テレビタレント、前の国会議員の杉村太蔵さんが、テレビで今回の北越高校のバス事故について、公共交通手段を使って移動できないような遠征試合はそもそもおかしいのではないかと語っていた。杉村太蔵さんというと昔はお馬鹿キャラであったが、最近は発言もしっかりしており、共感を得るものが多く、今回の彼の発言に私は全面的に賛成である。事故の責任云々には連日テレビで放送されているが、いくら強豪校とはいえ、他県、それも距離の離れたところまで遠征して試合するのはどうかなあと思ってしまう。事故があった北越高校のソフトテニス部は新潟では圧倒的に強く、インターハイでも女子が準優勝したこともある。強豪校で、実力を高めるためには自分たちより強いクラブと練習試合することは大事なことなのだろう。これのもっと極端な例は、高円宮杯 JFA U-18サッカーリーグ プレミアムリーグで2011年から始まった。24チームが西と東の地区に分かれ、ホームアンドアウェイで試合をする。移動には大きな費用がかかり、年間で数百万円になるというが、一部は日本サッカー協会が補助している。このリーグに参加している青森山田高校などは学校に何チームもあり、これらのチームもそれぞれ遠征するので、トータルの遠征費は大変な金額となる。
私が中高校の時はどうだったかというと、当時の六甲学院のサッカー部は兵庫県でも強豪校で、全国高校総体に出場したり、近畿大会でも優勝した。北越高校ほどではないが、それほど弱くもなかった。年間でもかなり多く、他校との練習試合をしたが、車で移動することはなく、神戸市内あるいは阪神間の学校に限定していた。現地集合あるいは学校から電車、バスで移動した。他県との学校と試合することは、近畿大会、高校総体、全国高校サッカーくらいで。そうした大会に出場するチャンスがなければ他県とのチームと試合することは稀であった。
他県まで行って練習試合をするようになったのはいつ頃かとAIで調べると、平成6年(1994年)に高校野球で“他県への遠征を含む練習試合”が解禁された。つまり32年前までは他県まで練習試合に行くことは禁止されていた。解禁された一番大きな理由として雪国、寒冷地の不利解消、グランドが使えない冬場の練習のため、などが挙げられた。一方、反対意見としては、遠征費を出すことができない学校との経済的格差、野球への過度な偏重などが挙げられている。その後、野球以外の他の部活にも広まり、今や他県へ遠征して強豪校と練習することが常態化した。
日本の社会で問題と感じていることは一度、決まったことはなかなか変えないことである。他県へ遠征して練習試合をすることが解禁されたのは、32年前で、逆に言えば、それまでの何十年間は禁止されていた。今回の問題は氷山の一角で、こうした事故は後を絶たない。ここで、元に戻すことは検討できないのだろうか。学校での部活、特にスポーツについては、学業の一環としての活動であり、プロの選手を育てるものではない。先進的なスポーツシステムが確立しているサッカーで言えば、プロサッカー選手は、ほとんどが各チームの下部組織(U-12.15.18)から入ってきており、高校のサッカー部からプロになる選手は限られている。生徒数の減少、学校の部活も地域のスポーツクラブに移行しており、オリンピック選手もむしろ学校よりこうした民間のクラブが主体となっている。
このような現実を考えると、学校での部活は、せいぜい趣味の範囲にとどめ、どうしても本格的にスポーツをしたい人は民間のクラブに入れば良い。もちろん趣味の範囲のスポーツなので、県外までの遠征は禁止すればいいし、全国大会も必要ない。せいぜい県大会、あるいは東北大会のような地域大会くらいであろう。欧米では小中高校のスポーツの全国大会は基本的には存在せず、過激な競争を警戒している。昔、うちの子供が中学生の頃に、膝の十字靭帯が切れて入院したことがある。その時に一番驚いたのは小学校で肩、肘を壊して手術を受けた子供が2名入院していた。大人ならいざ知らず、小学校で肩肘を壊し、手術を受けるとは完全に指導者の責任である。
学校での部活活動が民間のスポーツクラブへの移行という流れの中で、他県への遠征、練習試合の禁止、全国大会(特に小学生の)の廃止の議論が必要と思われる。特に全国大会を廃止すれば、他県の強豪校に練習試合をする必要も減るので、自然に経費のかかる遠征も減るだろう。北越高校では今でもアホみたいに練習しているのだろう。ソフトテニスのプロは全国で10名、試合だけで生活している選手は3-5名、ソフトテニス人口は50-60万人、つまり一生懸命、他県に遠征して、全国大会に出場し、優勝したとしても、それで食っていけるのは10-20万人の一人という現実を考えると、一生懸命練習して上手くなるのはいいのだが、何のために必死になっているのか、指導者はよくよく考えるべきである。全ての指導者には、少なくとも子供のメンタル、身体に対する配慮が必要で、国のガイドラインでは、部活の練習時間は、平日では一日2時間以内、週に2日以上の休養日が決められている。これを極端に超える場合は、大会出場の停止くらいの処分が必要で、こうしたガイドラインの遵守も含めて北越高校を調査してほしい。かわいそうだが、こうしたスポーツ校は全国にあり、その実態について文科省でも正確に把握し、見せしめでもいいので厳しい処分を課すことを検討してほしい。

0 件のコメント:
コメントを投稿