2008年9月10日水曜日

予約



 当院では開業以来、完全予約制で治療を行っています。開業前、弘前の先生に相談すると無断キャンセルや遅刻も多く、完全予約はなかなか難しいと言われました。ところがいざ開業してみると、ほとんどの患者さんは予約時間をきちんと守ってくれます。大変ありがたいことです。当院の予約の枠は、15分を一単位とし、通常の治療はこれに当てます。時間のかかる治療や説明、新患相談は、2コマの30分をとります。また口腔衛生指導(マルチブラケット装置)は4コマ、1時間を、マルチブラケット装置の装着は時間がかかるため、6コマ、1時間半をとります。なかなか平日の4時以降、土曜日は6コマ予約をとることはできませんので、夏休みや冬休みなどの長期休暇中や、どうしても無理なら学校を早退してもらい2時あるいは3時ころにきてもらいます。すべての治療は私がやっていますので、同時間に二人の予約をとらないことにしています。15分の治療が終わり、次の患者がきて、また15分で治療を終え、次の患者をみるといった順序で治療していきます。この順序が狂うと、次の患者さんに迷惑がかかってしまいます。そのため早めに来てもらっても、基本的には予約時間を優先します。

 時折、6コマの時間をとりながら、来院されない患者さんや当日になってから来れない旨の連絡がくることがあります。この場合、1時間半は完全に空いてしまい、全く無駄になってしまします。これは勘弁してほしいと思います。ただ無断キャンセル(連絡なくキャンセルすること)の頻度は週に一人くらいですが、1か月前の予約なので、忘れてしまうこともあり、このくらいの頻度はしかたがないと思います。

 日本語の予約という言葉は、英語では「reservation」と「appointment」に訳されますが、このふたつの言葉が完全に意味が違っており、「reservation」は場所の予約をさし、ホテルや劇場、レストランの予約の場合に使います。一方、「appointment」は人の予約をさし、取引先の人と会う場合や弁護士と会う場合などに使われます。当然、歯科の予約は、「appointment」にあたります。アメリカなどでは、このappointment の予約が大変きびしく、例えば弁護士に予約を入れ、来なかった場合は、後で料金が請求されます。ドイツなどでは保険治療が基本ですが、無断キャンセルの場合は歯科でも規定のキャンセル料が発生します。

 日本では医療機関で、キャンセル料をとっているところなどないだろうと思っていましたが、病院、医院でも認可を受ければ、予約診療費を保険外併用療養費の対象としてとることができるようです。実際は300円から3000円くらいの予約診療費を加算するようですが、特に料金はきまっておらず、掲示さえすればいくらでもよいようです。大きな病院に行くと、患者さんで混雑し、治療を受けるまで数時間もかかるようなところもあるようです。もともと具合が悪くて病院に行くのですから、これではかえって具合が悪くなります。歯科では治療が外科手術の準じ、時間がかかるため、ほとんどの歯科医院は予約制をとっていますが、医科では予約制をとっているところはまだまだ少ないようです。患者数があまりに多くて、予約制をとれないのが理由と思います。ただ医科の病気といっても急性疾患ばかりでなく、慢性疾患も多いのですから、完全予約とはいかないまでも、2時から3時までに10人といった、部分的な予約制はとってもよいと思います。実際、都市部のクリニックではこういった予約制の医院も増えてきているようです。

 子供の頃、父の歯科医院でも9時から始めるのに、すでに7時ころから玄関前に行列ができていました。今や歯医者も多くなり、こんなことは夢のような話ですが、患者さんにとってはずいぶんよくなったと思います。予約制をうまくするためには患者さんも予約時間をきちんと守ることが原則となりますが、歯科医も予約時間に来た患者さんを待たせない、その予約時間内で最大の治療をする技術が求められます。これは全く技術で、大学病院に勤務していたころ30分かかっていたことと同じことが今では5分でできます。保険診療は、もともと価格は抑え、いかに多くの患者をみるかという制度ですが、そろそろ欧米並みに一人一人に時間をかけ、予約制に基づいた治療になってほしいと思います。ただここで一番の問題は急患の扱いでしょう。以前、夜の8時頃、事故のため夜間診療を受けたことがありました。幸い問題はなかったのですが、受付でどんな患者さんが来るのかを見ていますと、ほとんどの患者さんは特に夜間くる必要のないようなものでした。3日前から便秘だとか、子供が朝から熱が出ている、1か月前から胃の調子が悪い、などといった内容でした。当然、開業時間内に来れたはずですが、仕事が終わってからと思ったのでしょう。予約制をする場合は、原則的には本当に急患で、他の患者さんにも、急を要する患者さんがきたので、申し訳ないが少し待ってほしいと言える患者さん以外は受け付けてはいけません。すなわち、予約なしで上記のような患者さんが来ても、断らなくてはいけません。患者さんからすれば具合が悪くなったから来たのに何だということになります。逆に予約通りに来た患者さんからすれば、予約なしで来た患者さんがどんどん治療を受けるなら、予約することがばからしくなります。ルールの周知と徹底が難しい問題と言えると思います。

 写真は歯の形をしたおしゃぶりです。赤ちゃんはわかっていないようですが、おもしろいというより、ややグロテスクなしろものです。

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