2024年12月1日日曜日

大鰐線廃止

 



1127日の報道で、弘前と大鰐を結ぶ弘南鉄道大鰐線が2027年度末で廃止を前提として休止にするということになった。ピーク時は390万人の利用者がいたが今では30万人しかおらず、経営的にも限界にきたためだとしている。会社側はずっと廃止を考えていたが、沿線の自治体から継続を請願され、支援も受けていたので、何とか続けていた。ところがコロナ禍による乗客の減少や脱線事故で、もはや継続できないと決意したわけで、さすがに弘前市側も民間の経営にこれ以上口だすわけにいかず今回ようやく認めたのであろう。

 

最近は、こんな話ばかりで、おそらく大鰐線が廃止される2027年になると残念がる市民が増え、急に乗客が増え、大混雑になるのだろう。今泉書店、ホテルニューキャッスル、紀伊国屋書店、弘前食品中央市場、開雲堂、イトーヨーカドー、毎度である。あまり利用しないくせに、なくなると、寂しいという。大鰐線といっても車のある人からすれば、ほとんど利用しないだろう。私は車を持っていないので、年間、4、5回は利用する。特に大鰐温泉に行くときは、弘前―大鰐の往復乗車券とワニカムの入浴券とお買い物券がついて1000円という“さっパス”というセットをよく利用した。季節ごとに変わる車窓の景色を見ての鉄道は、ちょっとした旅行気分に浸れる。

 

大鰐線が廃止されると、通学に支障が出るため、代替わりのバス運行になるかというと、これも、そもそも弘南バス自体の経営は厳しく、また運転手不足から、厳しい状況である。さらにいうならもう一つの私鉄、黒石までの弘南線は存続するといっても、ここも年間9600万円程度の赤字であり、補助金で何とかやっている状況である。大鰐線がいらないというのと同じ論理で、弘南線も必要ないと言える。

 

駅前、土手町にまず映画館がなくなり、スーパー、デパートもなくなり、さらに本屋、鉄道もなくなり、駐車場だけがある。これは街というよりは空疎な空間というもので、人々は広い空間に散らばって住み、車で必要な店に行って買うという社会である。ドーナツ化現象と呼ばれるもので、基本は車社会を前提としており、車がない若年者、老人、病人には住みにくい社会である。さらにいうと、車も一家に一台では足りず、一人一台必要であり、結果的には五人家族で、5台車があるという家も珍しくない。さらにいうと完全な車社会となると、道路整備だけでなく、雪国の青森では除雪、排雪作業も必須となり、大きな出費となる。今後もガソリン価格や車の保険料は高くなる一方であり、車にかかる個人の負担も増えていく。一方では、国は高齢者の免許返納を訴えながら、唯一の移動手段の鉄道、バスもないとどうするのだろうか。

 

このブログでもこれまでも何度も大鰐線の廃止を反対してきた。それは車がなくなったらどうするのかということにつながる。弘前市会議員の中にも大鰐線を廃止しろと強く言う人もいるが、こうした人は一度、車のない生活をしたことがあるのか。昔と違い、土手町に行けば、弘前駅前に行けばと言う時代ではなく、何か欲しいと言えばその店に行かなくてはいけず、自分の家からそこまで車なしでどういくのかを考えてほしい。新しい冬用の靴を買おうとしよう。私が住む坂本町は市内の中心なので、便利は良い。まずヨーカドー、今はシーナシーナに歩いて行くか、ヒロロにいく。またビブレに行こうとするなら、まず弘前駅裏まで歩いて、そこから百円バスに乗り、ビブレに行く。あるいは自転車やタクシーで行くことになる。それでは中心から少し離れた弘前市新町から弘前駅に向かうとしよう。工業高校前のバス停から弘前駅に向かうバスは1日に12便だが、朝夕以外は2時間に一本、さらにビブレに向かうにはここから百円バスに乗り換えることになる。費用も片道300円となる。さらに遠方の高杉くらいになると、高杉南口から弘前駅までは3便しかない。このように駅に行くバスが10分おきに出ている東京や大阪とは、状況が全く異なり、地方ではバスによる移動は非常に制約される。これなら定刻運転される鉄道の方がよほど移動しやすい。バスによる移動は便数が多いと、便利であるが、地方にように1日に数便しかないと、日常的に利用するのはかなり困難となり、利用客は減る。実際に弘南バスを見ても百円バスはかろうじて乗客がいるが、その他の便は朝夕を除けばほとんど利用客がおらず、経営的に厳しく、将来的にはバス路線も赤字で便数を減らす、廃止されることは覚悟しておかなくては行けない。

 

つまり大鰐線の廃止は赤字によるものであれば、黒石までの弘南線も廃止されるし、これまで弘南バスがカバーしていたバス網もなくなることになる。車を持っていない人は、歩くか、自転車かタクシーしか使えないことになる。公共交通機関というのは、交通インフラの基本的なものであり、是非とも国県市町村が整備すべきものである。簡単に交通弱者を排除して良いものではない。少数の人々に対象に税金を使うのはもったいないという合理的な観点でいうなら、聴覚障碍者の音響式信号機は必要ないし、視覚障害者に対する点字ブロックも必要ないと言えるが、健康な人々でもいつ、こうした障害を持つかわからないので、こうした設備は必要なことになる。大鰐線で言えば、乗客が減ったとはいえ30万人の利用者がいる。大鰐線の廃止するのではなく、弘前市が買取り、費用がかからないBRTに変換できないだろうか。BRTとはBus Rapid Transitの略で、簡単に言えば線路を舗装道に、電車をバスの置き換えたもので、初期投資はかかるものの、維持費は安く、定時便、例えば15分おきの運行も可能となる。さらに通常道路の走行も可能なので、弘前駅から直接に乗ることも可能となる。専用道なので自動運転も可能かもしれない。またBRTといった大袈裟なものでなくても、バス専用道として、弘南バス、スクールバスや観光バスのみ利用できる道にするような方策はないのであろうか。廃止は仕方ないが、何らかの代案を検討してほしいし、国、県の補助など資金面も含めて、弘前市、市長の手腕が求められる。