2007年7月26日木曜日
医療安全対策
今年の4月から医療法の改正に伴い、医療安全対策が各診療所に求められるようになりました。7月からは移行期間も過ぎ、院内での実施が必要です。内容は多岐に及びますが、医療機器の点検やヒヤリ、ハット事例の報告、感染対策の講習と実施などが盛り込まれています。歯科医師会の取り組みは遅く、先週くらいに書類が来て、いきなり実施するようにというものでした。いつも思うのですが、本当に対応が遅いと思います。
従来、矯正歯科では診療にほとんど観血処置(歯を抜いたり、神経をとったりなど)がないため、あまり感染対策はなされていませんでした。大学病院の矯正歯科ですら、いまだに治療に用いるプライヤーなど使い回しにしているところもあるようです。私のいた鹿児島大学では開院当初からすべての矯正器具を滅菌して使用していました。現在ではこのやり方も多数のところでやられていますが、30年前では、プライヤーをラックにいれてアルコール綿で拭くだけ、あるいは薬液に浸けるだけというところがほとんどでした。
当院でも必要なプライヤーを多数揃え、すべて滅菌の上、使用していましたが、グローブに関しては実はあまり使っていませんでした。ひとつは観血処置がないため血液を介しての院内感染はほとんどないこと、また事故として考えられるのはワイヤーなどによる針刺し事故でグローブでは防げないこと、細かな操作が難しいことなどで、これまで全面的な使用はためらっていました。この医療法の改正に伴い、当院でも遅ればせながら全面的にグローブの使用に踏み切りました。
グローブは大きく分けて、ラテックス、合成ゴム、プラスティックに分かれます。ラテックスが最も手になじみ、一般的ですが、術者のラテックスアレルギーの問題や子どもへのラテックスの感作が危惧されています。国立成育センターではラテックスは使っていないようですし、弘前大学病院でも外来を見てみるとプラスティックが主流になっています。当方でも、それでラテックス外のものを探していますが、なかなかいいものはありません。また矯正治療では金属の結紮線を使うことが多く、操作中にグローブに引っかかってしまいます。今のところプラスティックのものが矯正治療には向いているように思われ、製品の評価を行っています。
日本ではあまり話題になっていませんが、海外では歯科ユニットに使われる水質汚染が問題になっています。すなわち、ユニット内の配管に付着したバクテリア層のため、便所の水くらいに汚染されているというものです。欧米では細菌数などの規定がありますが、日本では水道水の塩素処理などでそれほど問題がないようです。最近のユニットではユニット内の水質を消毒するシステムがあるようですが、最も進んだやり方は下の写真のアメリカのエーディック社のユニットと思います。このユニットは2Lのボトルに入れた薬剤でユニット中の水質を消毒するもので、当然患者に使われる水も消毒済みのものをボトルに入れて使えます。タービン、うがい、シリンジなど使われる水はすべてこのボトルから供給できます。日本でもタカラという会社のユニットもこのシステムを使えるようですが、かなり補助的なものです(実はタカラはこのエーディックをまねたようです)。
いずれにしても国際規格に則った医療安全システムを従業員一同協力して完備したいと思います。
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