先日、日本矯正歯科学会から、専門医、指導医、認定の資格証が届きました。専門医の更新は5年ごとで、3症例の提出が求められます。5年以内に出せばよいのですが、更新年に提出して落ちれば資格を喪失しますので、昨年の福岡での学術大会に提出しました。大会前日の朝早くに提出するため、前泊し、最終日の最後まで展示しなくてはいけませんので、その夜も泊まることになります。そのため都合、4泊、福岡のホテルに泊まることにしました。
審査が終わり、次の日に会場に向かうと、症例ファイルの上には“不合格”の紙が三枚、“タイトルがありません。次回、修正して持ってきてください”との説明がありました。一例はプラス、重ねあわせミスです。久しぶりのショックです。わずか一行の書き漏れです。1分もあれば修正できます。以前、2年間、専門医試験の補助官を勤め、実際に症例の評価、合否にも関わりました。当時は、修正項目があり、その場で直せるものなら、こっそり提出者に耳打ちして直してもらったものでした。さすがに頭にきて、その日、質問コーナーがありましたので、あんまりだと言うと、今回は更新者が多く、修正時間がないので、一律に不合格、保留にしてもらっている。修正箇所を直して来年提出してほしいとのことで、納得はいかないものの、了承しました。となると福岡に4泊もいることになり、まず福岡に何度も来たが、行ってないところ、太宰府と九州博物館に行きました。次の日は、熊本まで新幹線で1時間くらいで行けるというので、熊本城を見てきました。震災前の熊本城をみられてよかったと思います。
今回も1か月前から準備し、写真もすべて新しくプリントし直しました。徳島大会もやはり4泊ですが、徳島には観光地がほとんどないことがわかっていましたので、徳島に2泊、実家の尼崎に2泊し、バスで徳島に行くことにしました。
今度は、無事に合格。やれやれです。この歳で試験を受けるのは大変ストレスのかかることで、症例展示会場では、ベテランの先生方とそうした話で盛り上がりました。ある先生は、やはり記入漏れで不合格になり、学会後1週間たってから体調を壊したとのことですし、ある真面目な先生はファイルに自院名がひとつ載っていたため不合格になり、その晩はへべれけに酔っぱらってホテルに帰ってきた、ある先生はパントモ写真に日付がなく不合格、腹が立つので次回提出前まで一切見なかったなど、たかが試験ですが、精神的にはストレスがかかるものです。
日本矯正歯科学会の専門医試験の新規合格率は30%程度ですし、更新試験でさえも90%の合格率で、落ちる人も結構います。医科も含めた専門医試験の中でも難しい試験のひとつで、今年度の合格者も数名でした。ヨーロッパやイギリスの専門医試験を受けた先生の意見でも、症例の審査の厳しさは一番とのことでした。多分、日本人は完璧性を求めるからでしょう。きちんと小臼部が咬んでいない症例は落とされていましたが、アメリカの専門医試験ではある程度、治っていればOKです。確かに人間を扱う場合、術者の技術だけではなく、患者の協力度や癖なども関係します。いくらきれいに咬ましていても、癖、特に舌癖が強い人は再び開いてきます。一方、咬む力の強い患者さんの場合は、咬みあわせが甘くても、自然に咬んでいくこともあります。そうした意味では、きれいに仕上がった症例は、偶然という要因もあり、ある程度の症例数から選ばなくては出せません。
現在、専門医は300人程度で、今後もこうした厳しい制度化では大幅な増加を見込まれません。現在、他団体では、認定医を専門医に変え、世間的には“専門医”という資格の方が一般的です。指導医と専門医を“専門指導医”とまとめ、認定医を“専門医”とした方がむしろ現実的なのかもしれません。認定医は3000人ほどいますので、全国的には十分にカバーできるでしょうし、他矯正団体の専門医との区別もしやすいでしょう。専門医の先生の平均年齢はおそらく60歳くらいでしょうが、このままでは新たに専門医になる先生より、リタイアする先生の方が多くなる時代がくるかもしれません。
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