2019年11月17日日曜日

深浦のマグロ、鰺ヶ沢のヒラメ、岩崎のズワイ

深浦のマグロ
貨客混載

貨客混載


 先日、講演会のために鰺ケ沢に行った。鰺ケ沢のホテルグランメール山海荘には2度ほど、今年も正月に行った。ところがいつも駅から送迎バスでホテルまでに行くので、鰺ケ沢の街中は知らない。今回、電車の発着の関係で講演の2時間ほど前に鰺ケ沢駅に着いてしまった。そこで、駅から遠いが講演会場まで30分くらいかけて歩いた。せっかくなので鯵ヶ沢の新名物、ヒラメのヅケ丼を食べようと“たきわ”という店に行った。鯵ヶ沢港のそばにあるお店で店内ではジャズが流れている。ここのヅケ丼は、昨年、グランメールで食べたものよりヒラメの身も厚く、甘くて美味しかった。あっと言う間に平らげたが、急に天候が変化して、外は嵐のような状態となった。この店から講演会場までは歩いて78分かかるため、こんな悪天候では歩けないと判断し、店で雨宿りすることにした

 隣町の深浦では、最近、マグロをメインとしたマグロステーキ丼を売り出している。マグロといえば、大間が有名だが、深浦もマグロの漁獲高が多いので、町おこしとして深浦町もマグロ料理を売り出しているし、深浦マグロのブランド化を行っている。鯵ヶ沢はどうだと店主に聞くと、鯵ヶ沢でもマグロは取れると言う。メニューにマグロ丼もあったが、普通の冷凍ものかと思って頼まなかった。店主にすれば当たり前のことで、イカ、ヒラメ、マグロともに地元物であるが、観光客からすればわからず、少なくとも“目の前の港で水揚げされた鰺ヶ沢産マグロ”くらいの説明は欲しかった。今度は、マグロ丼を食べることにしよう。

 帰りに鰺ヶ沢駅前のスーパーに行くと、深浦産のマグロが安く売っていた。北金が沢産のイカも美味しそうであった。弘前のデパートの鮮魚店に行っても、築地卸と行った言葉が並ぶが地元の、深浦産や鰺ヶ沢産の魚が並ぶことは稀である。他のスーパーに行っても、同じような状況で、案外、青森県内でも地元の魚が食べられない。前述したヅケ丼のおばさんに聞くと、港で魚が取れても、通年的に、ある程度の量、買ってくれないと魚は売れず、どうしても地元には卸せないと言う。さらに深浦の隣の岩崎港はズワイガニの漁獲高は全国3位だが、全く知られていない。岩崎港では、ズワイガニといっても大型で身が多い本ズワイではなく、身が少なく、水分が多い紅ズワイガ多く取れるため、主として加工品にされ、一般の魚屋に出回らないと言う。新鮮な紅ズワイガイはとても美味しいのだが。

 青森県は三方を太平洋、津軽海峡、日本海に囲まれ、魚の宝庫である。このうち、西海岸の鰺ヶ沢、深浦などの漁港は、周囲に大きな町がないため、なかなか魚が捌けない。深浦では、地元のレストランなどでマグロ料理を出すように努力しているが、それでも集客は少ない。むしろ五所川原市や弘前市に積極的にサテライト店を出店して市場を開拓するような試みはどうだろうか。例えば、鰺ヶ沢や深浦漁港が共同して、その日とれた魚を朝の五能線に載せ、弘前駅まで運び、それをレストランが料理に使う。最近では各地で一般旅客電車に貨物も載せる貨客混載という概念が広がっており、バス、電車に乗客と一緒に荷物を載せる試みが増えている。朝方の五能線、深浦、鰺ヶ沢、五所川原、弘前を通る線の乗客はそんなに多くなく、貨物も載せることは可能である(車種によって出し入れが難しいが)。費用が高くなければ、保温箱に入った魚を数分間の停車時間で車内に入れることは可能だし、同様に弘前駅で素早く取り出すこともできる。駅前に料理店があれば、すぐに料理に使える。もちろん既成の魚卸市場からすればこうした直取引は反対するだろう。ただこうした試みが成功するなら取扱量も増え、こうした貨客混載ではさばききれず、市場で扱うことになる。

 いい素材があっても、それをうまく広告して売り出さなければ意味はない。青森県は自然に恵まれ、多くの宝物を有するが、いまだに十分に活用されていない。個人的には新鮮な岩崎港で水揚げされた紅ズワイを腹一杯、安く食べてみたいものである。岩崎港から弘前まで直線距離でわずか38キロ。将来、貨物用大型ドローンができれば20分の距離であるが、季節になっても弘前で紅ズワイは売ってもいないし、食べるところもない。あれだけ多くの北海道産の毛ガニが売っているというのに。

 こうした問題は、深浦、鰺ヶ沢、五所川原、弘前などの役場や関係機関が、広域な単位で検討してほしいところである。町おこしに色々な試みがされていて、深浦ブランドのマグロなどは良い試みである。ただ深浦に集客といっても限界があり、観光客でいえば弘前の方が多く、弘前に観光に来た客が同時に深浦産の美味しいマグロや岩崎漁港の紅ズワイを食べられれば、より満足は大きい。特に弘前は名物料理がないだけに、ここで西海岸の魚料理が食べられることは、双方に金が落ちる。あるいはこうした試みに共感する居酒屋などを募集し、今でも鰺ヶ沢産の魚を使った居酒屋があるが、正式な“鰺ヶ沢ヒラメ”、“深浦産マグロ”、“岩崎産ズワイ”といった町発行のマークを貼るのもいいだろう。色々なアイデアがあるだろうというが今回の感想である。

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