還暦も過ぎると、子供に何を残すのか、あるいは何を残さないかということを少しは考えておく必要がある。特に親のコレクションの始末については、子供に迷惑を掛けることが多い。親が好きで始めた趣味の多くは、子供にとっては全く興味がない。
悲惨な例を挙げておく。昔、尼崎の隣の家の二階には大きなベランダ(30畳くらい)があり、おじさんが長年、盆栽の世話をしていた。毎日の水やり、剪定など手間を掛けて育てたものであったが、おじさんが亡くなると、すぐに枯れ、そのうち家族のものがすべて捨ててしまった。盆栽に興味がない家族からすれば当然の帰結である。石の趣味も同様であろう。一方、母方の伯父さんの趣味はミニカー集め。亡くなって家に行くと、伯母さんから好きなだけ持って帰っていいよと言われると、兄弟して数台もらった。他の友人、知人も思い出の品としてあっという間になくなった。これはいいコレクションである。
ある画家が亡くなった。中央でもそれなりの評価のある画家であったが、作風が暗く、地蔵や死者のことが描かれている作品が多い。ある日、ロータリークラブの例会で、その画家の友人が何枚かのコピーを示して、誰か欲しいひとはいないかと言っていた。さすがにこうした絵に興味をもつ人はなく、結局、葬儀社が引き取った。ヌード、人物画も引き取り手はなく、画材では風景、静物画がよい。さらに最近は和室が少なくなったので掛軸は人気がなく、さらに大きな絵は飾る場所がなくだめである。小さな絵で、風景、静物画がよく、よほど有名画家で値がつく作家以外は、無料でもほしいと思う人は少ない。うちのお袋もそうしたことを知っているのか、展覧会用の大きな絵は収蔵場所のある私の家に送ってくる。貰い手が全くない屏風が3つもある。手元には、小品のみを置いている。かしこいやり方である。
学者の中には馬鹿みたいに本を集める(捨てられない)人がいる。専用の書庫まで作る人もいるくらいであるが、こうした本を残されると本当に困る。本人は大学や公立図書館で引き取ってくれると思っているだろうが、これは難しい。図書館にないわずかな本は引き取ってくれてもそれ以外は必要ない。また古書店では、こうした専門書は売れないため、買い取らない。私の場合は、基本的には年に一回、今後、資料的な価値はないと判断した本はすべて売ってしまう。五百冊ほど売っても二万円ほどにしかならないが、それでも捨てるよりはよい。郷土史に関する本は今後の少数ながら好きな人がいると思われるので、無料でもいいからまとめて引き取ってもらうのが一番よい。
他に、子供、孫や親類から喜ばれるコレクション(現金、不動産以外)は何があるかと言えば、時計はブレゲ、パテックス、ロレックス以外は無理、洋服、着物はほぼ無理、家具はフィンユールなど一部の名品のみ、ブランドバッグや宝石も厳しいだろう。要は若者に人気のあるものを残すべきで、それ以外はすべて捨てる覚悟がいる。つまり集める系の趣味は生前に同趣味の人と約束して、すべてコレクションを贈与すべきで、誰もいない場合は、少しずつ捨て、すべてで段ボール3個分くらいにすべきであろう。
私の趣味のうち、北欧陶器は今後も人気があるから、これは数有ってもOKである。キリム、アンティークの絨毯は多分専門店で引き取ってもらえるだろう。掛軸は偽物を捨て、本物は外国人の方にあげる。子供頃集めた切手は、たいして値上がりしていないので、積極的に普段の手紙に使った方がいいかもしれない。
とまあコレクションについて考えてみたが、結論としてコレクションはするものではなく、あれば早めに処分すべきで、するなら小さくて、かさをとらないものがよい。代表的なものとしては根付、版画、時計、コイン、切手などがよく、最悪なのは生き物、金魚、鯉、盆栽、菊、昆虫、鳥(オウム:50年も生きる)などであろう。
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