2024年9月5日木曜日

青森県の矯正歯科の現状

 



東北各県における矯正歯科専門医院の数を以下に示す

 

青森県   弘前市 2軒  青森市 1軒   八戸市 1軒

秋田県   秋田市 4軒  横手市 1軒   大館市 1軒

岩手県   盛岡市 6軒  久慈市 1軒  一関市 1軒  北上市 1軒

山形県   山形市 3軒  天童市 1軒 米沢市 2軒 酒田市 1軒

宮城県   仙台市 23件  塩竈市 1軒 岩沼市 1軒 気仙沼市 1軒 石巻市 1軒 富谷町 1軒 大崎市 1軒

福島県  郡山市 7軒 白川市 1軒 福島市 3軒 いわき市 3軒

 

総数で言うと、青森県4軒 秋田県6軒 岩手県9軒 山形県7軒 宮城県29軒 福島県14軒となる。東北各県人口は青森県124万人 秋田県96万人 岩手県121万人 山形県107万人 宮城県230万人 福島県183万人であることから、人口10万人あたりの矯正歯科専門医院数は、青森県0.32、秋田県0.63、岩手県0.74、山形県0.65、宮城県1.26、福島県0.77で、宮城県が他県の2倍、逆に青森県は他県の半分となる。

 

ついでに日本矯正歯科学会の認定医の数は、青森県は10名、秋田県は9名、岩手県が39名、山形県が15名、宮城県が89名、福島県が26名となる。人口10万人あたりとなると、それぞれ0.810.943.221.403.871.42となり、歯科大学のある岩手県、宮城県、福島県で認定医の数が多く、ここでも青森県が一番少ない。

 

それでは、青森県が矯正歯科医院数も、認定医も最も少ないので、患者数も多いと思われがちであるが、実際の数は、先日出した私の診療所の集計によれば

 

患者数(1995-2022

新患数       5024名、

治療開始数     3206

開始率       62.5%

唇顎口蓋裂及び先天性疾患患者   230(全体の7.2%)

顎変形症患者    414名(全体の12.9%

一般矯正患者    2562

年間平均新患数   179

年間平均治療開始患者数  115名(自費患者数95名)

 

決して少ない患者数ではないか、そうかといって多い患者数でもない。青森県の他の専門医院でもおそらくこれを超える数値ではなかろう。もちろん矯正歯科専門医以外の一般歯科で矯正治療をする患者も多いと思われるが、他県も同じで患者数はそれほどでもない。

 

青森県と同じく県民所得の少ない秋田県を例にすると、秋田市の人口は31.6万人、それに対して市内には4つの矯正歯科専門医院がある。多いところでは年間新患数が500人を超えるところもあり、他の医院もそこそこの患者がいる。それに対して、青森市の人口は28.8万人で秋田市より少し低いが、矯正歯科専門医院が1軒しかなく、それも木金土曜日の週に3日しかやっていない。以前には、他に2軒あったが、1軒は撤退し、もう1軒は奥さんのいる東京の診療所がメインであった。決して秋田市ほど患者は多くない。秋田市で言えば、4つの矯正歯科医院におそらくは年間1000名以上の新患が来ているが、青森市の場合は、一般歯科での矯正治療を含めても、この数分の一以下であると思われる。

 

昔、日本臨床矯正歯科医会で全国の矯正歯科医と雑談していた折、青森県では反対咬合を主訴として来院した新患でも、実際に治療に入るのは半分くらいと喋ると、それは、いろんな矯正歯科医を回っているからそんなに少ないのだと散々言われた。ところが当時は弘前市内には私以外の矯正歯科専門医はおらず、また子供頃に相談に来たが治療をせず、成人になって外科的矯正患者として来院する患者も多い。費用がかかること、それほど矯正治療の必要性を感じないためと思われる。逆に秋田県は、昔から着倒れ、食い倒れという県民性があり、多少無理をしてでも矯正治療をして歯並びをよくしようとするのかもしれない。

 

矯正歯科医が少ないので患者が少ないのか、患者が少ないから矯正歯科医が少ないのか、わからないが、八戸市では矯正歯科医院が2軒から1軒へ、青森市も3軒から一軒へ、そして弘前市も2軒からもうすぐ1軒へと減っており、ここ18年間、青森県では新しい矯正歯科専門医院が開業されていない。今後10年で言えば、青森県全体で矯正歯科専門医院は一軒しかないという状態もありうることで、30年前の状況、矯正治療をしようとすれば、盛岡市(岩手医科大)や仙台市(東北大学)に行かなくてはいけない状況になってしまう可能性もある。東北大学歯学部の口蓋裂チームにいたときも月に一度、前泊しながら数年間、青森から通っていた矯正患者が多数いたが、費用も含めて本当に大変なことである。今泉書店、紀伊国屋書店、中三、開雲堂と次々と弘前の名店が閉店している。閉店の理由は色々あるが、結局は客が少なかったことに尽きる。客が多ければ、子供は店を継ぐし、閉店する理由がない。不正咬合の矯正治療でも、結局は患者が少なければ、新たな歯科医院はできず、治療する歯科医院は減っていく。私のところでは、経費を最小限にして、県民所得の低さを考慮して基本治療費を低く設定したし(一期20万円、二期20万円)、兄弟割引(一人目10%、二人目20%off)、兄弟で治療に来た場合の調整料(3000)は一人だけ、保定装置の再製、後戻りの再治療は無料にしていた(ここ数年は有料)が、とりたてて患者から料金について感謝されたことはなかった。むしろ最初から全国並みの治療費にして金がかかっても治療したいという人だけを対象にした方が良かったのかもしれない。閉院するに際してのグチになってしまった。


0 件のコメント: