2020年2月6日木曜日

三菱国産旅客機、スペースジェットは飛ぶのか


 三菱、国産旅客機スペースジェットは、2003年頃から計画され、2008年に具体化され、当初は2013年頃に航空会社に納入とされていた。ところが三菱重工の混乱はひどいもので、どんどん納期は延期されていき、いまだにめどが立っていない。当初は三菱重工の日本人スタッフで開発が進められていたものの、アメリカの形式証明取得のためには、経験のなさが露呈され、開発経験のあるボンバルディアなどに勤めていた外国人のスタッフを集めだした。これでようやく軌道に乗り、何とか2015年の初飛行を行うことができた。このまま順調に飛行時間を増やせば、アメリカの形式証明も取得されると考え、天候の良いアメリカに機体を持っていき、そこで各種のテストを行ってきた。機数も4台の完成機を導入して、大きな欠陥もなく順調に飛行時間を増やしていた。

 飛行時間も、2019年の早い時期には一般に形式証明に必要とされる2500時間を超え、2019年度中には形式証明も取れて、納期となるはずであったが、飛行時間が3500時間を超えたのにいまだに形式証明が出ない。この理由としては、アメリカ連邦航空局の嫌がらせがある。もともとアメリカの形式証明であるので、アメリカの飛行機会社ボーイングのライバルとなる他国の機体の形式証明には厳しい。それでも伝統あるカナダのボンバルディア(カナダ)とエンブラエル(ブラジル)、エアバスは長年のノウハウがあるため、何とか新機種を開発してきたが、この4つの会社以外の新会社、それも東洋人の国の新規参入には、かなり警戒され、嫌がらせがあったと思われる。形式証明の申請から5年間は新規項目の適用が免除されるが200710月の申請から5年以上たつと、まず電子機器の配置に対するクレームがあり、さらに基準飛行時間が迫った20171月の段階で、900以上の設計変更を求めた。そのため大きなトラブルもなく、飛行時間が3500時間以上超えても、これら900以上の変更を行った新機種での試験飛行を求めた。2020年度の初めにようやく10号機と11号機が完成するが、それもまた変更点があれば、再度の形式証明取得の延期となり、全くラチがあかない。

 三菱のスペールジェットのライバル機、エンブラエルE-ジェットE2は、2010年に計画され、2016年に初飛行した。スペースジェットは、当初はエンブラエルの旧型飛行機に比べて燃費が低く、騒音も少なく、優位であったが、E-ジェットE2は同じエンジンを使い、ほとんど三菱の優位性はなくなった。むしろ形式証明取得は三菱より早いかもしれない。そうなると航空会社への納期も早まり、三菱スペースジェットの優位性は全くなくなる。さらにカナダのボンバルディアからの訴訟という嫌がらせがあったが、ボンバルディア自体を買収するという思い切った方法で解決した。アメリカ連邦航空局への食い込みが、まずかったのだろうし、さらにボーイング737Maxの最近の事故も連邦航空局への風当たりを厳しくし、より厳しい形式証明が求められるようになったのも痛い。

 ボーイングの新型機、787も含めて大体の初飛行から1,2年で形式証明が取れて、販売となり、スペースジェットのように初飛行から大きなトラブルがないのに関わらず初飛行から5年経っても形式証明が取得されないケースは少ない。ライバル社のエンブラエルEジェットE2もまだ取れていないことから、形式証明自体が厳しくなった可能性もあり、またボーイングとエアバスとの米国とヨーロッパの棲み分け、それに関連するアメリカ連邦航空局と欧州航空安全機構との形式証明の互換性が関与しているかもしれない。つまりボーイングが欧州の形式証明を取りやすくする代わりに、エアバスがアメリカ連邦航空局の形式証明を取れやすくする。それ以外のカナダ(ボンバルディア)、ブラジル(エンブラエル)、日本(三菱)に関しては、厳しくするということだ。ただ最近になってエンブラエルもボーイングに買収され、エンブラエルの新規開発機が人質に取られた可能性がある。そうだとするとロケット産業同様に、ボーイングとエアバスの寡占化を防ぐためにも、なんとかして三菱重工のスペースジェットは成功してほしい。さらにいうなら、こうした欧米人による企業の独占化を防ぐ意味からも、日本は中国、ロシアを含めた形式証明のカクテルを作り、アメリカ連邦航空局や欧州航空安全機構と対抗しなければ、航空機産業、ことに旅客機生産会社の寡占化がますます進むと思われる。少なくとも政府がこうした方向、例えば新しいアジア航空機安全機構を検討すると示すだけでも、両者に脅しをかけることができる。航空機産業というのはもはや一民間企業というものではなく、国家間の戦いを必要とされるもので、ここは日本政府も何らかの介入が必要と思われる。 

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