アメリカの歯科ユニット会社、A-decは、歯科医が開業して引退するまで30年間と想定して、その間、故障が少なく、メンテナンスが容易な歯科用ユニットをコンセプトにしている。そのため、一つの機種を最低20年以上わたり、継続して売り続け、パーツの予備も多い。私が使っていたA-decの500シリーズも販売してすでに20年以上経っているが、いまだに最上級機種として売り出しており、その前のカスケードなどのシリーズとのパーツの共用も多い。一方、日本のメーカーは数年ごとに新しい機種を発表し、パーツも7年程度しか保管していないため、20年も使ったユニットは修理不可能とされ、泣く泣く新しいユニットを買う。あと十年で引退しようと思っても、これでは無駄な出費となる。また中古ユニットを買おう、あるいはまだ五年しか経っていないので売ろうと思っても、PL法で基本的にはメーカーは引き取らない。結局、閉院する場合も比較的新しいユニットであれば友人にあげるくらいしかないが、器材屋は嫌がり、修理はしない。
歯科医の仕事寿命は30-40年くらいと思われる。25歳で卒業、研修医を終わり、大学の医局、開業医に勤務して、自分で開業するのは35歳くらい、そして70歳で引退するとなると35年となる。私の場合、小児歯科、矯正歯科、口腔外科の医局に残り、開業したのが39歳だったので、ちょうど30年だった。
地元の経営コンサルタントによれば、今や歯科医院の開業には1億円かかるという。田舎では駐車場は必須なので、200坪くらいの土地に40坪の歯科医院を建てた場合、土地代に3000万円、建物に4000万円、歯科機材に3000万円くらいかかり、計1億円とする(運転資金は除く)。35年間、働いて引退するとする。その場合、建物、歯科機材は全て解体、廃棄となる。廃棄及び解体費に500万円かかり、田舎では土地は売れない、下手すると35年後で、弘前のように人口が半分になると土地価値は半分になる可能性もある。その場合、200坪の土地は1500万円となり、解体、廃棄費、諸経費を引くと手取りで1000万円くらいとなる。35年で1億円の歯科医院が1000万円になる。銀行、35年ローンで返済するとなると2%利率で利息は4 000万円、固定資産税は30万円の35年間、1050万円で、建物、歯科機材の修理修繕、リフォーム、買い替え費で2000万円、合計で7050万円かかるので、売却した場合のマイナスは9000万円+7050万円で、16050万円となる。
弘前市でビルのテナント開業をしていたのは結局、私のところが唯一で、これは矯正歯科専門医という特殊な状況により。一般歯科の場合はやはり一戸建ての開業となる。この場合も30、40年限定の商売だと考えれば無駄が省ける。まず土地は地方では下がる可能性が高く、できれば賃貸での長期契約が良い。地方では大きな土地が余っており、200坪くらいの土地でも年間150万円くらいで借りられ、35年間5250万円となる。買うよりは高くなるが、土地の固定資産税は大家持ちとなるし、賃貸料は全額経費となるし、35年後、土地価格が下がることによる含み損を考えると、実質はそれほど高くはない。もちろん土地価格が上昇する都会とは話は別である、
建物は、1億円かけようが10億円かけようが、35年で無価値となるため、できるだけ安いもの、35年もてばいいもので良い。そうしたコンセプトで作られたがコンビニの建物で、おおよそ30年の耐久性を持ち、建築費は一般住宅の半分以下である。また解体費も安く、歯科医院にはうってつけである。同様に、歯科ユニットはA-decを勧める。35年間はほぼ持つし、修理も可能である。レントゲン、レセコンなどデジタル機器は10年で陳腐化していくので、買い替えを前提に安いものでも良いし、CTなどは将来買うべきものである。
要は35年間、働いて、それにかかった開業費用はほぼゼロになると考えた方が良い。歯科医院の場合、保険診療がメインであり、結局は収入は患者数に依存する。日本の保険治療費は今後とも安いと思われ、その経営実態はコンビニなどの薄利多売の小売業に近い。多くのスーパーマーケット、コンビニは、借地、安い建設コストの店舗でしているのに、なぜ歯科医院はそうした方向を取らないのか。AIで店舗建築、土地購入に費用をかけていける業種を検索すると、最初は病院、歯科医院も出てくるが、青森県を追加すると医療介護の複合型サテライト拠点と家族葬専用セレモニーしか残らない。くれぐれも地方で歯科医院を開業する場合は、経営コンサルタントに騙されず、とにかく立地がよく、駐車場が広く、安い賃貸で借りられる土地を探し、そこに安い建築費の店舗を作ることが肝要だと思われる。閉院して全て処分すると、総計1億6千万円かけた医院でも、結局はほぼタダになる悲劇を十分に認識してほしい。

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