2021年5月15日土曜日

歯科のOEM製品





OEMとは、Original Equipment Manufacturerの略で、他社ブランド製品の製造、あるいはその製品企業を意味する。生産を委託する会社は、委託側が提供する図面や詳細スペックに従って自社の生産設備を使って生産する。製品は委託会社のブランドで販売する。

 

軽自動車では一般的で、スズキやダイハツの軽自動車が名前を変えて、マツダやトヨタで販売されている。歯科でも、昔はナカニシのハンドピースが他社ブランドで売られ、矯正歯科ではヒューフレディのプライヤーがユニテックの名前を入れて売られていた。こうしたOEMの製品は、デザインそのものも変えたりするので、元々の製造会社がわかりにくく。てっきり販売会社が製造しているように思える。このことが後々ユーザーの問題になる。

 

一つの例として、当院で使っている顎運動測定器のアルクスディグマIIという顎運動測定装置である。元々はドイツのZebrisというメーカーのOEMで、KavoおよびSAM社にOEMとして供給されていた。ソフトや本体にKavoなどの名前が入っただけの、ほぼ同じ製品である。現在、アルクスディグマIIはまだ販売されているが、製造元のZebrisでは三年前にすでに製造を中止している。Zebris社の顎運動測定器はその後も開発が進み、2013年からアナログーデジタルのWinJawシステムに移行し、その後、2015年からはデジタルーデジタルのシステムに、さらに2017年からはBluetoothを使ったワイヤレスに、2019年からはフルデジタルシステム、そして2021年からは超音波ではない、光学式のものに変わっている。世代でいうとカボのアルクスディグマIIは第2世代にあたるが、最新のZebrisの顎運動測定装置は第7世代となる。5世代前のものとなる。おそらくかなり前に、Kavo社がZebris社にOEM製品を依頼、生産し、その在庫をいまだに売っているのだろう。

 

こうしたOEM製品の問題点は、故障した場合、どこが直すかという点である。以前、ナカニシのOEMのタービンの場合、基本的にはOEM先で直してもらうのが原則で、オサダやGCなどのユニットメーカが修理を行っていた。ところが簡単な修理であれば、OEM先のユニットメーカで修理できるが、本格的な修理となるとお手上げとなり、修理不可能となる。もちろんOEM先のナカニシでは修理可能であっても、OEMの契約のせいか、そういうことができない。おそらくそうした保障費を引いた安い値段でOEM契約をしてまとめた台数を注文したせいであろう。

 

先日のブログで述べたが、当院のアルクスディグマが壊れ、修理できず、フェイスボー本体の交換となった。フェイスボー自体はマーカー(センサー)と基板、配線となっているが、Kavo社ではファイスボー自体を分解する修理技術がなく、本体交換となった。具体的に言えば、フェイスボーの上下の二つの部分が特殊な方法で止められ、それをはずせないのである。フェイスボーの内部が見られないので、たとえ断線であっても、フェイスボー本体の交換となる。おそらくは在庫製品の部品と共食いと思われが、少なくともいわゆる修理はしていない。もちろんZebris社に持っていけば修理が可能で、断線が原因であれば、安い値段で修理できるし、4つのマーカーが全て壊れることはなく、そのマーカーが故障すればそれを交換だけで済む。

 

軽自動車のOEMの修理はどうなっているかというと、同じく、基本的にはOEM先で修理するのが原則で、例えば、ダイハツのOEMであってもトヨタで修理する。もちろんむずかしい修理は製造元のダイハツに送ることもあるが、基本的にはOEMであってもトヨタの看板を背負っているので、修理はできません、あるいは分解もしないで、エンジンごと交換しましょうなどとは言わない。最近でこそ、歯科製品でもOEMは減っており、ユニットメーカもあえて自社のタービンにこだわらず、最初からナカニシと明記しているし、カボ社の滅菌器、スティティム900SciCan社のものとし、修理もSciCan社が行う。



* 動画はZebrisの最新型顎運動測定器で、七世代の光学式のもので、かなり小さくなっている。


 

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