2026年10月4日日曜日

マウスピース矯正は終焉?


マウスピース矯正が、革命的な新しい矯正治療法として注目されるようになったのはここ十年ほどで、その後、あっという間に全国に広がり、治療する患者も多い。ところが実際に治療してみると、毎日、長時間使うのが大変、あるいは思ったように治らない、期間がかかるなどのクレームが目立つようになった。そのため、日本臨床矯正歯科医会が行なっている「矯正歯科何でも相談」のレポートをみると年々、マウスピース矯正についてのクレーム相談が増えている。さらに格安マウスピース矯正の代表的な歯科医院グループ、東京プラス歯科が負債37億円を抱えて倒産し、またデンタルオフィースXの夜逃げと集団訴訟の事件も目新しい。

 

マウスピース矯正のパイオニアであり、最大手のインビザラインを扱うアライナーテクノロジー社の株価を見ると、2021年度の最高値730ドルから今は143ドルと1/5に下がり、時価総額も半分くらいになっている。また従来のワイヤー矯正の分野から完全に撤退し、デジタル矯正、マウスピース矯正に舵を切ったデンツプライシロナ社はさらに深刻で、株価は60ドルから9ドルを割り込む状況となっている。同様に雨後の筍のように出たキレイラインなどの多くのマウスピース矯正はさらに悲惨な状態であろう。

 

問題なのは、もともとマウスピース矯正は白人向けであり、軽度の不正咬合、再矯正治療の多いアメリカをマーケットにしたもので、でこぼこの程度が重症で、口元の突出しているアジア人では適用がかなり限られてくる。多くのクレームはでこぼこが治ったが、口元が出ている、治っていない。日本人を含めて口元の突出を治したい、白人のようなすっきりした口元にしたい考えるアジア人は多い。友人の台湾の先生に聞くと多くの患者さんが口元を入れたいと希望するため、成人患者では80%くらいが小臼歯の抜歯症例と言っていた。実際、私のところもほぼ同様で、非抜歯で治療できるケースは反対咬合や軽度のでこぼこなどかなり限定される。そのためネットなどでマウスピース矯正で治療している成人症例は、矯正歯科医から見ると抜歯症例であることが多い。

 

成人になって矯正治療を受ける場合の一番のデメリットは、治療費が高いというだけでなく、装置をつけていることが目立つという悩みがある。この解消法として装置を歯の裏側につける舌側矯正治療があり、上手な先生にかかると綺麗な仕上がりとなる。ところが手先の器用な日本人と違い、アメリカでは舌側矯正は面倒なため、ほとんど普及しなかった。そこにマウスピース矯正が登場したので、アメリカの矯正歯科医はすぐに飛びついた。一方、日本では舌側矯正が発達していたので、これに飛びついたのは矯正治療をできない一般歯科医であった。彼らはそもそも診断ができないため、うまく治らない患者がどんどん増えていった。

 

さすがにここ2、3年で、こうした問題点が一般患者にも伝わってきて、きちんとした矯正歯科医院で治療をする回帰傾向となってきた。同じ高い費用を払い、長期間治療するなら信頼のおける矯正歯科専門医院で治療するという患者が増えている。はっきり言って、これだけデメリットがわかっていながら、マウスピース矯正を受ける患者さんはどうかなあと思ってしまう。どこで治療すればいいか、よく質問されるが、まずホームページをよく読むことを勧める。まず院長の経歴を調べる。大学病院できちんとした矯正の研修を受けていること、認定医、あるいはよりいいのは日本歯科専門医機構の矯正歯科専門医であること。さらには開業期間が長く、患者が多いところが良い。そこで治療している知人、友人から話を聞ければさらにいい。行きつけの歯科医に聞いて、紹介してもらうのもいいかもしれない。

 

一時はマウスピース矯正がワイヤー矯正を凌駕して、矯正治療の主役になると予想した人もいたが、これは完全に否定された。むしろ矯正歯科治療の一つの治療法としてどのくらいの割合を占めるかという流れになっている。矯正歯科専門医院ではせいぜい10-20%、それもワイヤー矯正と併用というもので、ワイヤー矯正が主役であることは間違いない。どうしてもマウスピース矯正をしたいという人は、必ずワイヤー矯正もできる先生のところで治療すべきで、最悪の場合、治療途中で、抜歯ケース、ワイヤー矯正に変更して口元を入れるということもできるし、しっかり噛むようにしてくれる。

 

矯正治療の主流であるワイヤー矯正をまともにできない先生がマウピース矯正をできるわけがない。患者を完全に舐めている。もし外科の先生、それも内視鏡の専門医で、普通の外科手術はできない先生がいれば、教えて欲しい。トラブル時にはどうしても開腹手術が必要なためだ。マウスピース矯正を行う一般歯科の先生の多くは、まともなワイヤー矯正ができず、不満足で抜歯してワイヤー矯正で直してくれと頼んでも、治せない、どころかしたこともない輩である。外科の例で言えば、虫垂炎の手術も一回もしたことがない先生が100万円も取って内視鏡手術、それも相当難しい手術、本人は難しいかもわからない状態で、していると思って欲しい。

 

1.日本人の成人矯正患者の多くは、でこぼこの是正だけでなく、口元をすっきりしたいという希望がある。それを解消するためには小臼歯抜歯をして、その隙間を利用して前歯を中に入れる治療となる。こうした治療については、マウスピース矯正よりワイヤー矯正が向いている。

2.抜歯をしない、マウスピース矯正しかしない歯科医院では、治らない、あるいは患者が満足しない症例が多くなる。

3.どうしても見た目が気になる場合は、装置を歯の裏側につけた舌側矯正歯科が第一選択である。

4.マウスピース矯正は、消滅することはないものの、適用が限られ、今後とも矯正治療に主役になることはない。

5.インビザラインの技工料が高くなり、中国製のエンジェルアライナーを使う先生が多くなっているが、アライナ社との特許戦争に入っている。


 

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