2016年12月4日日曜日

弘前新美術館





 弘前市の新美術館構想については、このブログで何度か書いた。2020年開館予定で、すでに建築計画の概要は決まり、具体的な方向に向かっている。予算は40億円、そのうち美術品購入費に3億円を当てる予定で15点ほどの美術品購入を考えているという。

 私からすれば、吉野町のレンガ倉庫がうまく美術館に改築されれば、それだけでうれしいことであるが、その内容については、一般市民にはあまり知られていない。市長が土木畑の人だけに、建築、周辺の整備計画については、かなりはっきりした概念がすでにできており、また新美術館のコンセプトについては“(仮称)吉野町文化交流拠点の整備方針(案)”として今年の2月に出ている(http://www.city.hirosaki.aomori.jp/jouhou/kocho/p_coment/yoshinoseibihousinan.pdf)。

 これらを元に具体的な内容を推測すると、作品はコミッションワーク(依頼製作による恒久展示のアート作品)が中心になるようで、おそらく以前に行った奈良美智さんの“A to Z”のような大掛かりな作品を指すのであろう。絵画のような小さな持ち運びのできる作品は、美術館でなくてもデパートの展覧会で鑑賞できるが、こうした大掛かりな作品は、そこの美術館に行かなくては見られない。簡単に言えば”A to Z”のようなものが常設で展示されるのだろう。これは期待したい(おそらく奈良さんの作品が主体となろう)。さらに若者の芸術拠点として活用が目指しているようだが、美術学校のない弘前では、こうした活動拠点の存在は必要であるし、ここを契機に多くの美術家が出てほしい。また現在、”A to Z Memorial dog”は、作品に傷つける人がいて倉庫の犬小屋に入っているが、これは昔通りに野外展示になってもらいたい。

 一方、やや不安なのは、新美術館建設の顔が見えないことである。当然、市長が音頭をとっているので、市長が顔なのだが、それはあくまで建前で、このプロジェクトの実際の責任者がはっきりしない。この責任者のもとにプロジェクトの具体案が決まっていく。ところが、開館まですでに3年になる現時点でも、館長予定者あるいは新美術館構想委員長などの人物が見えない。例えば、3億円の展示物を集めるにしても、一体誰が決めるのか。美術知識のない市職員が決められず、美術運営業者に丸投げか。仮に現代アートを中心に15点を集めて、それだけではお終いなのか。さらにいうなら弘前市立博物館は弘前城内にある“歴史博物館”の性格を有するが、これまで市内に美術館がなかったため、受け皿として郷土出身画家の美術品が多く所蔵する。博物館とは全く無関係な新美術館と考えているのだろうか。責任者が決まらなければ博物館との話し合いもなかろう。

 あと3年という期間を考えれば、早急に館長予定者を探し、新美術館開設委員会を作り、市民の声をもっと反映すべきであろう。どういった美術館を作りたいのか。市民にも関心の高い事案であり、その考えを吸い上げ、生かすべきである。さらに言うなら、現代美術の奈良美智さんが弘前で行った”A to Z “では多くの市民がボランティアで手伝ったし、寄付を募った。こうした市民参加型のやり方は新美術館開館にも必要なことである。単純にさあ箱を作りました。後は知りませんではダメであり、あの美術館の建設、運用にも昔、自分が参加したという愛着を持つようなものにしてほしい。弘前市職員もがんばっているが、どうしても井の中の蛙ということが起こりがちであり、文化の拠点作りを目指すなら、新美術館建設の経過を積極的に情報発信して、若者、市民の意見あるいは協力を得るようなアクションをしてほしい。東奥日報、陸奥新報など地元マスコミももっと取り上げてほしい問題である。


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