津軽の芸能と言えば、まず津軽三味線を思い出す方も多いと思う。確かに津軽三味線独特の音色、メロディーは一度聞くと、その迫力に驚き、引きつけられる。それ故、津軽三味線教室は、津軽にとどまらず、全国にいたるところにあり、昔いた鹿児島にもあった程である。さらには、海外では日本の三味線=津軽三味線のイメージが定着するほど、日本を代表する津軽芸能と言ってよい。
ただ地元にいると、こういった芸能はあくまで酒宴の余興として行われるもので、飲みながら、食べながら聞くものといった感覚が強い。津軽三味線の場合は、最近は高尚になり、何かパーティー、懇親会で演奏される時も、演奏中は飲食を中断して、じっと真剣に演奏を聞かないといけないような雰囲気となる。演奏が始まると、会話を止め、演奏に聞き入り、終了し、拍手して、宴会が再開となる。
もともと津軽の芸能は、歌、音楽、さらには踊りの3つが組み合わさったものが一番、にぎやかで、祭りのような楽しい雰囲気で、盛り上がる。最近はあまりこういった3つが組み合わさった余興は少なくなったが、昔は正月のめでたい宴会などではこういった楽しく、にぎやかな芸能が主流であったのだろう。多分、酔客からは踊り手に卑猥なやじが飛び、みなして大笑いしたのであろう。
津軽の手踊りの特徴は、最初から最後まで中腰で踊る。この姿勢をキープしながら踊るのはかなり体力がいるだろう。また男性からみれば常におしりの丸みが強調されることから、そこはかとない色っぽさがただよう。日本舞踊なような高尚なものでなく、祭りや宴会での芸であり、庶民の芸能であった。はでな動き、とくにその手さばきと足の運びは美しく、かつエロティックであり、伴奏の津軽三味線と歌い手との一体感は、ねぷたのじゃわめきと同様に津軽人の魂を揺さぶる。
県外の方は、あまり津軽手踊りを見る機会はないと思うが、毎年、青森市では手踊名人戦が開かれ、今年で43回目を迎える。津軽手踊りと言ったが、正式には南部手踊りもあり、名人戦では子供の部、組踊の部もあって、熱心なファンがいて地元テレビでは、民謡選手権も兼ねて「青森県民謡グランプリ」として放送されている。また子供に特化した大会としては弘前市で県ちびっこ手踊り王座決定戦というのもあり、青森県各地にある手踊り会の子供達が踊る。これも大人顔負けの美しい踊りを見せ、おもしろい。
ただこういった踊りを観光客が見る機会は少ない。本来はお座敷芸なので、大きな料亭の余興として、酒を飲みながら見るのがよいのだが、今や料亭はどんどんなくなっていて、地元民もめったに見ることはない。6月ころ、弘前ではよさこい祭りが行われ、土手町を中心に多くのグループが参加して、年々盛況となっている。ただよさこい祭りは、北海道のソーラン節と高知のよさこい祭りがミックスされたもので、全く津軽らしさがなく、個人的にはあまり好きではない。むしろ黒石よされの方がよほど情緒があってよい。津軽三味線の認知度は高まったが、津軽手踊りの認知度は低い。観光客の集まる場所、時期、例えば桜祭り、ねぷたの時期に駅前や弘前城内に特設会場を作り、演奏したらどうだろうか。市の観光課、コンベンション協会も津軽の総合芸能として、津軽三味線、民謡、踊りがミックスされた津軽手踊りの全国的、世界的なアピールを考えた方がよい。YouTubeにも正式な動画は1本もないのはさびしい。大会優勝者や名人の芸をきちんと動画として撮り、積極的に発信したらどうだろうか。
4 件のコメント:
うん!全くその通りだと思って読みました!
私は黒石生まれで、実家は津軽民謡を生業としているので、人よりは多く、民謡関係の舞台を見ていると思いますが、手踊りに関しては昔ながらの美しい所作の踊りが出来る人が減ってますよね。母が手踊りやってます、今でも舞台に立ちますが、やはり母の踊りは美しいです。小さい頃から、母の指先まで神経が通った美しい所作があこがれで、踊ってない時は普通の母親でひょうきんな人なのですが、舞台の母は女神様(笑
父は二代目今重造、弟は佐藤壽治、母は神明子といいます。うちの実家は福井県を拠点に活動しているのですが、どこかでお目に掛かるようでしたら、ぜひ演奏を聞いていただけたらと思いました。
津軽の手踊りは、本当に美しく、じゃわめくものです。こうした踊りを一度身につければ、海外に行っても何の器材もなしに踊ることができますし、喜ばれることでしょう。津軽三味線もそうですが、津軽手踊りは一般的な日本舞踊に比べて少しアクロバティック、派手な部分があり、外国人にうけると思われます。
もっと全国的に教室があってもいいように思えます。ただ腰をかなり落としますので、年配者は厳しいかもしれません。さらなる普及を期待します。
広瀬先生へ
はじめまして。
突然の投稿,お許し下さい。
私は,弘前大学で事務をしている浅利清一と申します。
先生のブログをみて,当方で企画している事業に合致した
内容であると思い,ご連絡しました。
この度,弘前大学では海外向けの「弘前・日本の文化」を実演して
いただく方を探しており,コンテストを開催します。
既に参加者を募集しており,もし,広瀬先生のお知り合いの方で,
津軽手踊り等にてコンテストに参加してもらえる方がいらっしゃいましたら,
ご紹介いただきたくお願い申し上げます。
詳細は,弘前大学のHPに掲載しておりますので,
一度,ご覧いただきたくお願い申し上げます。
※優勝者は,旅費を弘大負担で,本学学生・教職員と共に,
フランスボルドー大学へ一週間派遣予定です。
特にこれといった方を知っているわけではございません。津軽三味線や民謡の方は弘前にもいますし、何人かは面識もありますが、手踊りというと面識はありません。申し訳ございません。
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