2020年11月3日火曜日

滅菌・消毒コーナーの改装

 

改装前

改装後


 厚生労働省から新型コロナウイルス感染症の院内の感染拡大を防ぐ取り組みを行う診療所に“感染拡大防止等支援事業補助金”が出ることを知ったため、以前から改装しようと思っていた滅菌・消毒コーナを直した。建具屋さんとなんども打ち合わせをして、狭いコーナをいかに有効に使うかということに頭を絞った。一番の改善点は、滅菌、消毒した器具の保管場所で、これは前回の保健所の調査でも指摘されていた。矯正器具は全てオートクレーブ、乾熱滅菌、薬液などで滅菌、消毒するが、それを保管する場所がなく、引き出しにしまっていた。紫外線殺菌保管庫などに入れておくようにと指摘された。こうした歯科用保管キャビネットは市販されていて、それだけをつけるのも一つの方法だが、いっそ滅菌・消毒コーナ自体が改装したいと考えていた。

 

 もともと歯科の中でも、矯正歯科は感染予防策が一番遅れていた分野である。矯正治療はワイヤーを曲げて口に入れるだけで、歯を抜いたり、根っこの治療をしたり、注射もしないので、あまり感染に対して注意を払っていなかった。昔、40年ほど前だが、ワイヤーを曲げるプライヤーも数本、ラックに入れ、患者さんの治療を終えればアルコール綿で拭いて再度使うのが普通であったし、ブラケットやワイヤーなども一回使ったものを再利用することもあった。1980年頃、鹿児島大学矯正歯科では、使用するプライヤー数を最低限に減らし、患者ごとにキットを組んで使うようにしていた。その当時、こうしたシステムをしていた歯科大学はなく、ほとんどの大学の矯正歯科、矯正歯科診療所では、プライヤーの使い回しをしていた。矯正治療には感染予防策をそれほど必要がないとされていたからである。今でも稀に円形のプラスティックのラックにプライヤーを入れて使い回しで使っている矯正歯科医院があるが、珍しい。以前、転医した医院がそうした使い周りのシステムだったので、他のところに変えて欲しいという患者がいた。

 

 もともと日本の歯科は、欧米に比べて感染予防対策は徹底されていなかった。欧米では今回の新型コロナウイルス以前も、感染防御ガウン、手袋、フェイスシールド(メガネ)、ディスポ機材などが当たり前のように使われていた。日本ではインプラントの手術など特殊な状況以外はここまでしない場合が多かった。欧米では30年ほど前にエイズが増え、特に歯科医院で感染したというキンバリー事件以降、こうした感染予防策が一般的になった。ところが日本では欧米ほどエイズ患者が増加しなかったので、感染予防策の対応が遅れた。ただ今回の新型コロナウイルスにより日本の歯科医も欧米並みになったと思われる。かなり重武装した歯科医の姿を見ても、最近は患者さんも驚かなくなったどころか、安心するようである。

当院でも、入り口での手指のアルコール消毒、体温測定、治療前のうがい、頻回な接触部分の清掃などは当たり前になってきたし、お恥ずかしい話であるが、以前は勝手に患者一人に手袋一枚として、手袋をつけたままカルテの記載などもしていたが、それもいちいち取り替えるようになった。もちろん全てのハンドピースはオートクレーブにかけている。空気清浄機の個数も増やした。

 

 患者さん同士が待合室で被らないように、基本的には同じ時間帯には一人しか予約を入れていないが、それでも家族数人でくる患者さんがいて、狭い待合室でソーシャルディスタンスが取れない場合がある。患者さん以外の付添いの入室を禁じる診療所もあるが、まだまだこの状況が続くなら、こうした対応も取りにくい。出来るだけ少ない人数で来て欲しいし、少なくとも待合室でも会話はご遠慮して欲しい。どうしたことか新型コロナウイルス問題が発生してから、急に患者、特に成人患者が増え、なかなか予約ができない状況が続いている。患者さんが増えているのに、混雑しないようにするのは難しく、予約に当たっては患者さんにご迷惑をおかけしている。



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