2011年11月11日金曜日
縮小する日本
私の友人の弘前大学教育学部のAnthony Rauschさんがこのほど「Japan's Shrinking Regions in the 21st Century: Contemporary Responses to Depopulation and Socioeconomic Decline 」という大部の本をCambria Pressより出版した。内容は未読でくわしくはわからないが、アマゾンコムの書評では年間50万人ずつ日本では人口現象が続き、2030年には老人と活動人口の比率が1:1になり、同様なことがドイツや韓国、さらには中国にも将来起こりうる。こういった将来像を見るにあたり、すでに人口の減少、産業の崩壊、老人化といったShrinkingな地方、多くは日本の周縁部の事象を観察することで将来のあり方を検証しようというものである。社会学者、経済学者などが日本の20くらいの地域の現状を紹介している。
トニーに結論を聞くと、Acceptance of the Fateという言葉が帰ってきた。「運命を受け入れる」ということになろう。人口,産業が縮小していくのはしかたない、そういった環境の中で人々がいかに幸せに暮らすか、それを考えていこうということだ。青森県の場合、伝統的な文化、芸能、産業が多くあり、それをいかに有効に使うか、それが縮小する辺縁部の将来を握ると。Negativeに考えると、青森県は核廃棄物などのゴミ捨て場として生き残る方法もあろうが、もっと運命を前向きに、Positiveに考え、自然、風土、人間に恵まれた故郷を愛し、貧しいなりに楽しく過ごすということだ。
地元のスーパーに行くと、鶏、牛、豚肉はオール青森産でカバーできるし、魚もそう、野菜、くだもの、米も自給できる。さらにスキーに行くなら中心街から30分以内に行けるし、ゴルフ場もそうだし、料金も安い。農家では、野菜、米を作り、鶏を飼い、秋に山に行けば山菜、きのこも採れるし、川や海に行けば魚も捕れる。物々交換で何でも手に入る。都会では10万円での生活は無理であろうが、青森では十分に楽しい生活ができる。さらに医者不足といわれているが、病院の数は多く、老人ホームの入居料も驚くほど安い。趣味にハマりたいなら、バレエ、オペラ、交響楽団、合唱、ダンス、書道、絵画、お茶、お花、さらに渋いところでは平家琵琶、能だってある。それもレベルが高い。
マイナスを挙げるよりプラスの面を挙げる、ポジティブ・シンキングをすれば、決して東京より劣ったところではない。景気は停滞しているが、日本に長年住んでいる外人さんによれば、治安がよく、何よりも物価が安定しているのが何よりだそうだ。給料が高い、昇給すると行っても、物価上昇が高いと落ち着いて生活できない。ハワイを楽園とする向きもあろうが、夏の暑さが嫌いな人もいるであろう。
おかげさまで、「明治四年弘前絵図」書店販売分何とか完売しました。紀伊国屋書店弘前店の皆様、ありがとうございました。書店で80冊、インターネットで30冊、友人、関係者、図書館、大学への寄贈が140冊、計250冊、残り50冊は手元に置く予定です。もう少し、インターネットでの販売は継続しますが、希望者は早めにご連絡ください。本製作、販売を通じて、多くの人々で出会えたことは何よりの宝です。特にインターネット販売では、購入希望とだけ伝える人は少なく、自分と弘前との関係をくわしく綴っていただき、改めて多くの弘前出身の人物を知ることができたことは、今後の研究の糧になります。こういった本と通じて、読者と弘前の絆が強まったのであれば、望外の喜びです。
ただ購入者の多くは、50歳以上のどちらかというと年配の方が多く、附属した絵図データーの入ったCDは、あまり活用されていないようです。最初、出版にあたりCDより地図を入れた方がよいとの助言がありましたが、結果的にはこれに従っていた方がよかったかもしれません。次回作、といってもいつになるかわかりませんが、文章中心にまとめたと思っています。
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4 件のコメント:
今日は。
「Japan's Shrinking Regions in the 21st Century」をAmazonで調べたら、お値段が高いので、見合わせています。
先週の日曜日、剣豪塚原卜伝の時代劇の最後に弘前の道場(北辰道?)が紹介されていました。先生のブログを拝見させて頂いているので、記憶に残りました。
えんぴつ
弘前商工会議所で観光用に作成した絵図は昭和10年のものを下敷きにしています。それと合わせてもう一度、明治絵図をみると、差異がはっきりわかって、小躍りしました。労作です。
渋江の生家があるのもしぶい。
松澤
最近、原子昭三先生が「義に生きた北の先人達」(日本会議青森)を発刊されました。伊東六十次郎などの評伝もあります。直接、本人を知っているひとが書いているだけあり、人物描写がすばらしい。とくに拓殖大学の佐藤慎一郎先生へのオマージュは胸を打ちますし、佐藤先生の中国問題への慧眼は、その後の新資料と照らし合わせてもみごととしかいいようがありません。まだまだ発掘されていない人物がいます。是非ご購入を。
えんぴつ様
北辰堂は実際見ると、みごとなまでこじんまり建物で、あたかも田舎の教会のようです。住宅の中にひっそりとあります。私も一度、中国を再訪したいと思っています。何しろ前に行ったのが、1978年、解放してすぐのことで、街を歩くと外国人見たさで黒山の人だかり、まるでアイドルのような気分でした。
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