私の若い頃、1970年代には、若者向けの雑誌に、週刊プレイボーイ、平凡パンチ、月刊誌ではGOROなど水着、ヌード写真をメインとした雑誌があった。もちろんその頃から新しいカルチャーを発信するポパイといった雑誌も創刊されたが、若者の興味は服装よりは女性に向いていた。高校生頃になると親に内緒で週刊プレイボーイを買い、アグネララムなどに夢中になった。もちろんインターネットなどない時代で、大人向けの週刊誌、週刊大衆、週刊ポスト、週刊現代、週刊宝石なども性的な記事が多く、衰退した日本映画を日活ロマンポルノが何とか支えていた。尼崎の繁華街にでると、多くの大人達がキャバレーやスナックに通い、三和ミュージックというストリップ小屋も盛況であった。こうした性的な娯楽が最も活発だったのが、1960年から1980年ころまでで、インターネットが普及し始めた1990年ころからは、次第に廃れていく。まず平凡パンチが1988年に、GOROが1992年に廃刊された。もはや日本の若者向け週刊誌で女性ヌードが載るのは週刊プレイボーイのみとなり、本家のアメリカ、プレイボーイもフルヌードの掲載はなくなった。
こうした雑誌も含めて性的娯楽の衰退は、インターネットの普及で、無料で自由にポルノ画像、動画を見られるようになったことが原因という。本当にそうか。ある調査によれば、アダルトサイトの動画を見ている世代は、50、60歳以上、すなわち1970−1990年に青春であった世代であり、若者はあまり見ていないようだ。若い頃、プレイボーイや平凡パンチで女性のヌードを見ていた世代が老いても、インターネットでそうした画像や動画を見ているだけで、若い世代は性的なものに対し、それほど関心がなくなっているのでないだろうか。かって心理学者のフロイト、ユングは人間の性的エネルギーを理論根拠にしたが、現在ではもはや人の心理作用を性的なエネルギーで説明するほど、強い要因ではないように思える。誤解を与えるかもしれないが、強姦の件数をみると、平成17年では2076件であったのが、平成26年には1250件に減っている。さらに言うと、検挙者の年齢構成は30歳以下が平成17年では70%であったのが、平成26年では50%程度になっており、逆に40歳以上の比率が10%から25%くらいに増えている。もう少し範囲を広げると、昭和33年から昭和43年まで概ね6000名前後を推移しており、これに比べて今では、件数はほぼ1/5程度になっている。これは性欲の強い若者の強姦犯罪が極端に減った結果によるのだろう。ちなみに欧米の強姦件数をみると、アメリカでは1973年が51782件、2002年が95047件と倍増している。同様にイギリスでも1995年が5000件、2004年が12903件、フランスも1995年が7350件、2004年が10506件、スウェーデンでも1980年が8318件、2014年は9747件といずれも増加している。世界的にみて日本のような件数が1/5になった国はない。もともと少ない国であったが、近年ますます減少している。
こうした性犯罪の減少を警察の防犯活動の成果と見るのは難しい。むしろ日本の若者の性的欲求が低下したと考える方がわかりやすい。草食系男子という言葉があるが、うちの診療所に来る男子の患者をみても、おしゃれで、清潔な人が多い。おそらく部屋もきれいにしているのだろうし、多分、パチンコやマージャンなどの賭け事もしないのだろう。男性の女性化というよりは男性、女性の中性化のようになっており、女性の中でも服装にだらしなく、大まかな人もいるし、昨今話題になるような秘書を怒鳴り散らす女性議員もそれほど違和感はなくなった。男性、女性といったステレオタイプのイメージがなくなったのだろう。受け身の女性は、もともと男性に比べて性欲は少なく、雑誌やビデオを見てムラムラとなるようなことは少ない。現代の日本男子は女性と同程度の性欲になったと言えよう。若者の性欲は、兄弟、団体、社会の中で、醸成されるものであり、家庭内、母親との関係しか、醸成する場がないことが原因かもしれない。知っている限りの国で、男性が理髪店でなく、美容院に行く国は少なく、ここ数年、近くの数軒の理髪店も若い男性の姿を見かけない。またむだ毛が気になって永久脱毛する男性も多くなっているし、化粧水などで肌の手入れをする男子も多い。未来の日本は、ユニセックス化がますます進み、出産も体外受精がメインとなるかもしれない。
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