2011年11月19日土曜日

歯科用デンタルレントゲン



ヨーロッパ歯科放射線学会のガイダンスを前回示したが、そのうちのデンタルレントゲン写真の部分をもう少しくわしく説明したい。

私のところはアナログデンタル写真を使っているが、矯正歯科専門なので使う量は限られている。ただ一般歯科医院で最もよく使われるレントゲン写真はこのデンタルレントゲン写真であろうし、大きさの割には比較的被爆線量は高い。

インターネット上で歯科医院を検索すると、多くの歯科医院でデジタルにすることで被爆線量を従来型の1/10に低減できたとしている。患者さんにとってより安全という訳である。ただこの根拠はあやしい。

アナログデンタル写真で使うフィルムは感度によりDタイプ、Eタイプ、Fタイプに分かれる。割合よく使われるのは、Dタイプであるが、近年被爆線量の低減からEあるいはFタイプを使用する先生も多くなっている。ヨーロッパ歯科放射線学会でもその使用が推奨されている。値段は若干高いが、普及されていない訳はあまり知られていないためであろう。

前述のガイドラインではE感度の線量を1とした場合の、デジタルシステムの線量は0.5から0.75、IPよりCCDの方が感度は高いので、CCDで0.5倍としよう。F感度のフィルムを使った場合は0.8倍であるから、FタイプとCCDデジタルを比較すれば、5/8、すなわち62.5%ということになる。約2/3と考えてよい。最近の某社のカタログ値では最新のCCDデンタルは性能が上がり、Dタイプの1/6としているが、これとてFタイプと比べると1/2くらいであろう。

CCDの受光部の大きさは、フィルムの2/3程度と考えれば、実質的にはF感度のフィルムとCCDの線量はほぼ同じと考えてよい。線量が少ないからといって、大臼歯部で2枚とれば、線量の総計はフィルムより高くなる。

かってこのメーカーは、今はもうない低感度のC感度フィルムと比較して、CCDデンタル写真は1/10という数値を出してきたようだ(http://www.geocities.jp/symyky1019/x-ray.html)。1/2とか1/3とかでは宣伝効果が弱いと考えたかもしれないが、ちょっとこれはひどい。同様に、パントモ、セファロ写真でも1/10という数値を出してきているが、これも希土類増感紙と高感度フィルムと比較した値ではなかろう。事実、IPを用いたデジタルパントモの線量は、フィルムと同じ、場合によっては高いという研究もあり、CCDを用いても、線量が1/10になることはないであろう。せいぜい1/2から2/3くらいの低減と推測される。

線量が1/10になるという誤解は、確かにメーカーのうたい文句を信じた歯科医側にも問題があるが、私自身、つい最近まで2004年に出されたヨーロッパのガイダンスの存在すら知らず、多くの先生方も同様であろう。こういったガイダンスは歯科医師会で会員に知らせるべきであり、少なくともE、F感度のフィルム、希土類増感紙の推奨、移行に積極的に関与すべきであろう。さらに言うなら、歯科メーカーもあまり医学的に根拠のない数字を広告に出すべきではない。某メーカーは2002-4年ころには盛んに放射線量が1/10になるという宣伝していたが、これだけHP上でこの数値が一人歩きしている状況は、患者に誤解を生む恐れもあり、正確な情報を伝える義務があると思う。

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