2011年5月22日日曜日

「新・弘前人物志」の市販


 このブログでもよく引用している「中学生のための弘前人物志」が再刊され、新たに「新・弘前人物志」として弘前市内の中学生にこの春、無料で配布された。実にうれしいことである。というのは財政上の理由で2004年を最後に発行が中止され、関係者からその発行を熱望されていたからである。たまりかね、2年ほど前には、やまと印刷が会社創立50周年記念事業の一環として発刊し、弘前市に寄付したのは一企業の社会貢献事業としての快挙であった。

 最初に刊行されたのが、昭和57年(1982)で、その後、内容を改訂し、昭和60年(1985)には「続弘前人物志」、さらに平成5年(1993)には「弘前人物志 第3集」が、平成10年(1998)には再び「弘前人物志」として2004年まで発行続けられた。実に22年の歴史がある、ある意味弘前を代表する本といってもよかろう。昭和55年生まれ以下、31歳以下の弘前市民には一応すべて配布されていることになる。ただ実際、中学の授業で取り上げられることは少なく、学校からもらってすぐにどこかにしまいぱなしになっているのであろう。

 内容としては、中学生にはいくぶん難しいが、高校生、大学生、一般向けと考えると、エピソードを中心にまとめられ、評伝などより、よほど人物像を把握しやすく、わかりやすい。千葉寿雄はじめ執筆者が、短く、わかりやすくという編集方針がはっきりしていて、それが冗長にならず、かえって優れた本となっている。私には故千葉先生の語り、想いが本にも反映しているように思える。

 これまで64名の人物が取り上げられ、その選択も山田兄弟が入っていないのは残念だが、幅広い分野から選ばれ、弘前の通史としての性格も含む。そういうことで、この本は、郷土史に興味をもつ、大学生、一般市民以外にも県外の方々にも是非読んでほしいものであるが、教材のため一般書店では一切扱っておらず、買うことはできない。どうしてもほしい場合は、古本屋で探すしかないが、売り切れの場合も多い。

 これまでにも、市販してほしいという要望もあったと聞く。商工会議所青年部でも以前市販しようとしたようだが、教育委員会の壁が厚く、許可されなかったようだ。「新・弘前人物志」の印刷の入札はインターネット上で公開されており、ササヌマ産業という会社が1880部を116万円という安い価格で入札している。300ページを越える本で、一冊600円くらいというのは、ほとんど利益はないであろう。教材としての価格かもしれず、市販する場合はこういった問題もでよう。また版権は市が持っているが、直接企画、執筆したのは教育関係者であり、あくまで教育に使う、市販は許せないし、これまでもその方向でしてきたという意見もあり、民間企業による市販は難しい。ただ「弘前市史」のように市から発行している本もあるので、全く前例がないわけではなく、やろうと思えば、「新・弘前人物志」も弘前観光コンベンション協会などで市販は可能であろう。

 郷土史に興味をもつのは偶然であり、うちの娘も大学のレポート提出で弘前のことを調べる際に興味をもったし、会社の退職後の趣味として郷土史を勉強するひとも多い。芸術家の奈良美智さんは、故郷を離れ、海外で活動するようになり、初めて出身地の歴史、人物に興味を持ったとも語っていた。他にも先祖が弘前出身で、県外、海外にいて弘前のこと、先祖のことを調べているひとも意外に多い。また東京の大学を卒業後、弘前に帰り、勤めたり、起業をしている若者の中にも、新しい観点で地元を愛そう、知ろうという動きもあり、こういった人たちにも「弘前人物志」は推薦できる本である。弘前検定の受験者の数からすれば、こういった人物史に興味がある人の数は多く、割合需要はあると思える。

 さらにインターネット上で情報を公開あるいは電子書籍化することで、カラー写真、地図、動画など複合メディアを連動したものを安価で作ることも可能であろう。また市販することで、インターネット上での露出は増え、検索件数は飛躍的に伸びる。それに伴いこれまで弘前に興味のなかった人々も、この本の存在を知り、読まれることで、弘前への関心も高まる効果があろう。

 是非とも、関係者のご理解をいただき、「新・弘前人物志」の市販を望みます。

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