2016年9月14日水曜日

矯正治療のスタンダード

昨年11月に行った時の熊本城、一刻も早い復興をお祈りいたします。


 青森のような田舎でも、海外から来たり、あるいは海外にいく方も結構います。当院の患者さんでも、アメリカに留学、転勤などで行く人や、逆にアメリカから日本に来る患者さんが合わせて10名以上います。

 まず日本から海外に行く患者さんでは、半年以内の留学、転勤の場合は、装置が入っている場合は、一旦、装置をはずし、保定装置にします。帰国後に装置を入れて再スタートします。また一年以上海外にいる場合は、英語で紹介状を書き、模型、レントゲン写真などの資料を同封して持って行ってもらいます。今はメールもありますので、メールでやり取りすることもあります。料金の清算をして、現地でいろいろな人に相談してもらい矯正歯科医を決めてもらっています。逆に海外から治療途中で青森に来る患者さんでは、全く紹介状や資料も持たずに来院される方が多いようです。アメリカ、ベトナム、イギリス、カナダ、韓国からの患者もいますが、紹介状はなく、料金の清算もなされていない場合がほとんどです。日本臨床矯正医会では転医のルールを決め、料金の清算などくわしく決め、患者さんに納得できるような制度を作っており、日本の矯正専門医でもこのルールに則った転医をしていますが、海外の専門医ではこうした制度はなく、有る意味かなりいいかげんな対応をしています。海外で治療を受ける場合は、こうした違いも十分に認識してほしいところです。

 一方、矯正器材は、アメリカ製品が多いことから、治療自体は継続性があります。ある例を述べると、私のところで1年半ほど矯正治療をしていた女の方がいました。旦那さんがアメリカに2年程留学することになったため、紹介状、資料を持たせて、アメリカの専門医を訪ねると、装置がそちらで使っているのと全く同じ製品だったため、じつにスムーズに治療の継続ができました。先日、帰国され、すでに保定装置になっていましたが、異国の地で矯正治療がスムーズに継続されたことを大変喜んでいました。

 10年程前、三沢の米軍基地を青森の矯正医と一緒に訪れたことがありました。確か、一般歯科医が3名、口腔外科医が1名、そして矯正専門医が1名いました。基地内での治療は普段、我々がしている内容と全く変わらず、そのままそこで治療しろと言われても全く問題はないと思いました。治療方法、治療器材がほとんど同じです。こうした事例は、アメリカだけでなく、ほぼ世界中同じであり、私もカバンひとつで、世界中、どこでも矯正医として開業することはできると思っています(言葉の問題は抜きに)。

 三沢基地での矯正医同士の会話は、この前出たアメリカ矯正歯科学会誌にこうした治療法、製品が出ているが、どうなんだといったことです。この雑誌は、世界中の矯正医に読まれている雑誌ですので、ほとんど時差なく、その内容を話すことができます。こうした会話を聞いているアメリカ人一般歯科医はおまえらの言っているのは全くわからないと言うのですが、これは当然で、すべて矯正専門医にしかわからないアップデイトな内容です。さらにここ30年、世界中の矯正歯科教室で若手に教えられているテキストは、プロフィットの「現代矯正歯科学」です。これが世界標準の教科書と言っても過言ありません。

 治療レベルで言うと、日本は世界でもかなり高いところにいます。もともと日本人は手先が器用な上、手を抜かないため、国際学会の症例報告でも日本から症例は高い評価を得ています。アメリカでは一日に100名以上みる矯正歯科医院も多く、ドクターを指示するだけで、実際の治療は歯科助手がするというところも多いようです。それに対して日本では患者数が少ないので、一人一人の患者の治療にドクターが直接の治療するケースが多いと思います。丁寧な治療なのです。

 若い時は、例えば、顎間関係の悪い、反対咬合、上顎前突では、アメリカではすぐに手術を併用した治療法が取られたのに対して、日本では何とか歯の移動によって治療する傾向があり、「こんな症例もアメリカでは手術をする」と少しばかにしていましたが、最近では私自身も手術を選択することが多くなりました。日本人、あるいはアジア人と欧米人の人種差は思ったほど大きくないと最近は実感しています。日本人は日本人の治療法があるといった意見にはあまり賛成しません。結局は人間に対する治療は国が変わってもそれほど違いはないものと思います。

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