に帰りたいと思っていても、いざ津軽で暮らしてみると、冬の雪かきや近所の悪口に耐えきれず、東京に戻ったというケースもある。

 

英語の集まりで、私が津軽人の悪口をしゃべっていると、別の先生が、「それは津軽というよりは全国どこでもあることではないか」、「津軽の悪口を言うが、他のところに住んでいないだけで、どこでもそうした問題点はある」と反論され、議論となった。そういえば今ニュースに話題になっている“ハシモトホーム”の賞状で社員を侮辱し、自殺に追い込んだことについても、こうしたパワハラの企業は全国いくらでもある。ただ令和の時代にああした笑えないようなジョークを平然として、笑いながら個人を宴会の場で侮辱をするような企業は、さすがに東京や大阪ではあり得ない。と言うのはまず、そうしたことはツイッターなどで流されると会社に大きな損害を与えるからであり、訴訟された場合に逃げられない証拠となるからである。頭が悪いとしか言いようがない(八戸本社の会社だが)。

 

太宰治、棟方志功、葛西善蔵、福士幸治郎、寺山修司これらは津軽人の典型で、優れた才能がある人であるが、わがままで、友人、知人としては実に迷惑な人物である。福士は東京に下宿すると、狭くで圧迫感があると、大家には内緒で窓をぶち壊し、さらに自分で材料を持ってきて増築する。太宰は好きな女性と何度も自殺を試み、葛西は周りの人皆から借金しては踏み倒す生活をしていた。異常である。

 

今回、議論になったのは、津軽人の甘えということである。ある知人は、不動産経営している奥さんの叔父さんに頼み、開業した。後で他の不動産屋に聞くと、あまり開業には向いていない場所であり、また土地価格も相場よりかなり高いという。普通、親戚であれば他人より便宜を図るが、逆のことが津軽ではおこり、もちろん親戚付き合いはなくなる。また長年の友人に診療所の冷暖房機器の設置を頼むと、信じられないくらい高い見積もりをしてくる。医者、歯医者には高く吹っ掛けてもいいと思うのだろう。そして友人でなくなる。また町内会費も医者、歯医者だけ高い。聞くと、金持ちから多く取るとのことだ。クレームを言うと、多分、近所中に歯医者のくせに町内会費に文句をつけたと言いふらすので、黙って払う(さすがに数年前には同じ料金になったが)。

 

こうした親類なら、友人なら、町内に住む住人なら、多分許してもらえるといった甘えがどうもあるようで、普通に考えれば、親類、友人、隣人であれば、他人以上に長い関係を求められるので、その関係を壊すようなことをしないのだが、どうも逆のことをする。同じように、長年、家の修理などで利用している工務店が急に高い修理費を請求したり、庭の管理費が急に値上がりすることがある。いつも安くやってるんだから、たまには高くてもいいだろうと言う論理である。もちろん逆に親類、友人に何かをしてもらって金がいるとなると怒る人がいる。知り合いなのだから安くしろと言うことか。これも甘えなのだろう。

 

長い関係を取りたい親類、友人、お得意さんには、困った時に頼る、あるいは頼られることはあっても、わざわざ関係を壊すような、あるいは壊す可能性のあることは極力避ける。ところが津軽では、そうしたことをしても親しい人であれば、笑って許してくれると思ってしまう。最初のハシモトホームの課長も、実際はそれほどパワハラするつもりではなく、社員なんだから少しくらいいじっても笑って許してくれると思ったのかもしれない。

 

よく考えると、友人に言われたように、こうした問題は多かれ少なかれ日本中どこでもあることだろう。ただ津軽では、夏と冬の寒暖差のように、極端な人が目立つために、県民性と思われてしまうのだろう。逆に信じられえないくらい優しい人がいるし、何をやってもお金を取らない人もいるのも津軽である。面白いところである。


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