2021年5月11日火曜日

学歴と資格


 以前、東奥義塾の朝礼で、生徒の皆さんに学歴についてお話ししたことがあります。社会人講話というもので、前半は東奥義塾の歴史などを、後半では就職するためにはいい大学に入ることを勧めた内容でした。私自身、歯科医をしていますが、この職業は学歴がほとんど関係せず、患者さん自身、かかりつけの歯科医がどこの大学を出たかほとんど知らないと思います。医師の場合も、大学病院や大きな病院に勤める場合は学歴が関係しますが、個人開業となると、これもまた患者はその医院の先生がどこの大学を卒業したか知らないし、あまり興味がないと思います。たとえ、日本で最も入学の難しい東京大学医学部卒業の先生であっても、患者からすれば、全くそうした学歴には関心がありません。すなわち医師、歯科医、薬剤師、看護師など資格が必要な職業では、学歴以上に資格が重視されるのです。

 

 一方、資格が必要でない、一般会社の場合は、学歴が重視されるでしょうか。実際、会社に入ると学歴よりは実務能力、仕事で評価されます。どこの大学を卒業したかよりはどれだけ仕事ができるかを評価します。ただ会社に入るためにはある程度の学歴が必要となります。以前、ソニーは大学欄を空欄にして採用試験を行いましたが、結果的に採用した新入社員は例年以上に有名大学に偏っていたため、次の年からやめたようです。面積や筆記試験で採用するのは非常に難しく、勢い採用担当者からすれば、ある程度有名大学の卒業性の中から採用を決めた方が優秀な社員を得ることができると考えています。そのため学歴不要論が言われ始めて2030年以上経ちますが、いまだに就職では学歴が重視されています。

 

 実際、住友商事や東京海上などの有名企業に入る人を見るとほとんどは東京大学、一橋大学や早稲田大学など有名大学卒業者です。これは批判があっても厳然とした事実であり、欧米なども同様な傾向があります。アメリカなどは日本のような一斉の就職試験などはなく、学歴など無関係のように見えますが、日本と同じように有名企業に入るには有名大学を卒業していないと難しいようです。これは世界中の事実です。国立大学以外の私立大学で言えば、関東では早稲田大、慶応大、国際基督大、上智大、立教大、明治大、法政大、青山学院大、中央大、津田塾大、関西で言えば同志社大、関西学院大、立命館大、関西大くらいが、これに該当します。これ以外の大学となると、いわゆる有名企業に入るのは難しくなります。テレビの“ドラゴン桜”では、東大に入るため、落ちこぼれの高校生が懸命に努力しますが、早稲田、慶応、上智大学を除けば上記の大学は高校三年間を計画的に勉強すれば、大抵の高校生は合格できるレベルと思います。3年間、1時間余計に勉強する、あるいは少し集中力を高めるだけで十分に入学できると思います。こうした事実を早い時期から高校生に、はっきりと示すことは大事なことです。ストレートすぎて話にくいのですが、それでもしっかり伝えておく必要があります。

 なぜ、いい大学に入って、一流企業に勤めるのか、簡単に言えば、その方が楽に稼げるからである。もちろん才能と熱意のある若者は自分で起業して会社を作った方が良いのですが、それほどの才能なければ、一流企業の方が明らかに楽をしてサラリーが高いのは事実です。学校の教育者というのは、こうしたリアルな現実に蓋をして綺麗事で喋る傾向がありますし、高校生は高校生で、実際の社会の現実に目を向けません。進学校の生徒が有名大学に多く入学するのは、そうしたことを先生が教えなくても生徒自身が知っているからです。進学校の生徒の親も有名大学、一流企業出身者が多く、家庭でも当たり前のことになっています。一方地方の公立高校や私立高校では、こうしたリアルな現実を生徒たち自身がわからず、また教師、親も本音でしゃべりません。親が金がないので大学に行けないと嘆く生徒に限って、無理してつまらない大学に行くものです。一流大学も四流大学も授業料はほぼ同じなのですから、金がないのであれば、一流大学に行くべきですし、その方が育友会の奨学金も取りやすくなります。


 逆に資格取得は、資格が重要なため、出来るだけ、安くて、短く、簡単に取得できる方法を探すべきで、そうした情報も高校の教師は持ってほしいものです。事務職は希望者が多いのですが、左官、大工や自動車整備工になる若者は少なく、給与もよくなっています。昔のような怖い棟梁もおらず、優しく指導してくれので、勉強が苦手でも、根気のある生徒はこうした仕事も高校中に体験させ、資格をとる学校に行かせるのも教師の仕事と思います。

 親の中には、高校生になれば、親の言うことは聞かないと、全て、進路も含めて子供任せにする親がいます。高校生は人生の現実を何も知らないのです。親でなくても、大人がはっきりと社会、人生の現実を子供達に話すことは大事だと思います。


 

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