2017年5月11日木曜日

最近の学校歯科健診



 5月は学校歯科健診のシーズンで、多くの小中学校で子供達の歯科健診が行われています。私も連休前に中学校の歯科健診をしてきました。学校歯科健診は、卒業して小児歯科教室に残ってからしていましたので、すでに35年以上やってきました。鹿児島大学にいた頃は、教室に開業医の先生から健診のバイト依頼がたくさんありましたので、医局員を手分けして、一人2、3校見るように配当しました。そのため、かなり早いスピードで健診をすることができるようになりました。

 最近、本当に虫歯が減っています。20年ほど前までは、小学校、中学校で、虫歯が全くない生徒はほとんどおらず、見つけた時には表彰したいくらいでした。当時はアマルガムという水銀を含む充填材を使っていましたが、平均で数本の処置歯、数本の虫歯がありました。子供達は結果を聞いて一喜一憂していましたが、ほとんどは要治療する歯がありました。そして学校から虫歯を治すようにという治療勧告書を渡され、歯科医院に行きます。そのため、5月から夏休みにかけて歯科医院は子供達で一杯になりました。

 ところが最近では、私が担当する中学校の場合で言えば、クラズの1/3くらいで虫歯がなく、あとの2/3もほとんど処置されていて、未処置の虫歯がある生徒は学年で1、2名しかいません。3学年、1クラスずつの学校ですので、結局、虫歯の勧告書は3、4名に出すのみです。一方、不正咬合については、正常咬合と考えてよい生徒は1/3、軽度の不正咬合が1/3、治療をした方がよい中程度、重度の不正咬合は1/3となります。そのため、不正咬合で治療勧告をした生徒は1クラスで10名程度、学校全体では30名くらいとなります。虫歯が3、4名ですから、不正咬合の方が10倍くらい多いことになります。

 さらに言うなら、最近の子供達の歯科治療はレジンという歯と同じ色をした充填物が入るため、うまい歯医者さんのレジン治療は、学校健診の暗い照明下では全くわかりません。学校健診にかかる多くの時間は、この歯にレジンが入っているか調べることにかかり、処置歯まで数える現行の歯科健診制度ももはや無意味になっているかもしれません。虫歯と歯肉炎、不正咬合だけを調べ、処置歯はカウントしないのであれば、今よりずっと早く健診できます。

 このように今の学校歯科健診では不正咬合に占める割合が高くなっていますが、実は不正咬合については、歯科医が見なくても悪いかどうかはわかるものです。学校健診で不正咬合を指摘されなかったと憤慨して来院される方がいますが、でこぼこかどうかは母親が見ればわかるはずです。こういうこともあり、最近では不正咬合のために初めて歯科医院にいくという子供も増えています。昔であれば考えられないことです。

 昔はツベルクリン検査やギョウチュウ検査が学校健診で行われていましたが、今は結核、ギョウ虫もほとんどなくなり、検査も廃止されました。その流れからすれば、学校歯科健診もいずれは廃止か、あるいはレジン充填などはきちんとした照明下でないと見えないことから、個別に歯科医院で健診してもらう方法になるかもしれない。

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