2012年11月22日木曜日

中国の空母とステルス機


 中国海軍初の空母「遼寧」が就航した。日米軍事専門家の意見では、ほとんど空母として基本的な性能がなく、全く脅威ではないという点で一致している。理由としてはエンジンが一般船舶用のディーゼルエンジンを使っているため、最大速度で19ノットと低速で、これでは航空機の離陸に必要な揚力が得られない。あくまで練習用空母で、仮に何とか航空機の離陸ができても、燃料は多く積めず、また武装もできない。できるだけ軽い状態でないと離陸できないわけだ。

 また最近、2種類のステルス戦闘機の試験飛行にも成功したが、肝心の航空機エンジンの国産化にめどがたっていないし、ステルス性能にも疑問符がついている。さらにこういったステルス型戦闘機は、通常の航空力学と反した構造となっているため、その操作にはコンピューター制御が絶対に必要で、現時点では高い空戦能力を有する技術はない。試験飛行から実用化まではまだまだ時間はかかるであろう。通常、旧ソ連のようにこういった最新兵器は隠蔽するものを、こうも早く公開すること自体が、航空機会社と政府の思惑、こんな性能の兵器を作ってますよ、アメリカには負けませんという強がりのように思える。

 中国軍では、船舶用エンジン、航空機用エンジンがいずれもネックになっている。軍艦の船舶用エンジンは、ダッシュ力が求められるため、燃費は悪いが、ガスタービンのものが使われている。実は、このガスタービンエンジンは用途がほぼ軍艦に限られているので、生産メーカーは英国のロースロイス社とアメリカのGE社にしぼられている。ロシアもガスタービンには強い。これは航空機用エンジンでも全く同じで、GEとロールスロイスが強い。日本でも、自衛隊の軍艦、航空機のエンジンは、ほぼGE、ロールスロイスのエンジンを使っている。そのライセンス製作を通じて、日本のエンジン技術はそこそこ高く、近年は一部の兵器には国産のものが使われている。一方、中国においては、ずっとエンジン開発をロシアのコピーですましてきたので、近年になって中国の軍事力を脅威と感じ、ロシアが技術提供を拒否すると、途端に軍艦、戦闘機の開発が頓挫する。
 太平洋戦争においても、日本は軍艦の蒸気エンジンは何とか、欧米に近い性能のものができたが、結局、最後まで航空機用、戦車用のエンジンは欧米に匹敵するものができなかった。工業力の差である。戦後はその反省に立って、日本は基礎工学のレベルを上げていき、自動車エンジンでは世界最高の性能を達成できた。ただ民需用とは違い軍需用エンジンについては予算も少なく、戦車用エンジンまでは何とかなったが、航空機、船舶用エンジンはそのレベルに達していない。一国の工業力のレベルが反映される。思うに日本が太平洋戦争中に自動式拳銃の開発が遅れた理由のひとつに、ついにスウェーデン鋼使ったバネができなかったことによる。小さな部品、ひとつひとつが重要となる。
 こういった観点からすれば、中国の軍事力は、現時点ではかなり信頼性の低いものと考えられ、空母保有、ステルス機開発でも、これだけマスコミが騒ぐのは、むしろ自衛隊、軍需産業の思惑もからんでいるのであろう。ただ中国の兵器開発は旧ソビエトのやり方を完全に踏襲しており、その発想は西洋諸国のものと違い、人命、安全軽視、経験に基づくもので、航空機用エンジンにしても耐久性はあまり考慮されず、壊れたら取り替えという発想である。以前、宇宙服開発の歴史をテレビでみたが、ソビエトでは宇宙服の気密性を得るのに、ワンピースの服をパイロットに着せ、その端をぐるぐる巻き、ゴムで縛るのである。あまりに原始的な方法に唖然としたが、これで事故は一度もなく、現在の宇宙服もこの方法である。中国の二隻目の空母は、ガスタービンの開発を諦め、一挙に原子力推進エンジンを選択するかもしれないが、そこには安全設計はなかろう。ネジ一本の精度で、壊れる可能性があり、これはこれで非常に怖い。


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