私も前期高齢者の部類になり、すでに年金ももらっている。そんなこともあり、長い期間の矯正管理を要する患者さんは現在、断っており、来院希望の電話をいただいた患者さんのご両親には申し訳ないと思っている。骨格性反対咬合の場合は、高校卒業まで、男性では20歳くらいまでみていく必要がある。なぜかと言うと上顎の成長は10歳くらいに終了するのだが、下あごの成長は男子で、18から20歳まで、女子で16から18歳くらいまで続き、ケースによっては咬合が変化して、反対咬合になる。そうなると3、4歳頃から18歳までとしても15年、みていく必要があるが、とてもその年齢まで診療所を続けそうにない。またでこぼこ(叢生)や出っ歯(上顎前突)でも7、8歳で来ても18歳まで、約10年はみていかないので、これも厳しい。そうした訳で、昨年から高校生以上の患者しかとらないことにした。
それでも開業以来、25年以上、子供の患者を見てきたので、その経験から子供の矯正治療について考えてみたい。子供の治療の場合、永久歯が完成するまでの時期を一期治療、永久歯完成からの時期を二期治療となる。一期治療は、早期治療ともいい、矯正専門医からみると、一期治療はマルチブラケット治療による二期治療をいかに簡単に、あるいはより理想的に治療できるかのためにする治療である。そのため、基本的には二期治療を前提としている。ただ中には一期治療だけでほぼ理想的な咬合となるケース、二期治療が必要ないケースがある。頻度としては一期治療の約10-20%くらいである。それでは残りの80-90%は全て二期治療に移行するのかと言うと、この半分くらい人がマルチブラケット装置による治療を受け、残りは来なくなる。多少の問題があってもこれくらい治れば良いと考えるのだろう。例えば、反対咬合を主訴とした患者が。それが治れば、多少のでこぼこがあっても、それ以上の治療を希望しないのだろう。
一般歯科の先生の中でも小児の矯正治療のみをしている先生も多い。逆に言えば、一般歯科の先生はマルチブラケット装置による治療はできないし、この方法の習得には大学病院矯正歯科か、専門医に5年以上務める必要があり、一般歯科医が習得するのは無理である。先ほど言ったように、一期治療のみで、ほぼ理想的な歯並びになるのは多めにみて20%、そしてある程度、患者はこれでいいと言う歯並びで40%、そしてマルチブラケット装置による治療が必要なのが40%と考えて良い。もちろん、中学生以降の患者さんは、即、マルチブラケット装置による治療となるので、一般歯科ではきちんとした治療はできない。
つまり一般歯科で、子供の矯正治療をする場合、多めにみて60%しか治せないことになるし理想的な歯並びを求めるなら、20%しか治療できないことになる。この数値がどういう意味を持つかははっきりしないが、工業製品で言えば、例えば、双眼鏡の場合、世界最高の双眼鏡のスワロフスキーが60万円とすると、その性能の60%であれば、10万円以下、20%であれば数千円以下となる。これは金に換算した場合の例えであるが、一期治療しかできない一般歯科での矯正治療費が矯正専門医より高いのはありえないし、よほど安くなければ、あるいは理想的な歯並びを子供に求めるなら、これも矯正専門医に最初から行った方が良い。
子供の矯正治療を受ける場合は
1. セファロ、パントモ写真、模型などの矯正検査をしてもらい、きちんと今後の治療方針、治療期間、費用について説明を受ける。
2. 一期治療で治らない場合についても、きちんと説明を聞く。基本的に二期治療はマルチブラケット装置による治療となる。
3. 2で二期治療が必要な場合は、専門医を紹介すると言う場合は、専門医での費用は全く初診患者と同じとなり、一期治療費は無駄となる。返金が可能か聞いておく。
4. でこぼこの場合、成人では、ほぼ70%は口元の突出感も考慮に入れると小臼歯の抜歯ケースとなる。子供のでこぼこの症例に非抜歯での治療を勧める場合、将来的に口元の突出感が気になる場合、抜歯治療をしてくれるか聞いておく。中には抜歯による矯正治療は、主義に反するとしてしない先生がいる。おかしな主義である。
個人的な感想で言えば、子供の矯正治療費が数万円くらいであれば、ダメ元でやってみても良いが、20万円以上かかるようならわざわざ一般歯科で治療するメリットはないので、やめた方が良い。さらに言うと、矯正専門医でも内容とは無関係な値段をつけているところが多いので、数件回ってからどこで治療するか決めた方が良い。もちろん子供の治療の場合は、長い期間の通うことになるので、歯科医院の雰囲気や先生との相性も本当に重要であり、信頼のできる先生を探して欲しい。
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