2021年7月18日日曜日

映画「いとみち」


 久しぶりに映画館に行った。ワクチン2回接種で、少し不安感がなくなったせいだろう。一番、最近見に行ったのが、韓国映画、ボン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」なので、一年半ぶりとなる。

 

 映画は青森県で話題の「いとみち」で、監督は青森市出身の横浜聡子、主演女優は平川市の駒井蓮、ロケはオール青森ということで、制作開始時点から地元のマスコミに取り上げられ、盛り上がっていた。

 

 木曜日の一番目の上映ということ、まだコロナ禍であることなどで、二十名くらいの観客であった。席は一席ごとに空けてあり、他にもかなり感染対策がなされていた。物語の内容についてはネタバレなので喋らないが、評価としては星4つくらいで、まあまあ面白かった。特に素晴らしかったのは、主演の駒井蓮さんで、複雑な高校生の心理をうまく表現し、何より津軽三味線の演奏が上手であった。流石に最後のロングの演奏は、プロの演奏会のものだと思われるが、それ以外の演奏シーンは実際に弾いているように思われ。かなり時間を割いて練習したのだろう。

 

 さらにすごかったのが、津軽弁で、設定としては板柳町という近郊の町から弘前市の高校に通っている。弘前市の高校生に比べて、郡部の高校生の方が訛りがひどく、そうした違いをうまく表現しており、最初のシーン、弘前の高校でテキストの音読みで、先生からお前は相当、訛っているなあと呆れられるほど、青森県でも訛りの強い高校生として描かれている。テキストの音読で、訛るというのはイントネーション、音の強弱が違う。口をあまり開けないで、ゴモゴモしやべる、津軽弁にはそうした特徴もあり、映画のシーンでもあるように、高校生でこれほど訛りの強い学生は弘前でもあまり見ない。他の青森県出身の俳優、古坂大魔王やジョナゴールドの津軽弁が標準語に聞こえるほどである。津軽に住んで25年の私でもギリギリ、わかるほどなので、映画を見て真っ先に思ったのは、ひょっとするとこの映画は日本映画で初めての字幕付き映画になるのではという恐れであった。青森県以外の観客は果たしてわかるのであろうか、心配している。

 

 色々な経験、色々な人と出会うことで、成長する青春物語の典型であり、その微妙な青春のゆらぎを主演の駒井蓮さんはうまく表現していたが、ただこの映画が名作になるかといえば、何かが足りない。映画はカットの連続でなる芸術であり、こうした一つ一つのカット自体がもう少し魅力的になって欲しかった。青森空襲のカットなど必要ないし、もう少しカット、カットの美しさがあって欲しかった。確かに芸術作品でないので、それほど美術的な映像を求めているわけではないが、何これといったシーン、例えば、お盆のシーズンの禅林街や栄螺堂の内部など、色々な青森県の持つシーンが考えられる。また原作の越谷オサムさんは東京の人のせいか、板柳町に住む高校生が弘前に高校に行く設定は全く問題ないが、バイトに青森市に行くのはかなり厳しく、設定としてはおかしい。平日学校が終わってから青森市のメイドカフェにバイトに行くとすると、学校が4時に終わって、急いで弘前駅に行っても16:51か次の電車は17.40で、青森市に到着は17:4418:22となる。青森駅からバイト先まで15分かかるとなると、働き始めるのは6時から7時頃となる。帰りも20:44の青森発に乗って板柳に着くのが21:40、これが最終となる。つまりいくら遅くても8時半までしかバイトできず、実質のバイト時間は2時間程度しかなく、時給が1000円としても交通費を考えると、青森までバイトに行くことはなかろう。むしろ弘前市のメイドカフェの設定にした方が、定期が使え、学校が終わる5時ごろから21:14の最終電車の9時ごろまで4時間働ける。

 

 原作のいとみちは、ニの糸、三の糸もあるが、今のところ全国での上映館は45、予測興行収入が2500万円くらいなので、このままでは続編は難しい。“あなたはこの映画のセリフを字幕なしでわかるか”くらいのキャッチフレーズでマスコミに流すとか、話題を作って全国的に売りだす工夫も必要だろう。




 

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