日本歯科専門医機構の矯正歯科専門医をようやく取得できた。といっても認定状が来たわけではなく、日本歯科専門医機構のホームページに「2024年度機構認定 矯正歯科専門医」に載っているので間違いではなさそうである。今年いっぱいでやめるので、今更専門医を取得しても全く無意味である。3年ほど前になるのか、最初の日本歯科専門医機構の試験があったが、この年、症例審査、筆記試験、面接は全て合格し、あとは専門医機構の共通研修を受けるだけという段階だったが、この研修を受け損ねてしまった。受講申し込みはネットで行い、その受講料は当然、ネットで、カードで支払ったばかり思い込んでいた。ところが講義のある前日になっても連絡が来なかったので、調べてみると、受講料は銀行振り込みで、もう締め切りが終了したという。かなり焦ったが、近々閉院するので、取っても無意味と思いそのままにしていた。ところが、懇意にしていた先生が、実は日本専門医機構の理事、それも矯正歯科専門医担当ということがわかり、矯正歯科専門医の問題点は地域偏在があり、東京では多いが、県によっては一人も専門医がいないのは問題であると言われた。青森県も私が取らなければ、専門医のいない県になってしまう。そこで、遅ればせながら専門医をとることにした。当初は機構の研修を受ければOKと考えていたが、結局は全ての資料をもう一度作り直し、提出した。これがおよそ1年前で、今回、ようやく合格したようだ。
現状では、ホームページに掲載可能な名称としては、“日本歯科専門医機構、矯正歯科専門医” となる。従来からある “日本矯正歯科学会 専門医、臨床指導医” の名称は、これまで△として記載はグレーであったが、今後は掲載不可となる。現在、日本矯正歯科学会の更新には、医院のホームページのチェックがあるが、認定医、臨床指導医の名称は削除を求められるだろう。
今回34名の新たな合格者を加えて、現在、235名が日本歯科専門医機構認定の矯正歯科専門医といえよう。日本矯正歯科学会の臨床指導医(381名)が矯正歯科専門医になるための条件であるが、順次、認定医(3000名)まで広げていき、最終的には1000名くらいが資格を持つようにしようと考えている。それでも毎年100名ずつ専門医になっても、10年くらいはかかりそうで、東京など都会では数は充足していても、青森県のような地方ではかなり少ない資格となろう。
最近では、矯正歯科認定医をとるには、卒業して矯正歯科の医局に入り、少なくとも6、7年、研修医期間を足すと7、8年必要である。あまりにも長くかかりすぎて、嫌がる学生も多い。アメリカでも3年間の専門大学院を卒業すれば矯正歯科専門医になれることを考えれば、効率が悪い。日本矯正歯科学会の認定医ができたのが1990年、その後、矯正歯科専門医(臨床指導医)が2006年にできた。矯正歯科では日本矯正歯科学会、日本成人矯正歯科学会、日本矯正歯科協会の3つの専門医制度があり、厚労省からなんとか統一しろの言われて、5年ほど前に統一矯正歯科専門医審査がおこなわれた。ところが試験形式が矯正歯科学会と機構とが違ったりして、混乱し、2年前からようやく口腔外科、小児歯科、歯科麻酔、歯科放射線に続いて専門医として認められた。最初の認定医制度から35年かかったわけで、私自身も審査員などでかなり長いこと関わってきただけに、今後の制度の定着を祈っている。
ただ医科の専門医制度も含めて、国民に専門医についてあまり知られていない。日本では専門医のライセンスがなくても診療科を標榜可能なので、矯正歯科と看板に書いていてもライセンスがない場合が多い。矯正歯科治療をするなら専門医のところで治療という流れを作るべきであり、そのためには、まず現行の保険制度と専門医のライセンスを連動させるべきであろう。具体的に言えば、反対咬合などの小児の不正咬合が健康保険扱いになった場合は、現行の口蓋裂患者の矯正治療の施設基準の一部を変更する。現行では「当該療養を行うにつき十分な経験を有する専任の歯科医師が一名以上配置されていること」を、「当該療養を行う矯正歯科専門医(日本歯科専門医機構)の資格を有する専任の歯科医師」にすれば良い。“十分な経験”という表現はあまりに曖昧すぎる。今年度から学校歯科で不正咬合を指摘された場合の診断については一部保険適用となった。この先、重度の不正咬合が保険適用にならないと制度上おかしなことになるし、重度の不正咬合を治療するのは矯正歯科専門医でないとダメである。ただ日本歯科専門医機構の理事に言われたように、今のところ青森県では専門医が私だけで、それも今年で閉院するので、誰もいなくなる。重度の不正咬合であっても青森に住む患者は他県に通院するか、自費治療になる。これは厳しい。
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