2024年9月17日火曜日

絵の断捨離

 



 




     この屏風、欲しい人は連絡してください150cm:*150cm 越後の海岸


最近は断捨離の一環として、母の絵を処分している。母は、若い頃は油絵などを描いていたが、結婚後は生活に追われ、中断していた。子供が一人前になった40年ほど前から日本墨相展という会に所属し、そこが主催する展覧会に毎年、出品し、何度か賞も取り、銀座の画廊でも二度ほど個展をした。またNHKのカルチャースクールや自宅でも生徒さんに絵を教えていた。決してプロの絵描きではないが、そうかといって全くのアマチュアでもなく、まあセミプロと言ってもいいかもしれない。

 

こうした展覧会に出品するとなると広い会場で目立つために、大きな作品を描くことになる。最低でも30号、あるいは40号、90-100cmの大きさの絵となる。実感はないと思うが、これくらいの大きさの絵になると個人の家で飾るのはよほど広い家でないと難しい。ましてや100号、あるいは200号といった大作となると、美術館以外には展示できない。欧米の家は大きくて、天井も高いため、例えば、英国のお城には先祖の肖像画、40号程度の絵が壁いっぱいに飾られている。一方、日本の和室を考えてみると、床の間がメインで、部屋の外周は襖になっていることが多く、絵を飾る壁面はない。最近は洋間が中心となってきたが、それでも大きな絵を飾る壁面は少ない。

 

母が住んでいた尼崎の家は狭く、展覧会に出品した大きな絵は4畳半の部屋、2つに保存していたが、20年前から処分を思い立ち、自信作は郷里の徳島県、脇町(美馬市)の市役所や図書館に寄贈したが、それ以外の作品は、姉、兄の家が狭いため、私のところに送ってきた。30号、40号の絵が13、屏風が2つ、小さな絵は20くらいになる。子供部屋一室がいっぱいになっている。頭の良い母なので、もらっても嬉しくないテーマの絵は描いておらず、花、風景がメインであり、小さな10号、20号くらいの絵であれば、貰い手は困らないし、保存場所もそれほどとらない。ただ大きい絵は保管するスペースがない。

 

母は102歳で老人ホームにいるが、私ももう少し小さな家に引っ越そうかと思っている。そうこともあり、今回、カタログを作り、まず兄弟に欲しい絵があれば、と連絡したところ、兄は3つ、姉は2つ、姪が1つ、欲しいと言ってきた。さらに知人から1つ。それでもまだ半分以近く残っている。とりわけ屏風が大変で150*150cmが2つ、折りたためると言っても大きいし、ほとんど使用することもない。誰か欲しい人がいればご連絡ください。できれば取りに来てくれると嬉しいのだが。送料は多分1万円くらいかかるだろう。

 

よく考えれば、こうしたこと自体はそれこそ何千人いる画家でありうることである。あるプロの画家が亡くなり、家族が追悼展覧会を開いて、希望者には全て無料で持って行ってもらうことにした。ほとんどは捌けたが、流石に100号の作品は、大きすぎて引取り手がなかった。また仏像画で有名な画家、死後に家族がカタログを作り処分しようとしたが、主題が暗いものばかりなので、誰も欲しがらず、結局、葬儀社が引き取った。裸婦や抽象画も人気がない。

 

現代絵画の奈良美智さんは近年、2mを超える作品を描いているが、こうした大きな作品は美術館で飾られるのを前提で製作しており、通常の住宅に飾るものではない。岡本太郎、東山魁夷など趙有名画家のみができる特権である。橋本関雪など日本画の巨匠も屏風や100号を超える名作を描いているが、これは展覧会で出して話題を作り、美術館、あるいは私設美術館を持つような金持ち向けのものである。通常は掛け軸を主体として販売し、収入を得て生活していた。売れない画家、アマチュアの画家の40号を超える作品はその後、どうなったのか知りたいと思う。絵については、なかなかゴミとして捨てるわけにはいかず、どうしているのだろう。もちろん画商は買ってくれないだろうし、買取り専門店も引き取ってくれない。

 

彫刻家の舟越桂さんが今年亡くなった。彼の作品は、主として楠を素材にした大型、等身大の作品である。もちろんあれほど有名な彫刻家となると欲しい美術館はいっぱいあるが、それでは個人でというと、よほど大きな家に住んでないとあれほど大きな作品は置けない。大きさだけでなく、重量もある。ヤフーオークションで“ブロンズ 像”でよく検索するが、大きなものは安くてもなかなか落札されない。彫刻家も亡くなると、遺族は作品の扱いに困るであろう。



* 今朝の東奥日報で宮越家の江戸初期の狩野派の襖絵が紹介されていた。重要文化財級の作品であるが、この襖絵は屏風以上に厄介な代物である。大きすぎて、まず個人で買う人はいない。昭和6年に宮越家では所有している美術品を競売したが、その当時でも、さすがに襖絵はいい値段で売れなかったのであろう。美術館でも展示、保管が躊躇われるため、ほとんどの襖絵は寺にあるままである。重文の指定は難しくないが、一旦指定を受けると売買は相当難しくなる点、特に大英博物館など海外には売れない点も考慮すべきである。



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