2023年7月20日木曜日

患者さんはなぜマウスピース矯正を受けるのか

 




インビザラインに代表されるマウスピース矯正については、日本矯正歯科学会でも何度も注意喚起がされ、適用症例が限られている旨が発信されている。40年以上、学会の会員であるが、こうした注意喚起は初めてで、マウスピース矯正による患者被害が多いことを物語っている。もちろんマウスピース矯正自体は、日々進歩しており、その適用も広がっているが、現状では骨格性の問題がある症例、抜歯症例などでは適しておらず、比較的軽度の不正咬合に向いているとされている。インビザラインでも、かなりレベルの高い治療をしている先生がいるが、大学や学会から完全に認められるところまではいっていない。

 

それなのに、なぜ多くの患者はマウスピース矯正を希望するのか。その理由を考えてみたい。

 

1.治療予測が動画で見られる

デジタル印象を行い、マウスピース会社にデーターを送ると、治療終了までの予想動画が送られてくる。患者はそれを見ると自分の歯並びもこのように綺麗になると思うのは当然であり、従来のワイヤー矯正にはないサービスのために飛びつくのは無理もない。結果が見えるというのは大きな魅力である。

 

2.目立たず、受けやすい治療法 

目立たない矯正治療としては、従来から歯の裏側に装置をつける舌側矯正治療があり、ほぼすべての症例にも適用され、熟練した矯正医が治療すれば結果も良い。また費用の点でもマウスピース矯正とそれほど違わないが、マウスピース矯正ほど患者はいなかった。舌側矯正装置は、違和感があること、しゃべりにくいこと、月に一度は来院しなくてはいけないこと、歯磨きが大変など、が嫌がられたのかもしれない。手軽さの点でマウスピース矯正の方が受け入れやすいのだろう。

 

3.インビザライン社独自の称号

インビザライン社では、自分のところの注文数の多さによりプラチナプロバイザーなどの称号を与えている。患者からすれば、多くの患者をみた先生は上手だと思うし、その先生に診てもらいたいと思うのは当然である。外科の手術もそうであるが、数も治療レベルを知る一つの指標となるので、1000症例も診たと言えば、名ドクターと信じる。たくさんの患者を診ている先生に治療してもらえば、失敗はなく、希望通りの治療をしてもらえると思うだろう。

 

4.宣伝が目立つ

今の世の中、患者はYouTubeやツイッターあるいはホームページを見て、病院を決める。そのため、厚労省としては、ネットでの医療広告は患者への影響が大きいと、医療法を何度も改定して誇大広告などを禁じている。学会でも認定医、専門医の更新に際して委員会がその歯科医院のホームページをチェックし、違反していれば、更新を認めない。ただ現状では、違反していても厚労省や消費者センターなどのよる罰則、注意はさほど行われていないことと、ホームページ制作会社がグレーゾーンの解釈をかなり広げているので、一般歯科では派手なマウスピース矯正の広告をしているところが多く、逆に矯正歯科医院では認定医の更新ができないので広告できない。

 

5.強引な勧誘

4と関連するが、一部の歯科医院では、初診相談に行った時点で、デジタル印象を行い、即日に完成予想図を示して、契約を強引に勧めるところがある。矯正治療は全く緊急性がないため、十分に検討してから治療を受ければいいのだが、一部の審美歯科ではコーディネーターと呼ばれる人を配置して、歩合制で患者の治療開始を促すところがある。多く治療契約させると、その分歩合で収入が増えるやり方である。モニター制度と称して、料金の割引で釣るところもある。

 

6.歯科医の良し悪しが判断しにくい

YouTube5ちゃんねるなどをみていると、これは小臼歯を抜歯しないと治らないだろうと思われる症例が多い。そこの病院を選んだ経緯なども語っているが、例えば、3軒の矯正歯科医院で小臼歯抜歯とワイヤー矯正の必要性を指摘され、1軒は一般歯科でここでは非抜歯とワイヤー矯正を、そして最後の一軒の一般歯科のところでは非抜歯とマウスピース矯正を勧められたとしよう。通常なら専門医がすべて抜歯治療を勧めるのであれば、それが正しいはずであるが、どうも多くの患者は最後の歯科医を選ぶ。歯を抜かなくても口元が引っ込むかと先生に質問しても、引っ込むと答えるのでそこでの治療を選択する。歯科医であれば、どこでも矯正治療ができると思っているからである。

 

こうして見ると、マウスピース矯正は従来のワイヤーを用いた治療法に抵抗があった患者にアピールした。このことはより多くの人が矯正治療を受けるためには、マウスピース矯正が受け入れられた利点について知っておくべきである。ワイヤー矯正でも、治療前後の噛み合わせや顔貌の変化は動画で示せるだろうし、患者さんにわかりやすい専門医制度を早く作るべきであり、一方、同様の問題があったホワイトニングが特定商法取引法の対象になってように、マウスピース矯正についても、クーリングオフなどができる特定商法取引法の対象に入れてもよかろう。これにより強引な勧誘を減らし、中途解約も容易にできるようになる。

 

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

弘前人物史  断捨離をして3年まだまだ物が減らず 本を捨てられず、選んではメルカリを活用している中 息子の名前の入っている弘前人物史発見
弘前から離れたこともない私は 無知無教養と友達からバカにされ 無知無教養の意味も知らず調べるレベルです。
なぜかこの本だけは捨てれず、読みもせず、毎回片付け度に気になり 値段つくのかなー?と検索してみると 広瀬さんのブログと出会い、広瀬矯正歯科の場所を検索して あーここかー!
二階だからほとんど気づかずでした。
最近のブログ拝見 勝手に縁を感じての 少し笑える文章に投稿してみたくなりました。
またときどき読んで見ます

広瀬寿秀 さんのコメント...

ブログをお読みいただきありがとうございます。かなりローカルな内容のブログも多いので楽しんでください。
「弘前歴史街歩き」はすでに完売しましたが、かくみ小路のある”まわりみち文庫”という小さな古書店で売っています。面白い店なので一度行ってみてください。