先日、ヤフーオークションで近藤翠石の「雪の山水」を落札しました。落札価格は5250円でしたが、開始価格が1000円でしたので、ちょっと失敗かなあとも思ったりしました。これで、近藤翠石の作品は3点になりました。普段使いの掛け軸はこれくらいがちょうどいい気がします。あまり高価なものですと保存に気を使います。
近藤翠石は明治3年生まれで、昭和25年に亡くなっています(1870-1950)。この作品は丁巳の年の作品ですから、1917年となり、翠石、47歳の時のものとなります。近藤翠石は香川県の出身で、大阪の南画家、森琴石の門下となります。昭和初期、関西においては中堅の画家だったのでしょう。
作品自体は、あまり個性はなく、普通の南画ですが、ささっと描ける上手な画家です。この作品も冬の状況をうまく描いたもので、今の画家では、こういった描写はできないでしょう。昔の画家は、とくに掛け軸のサイズの構図は上手でしたが、最近の日本画家は洋式の横長の構図は得意ですが、縦長の構図はへたです。
大正、昭和においては、おそらくそこそこの金持ちが購入した絵だと思いますし、値段も今でいうと2、3十万円はしたでしょう。小室翆雲や野口小蘋のような有名画家の作品は、当時それこそ数百万円したでしょう。ヤフーオークションでも時折、これらの作品が出品されますが、贋作くさいものが多いように思えます。当然、高価なものはだまそうとする人が現れ、贋作も作られます。一方、近藤翠石のような中堅な画家の贋作をするようなひとはいません。そのため、これまで買った3つの作品は完全に真筆です。落款も一致します。
あまり絵には詳しくありませんので、他の中堅作家については、よくわかりませんが、近藤翠石だけは少し詳しくなりました。こういった作品は、一般の骨董屋では、作家の名前が知られていないため、なかなか売れませんし、そうかといって数万円をかけて表装しなおす気にはならないと思います。おそらくは、遺族からただ同然で入荷したものの、売る手だてがなく、オークションに流れているのでしょう。
現在、日本書画の骨董は、人気がなく、不当に安い価格となっています。床の間がない家が増えたことにもよるでしょう。陶器はまだ茶道があり、趣味として集めるひとも多いのですが、書画については、古くさいイメージが先行し、価格が一部の有名画家を除いて安くなっています。野口小蘋という女流画家について述べると、大正期小蘋の掛け軸の価格は1000円以上し、同じ女流画家上村松園が500円くらいですから、それよりかなり高く、物価を考えると、現在の価値で200万円以上でしょう。それが今では真筆でも数十万円以下、作品によってはオークションでかなり安く買えるでしょう。
以前、弘前に来ていただいたシンシナティー美術館のアメリカの方に何かお土産をと、色々と考えましたが、結局、下澤木鉢郎の版画を贈ることにしました。小さな白黒の作品ですが、津軽の冬をよく表現した作品です。フレームは邪魔になるので、版画のみをファイルに入れて贈りました。非常に喜んでもらい、美術館で展示するとまで言ってくれましたが、1万円もしないもので、恐縮しています。
こういったことを考えると、近藤翠石のような、昔の上手の画家の作品を、外国人のお土産にするのもいいアイデアかと思います。コンデションのよい、花鳥画などきれいな作品でしたら、喜ばれるのではないでしょうか。また箱入りですと、持ち運びがかさばりますが、巻物そのものをプレゼント紙に包めば、スーツケースの底にでも放り込めば、スペースをとりません。もっと言うなら、1万円以内でオークションで落とした掛け軸を、外国人の多い京都や東京で、2,3万円くらいで売れば、そこそこ売れるような気がします。
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