2026年5月9日土曜日

一万時間の法則

 



映画「かくかくしかじか」は、漫画家、東村アキコさんの自伝的な映画で、大泉洋が演じるスパルタ教師、日高先生が圧倒的に面白い。日高先生の口癖は「描け、描け、とにかく描け」と叫ぶ。それに反発して主人公は仮病まで使って脱出しようと思うが、最後は結局、そのスパルタ絵画塾でひたすらデッサンの練習をする。

 

一万時間、何かに熱中して取り組めば、その分野のプロになれるという法則がある。この「かくかくしかじか」の原作者、東村アキコさんも大学卒業するまでは漫画が好きで、漫画家になりたいと思っていたが、漫画を描くことはなかった。本格的に漫画を描き始めたのが24歳の頃で、デビュー作を書いている。おそらく絵を描き始めたのは、日高先生の塾に行ってから、17歳頃からで、美術大学卒業までの5年間と、卒業後の2年間だけでは、多分に1万時間に達しなかったのだろう。その後、モーニングで連載を持つようになったのは31歳の時で、絵を描き始めて14年間でプロになった。デビュー後、漫画家として生きようと決意した後は、多分1日十時間以上、年間で300日、3000時間は漫画を描いたとすると、約4年で一万時間に達する。

 

私の場合、矯正歯科の患者を診ていた時間は1日で五時間ほど、年間220日として、1100時間、これが42年間で46200時間となる。逆に一般歯科の先生では、120人来る患者のうち1名が矯正患者、治療時間が30分とすると、年間で110時間、一万時間に到達するまでに90年以上かかることになる。本についてどうかというと、本格的に読書をしだしたのは大学に入ってからで、その後は、年間百冊読み、50年間、5000冊となる。一冊二時間として本を読んできた時間は、すでに一万時間に達しているだろう。一方、書く方でいうと、ブログを始めたのは20076月からで19年近くになる。ブログ数は1844件で、一編書くのに通常一時間ほどなので、1884時間、まあ2000時間くらいであろうか。さらに本を五冊描いているが、それぞれ、300時間くらいはかかっているので計1500時間で、ブログと本で3500時間くらいか。これでは死ぬまでに一万時間に達しないだろう。

 

とにかく描け、描け、だけでは、今はなかなか人がついてこないと思うが、どの世界でも経験、実践が必要なことは間違いない。多分、専門にして10年、一万時間が、多くの実例から必要な時間、期間なのだろう。私など、毎週1回、ここ15年くらい英語のレッスンを受けているが、午後7時間半から9時までの1時間半、5人で集まっているので、一人一人の時間は少ないとしても、1.5×50×15=1125時間となる。レッスン以外の日は1分も勉強していない。太平洋戦争当時、アメリカ軍のよる情報取得を目的とした日本語学校のカリキュラムでは14時間の授業が週6日、4時間以上の自習を戦前は3年間、戦時下は18ヶ月であった。3年間で7200時間、18ヶ月で3600時間となる。おそらく配属後も含めれば1万時間に達するのだろう。

 

もちろん個人の素質、教育システム、などにも影響するだろうが、どんな天才でも1ヶ月の練習でピアノやサッカーのプロにはなれず、天才の上の長期の練習をして初めてプロになれる。今後、AIの発達により何十年かけて習得した技能が一瞬でいらなくなる時代が来ると思うが、それでもAIで代替わりできない、そして長い年月の修業が必要なものはなくならないし、価値が今以上に出てくる。一万時間というのは結構長い時間であり、これからトライする人はよほどよく考え、AIの取って代わるものでない、生き残れるかを検討すべきである。逆に言えば、プロになるのに1万時間かかるような技能はAIに置き換われず、なまじ有名大学の文系に行くよりは、農家、大工、料理人、美容師、などの技能を1万時間学ぶ方が有望なのかもしれない。もし若く、一万時間かけるものはと言われれば、ギターやピアノのような楽器を選ぶであろう。一日一時間、年間300時間、大学生など時間があれば、もっと練習をすれば25年間くらいで一万時間に達するだろう。一生の趣味になる。もちろん仕事も、18時間のうち実働4時間、年間で1000時間働ければ10年でその仕事のプロになれそうなので、寿司職人、大工、左官、自動車整備など経験、技能を要する仕事であれば、それくらいは頑張りたいものである。


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