2014年12月1日月曜日

不登校の子供たち



 私たちの時代、40年前は、不登校の子供達はほとんどいなかった。勉強のできなくても、学校では人気者だったり、あるいはクラスでいじめにあった子も何とか学校には来ていた。学校を休むというのは、とんでもないという意識が親ばかりか、子供にもあった。もちろん、高校に入って中退するものはいたが、それでも小中学での不登校の子供は少なかった。たまに学校に来ない子供がいれば、担任の先生が無理やりひっぱってきて、何とか授業を受けさせていた。

 ところが最近では、小学校でもクラスで1、2名、中学校に入ると、クラスで2、3名の不登校の生徒がいるのは普通になり、それも大きな話題にもなっていない。文科省のデーター(平成21年)によれば、小中学校全体で122432人、割合でいえば、小学校で0.32%、中学校で2.77%とされている。ただこれは年間30日以上、学校を欠席している人数である。この人数には30日以内の児童は含まれず、実感としてはもっと多い感じがする。

 友人、親類の中にもこういった不登校のお子さんを持つケースが多く、家族の大きな心配ごとになっている。学校に行かない子供は、昔はグレて遊んでいたというケースも多かったが、今は基本的には真面目な子供多い。真面目で、ちょっとしたことがきっかけで学校にいけなくなる。やんちゃな子なら、左官、大工などや肉体労働など、できる仕事はいっぱいあるし、実際、その方面で元気にやっているケースも多い。ところが真面目な不登校児童は、こういった仕事にはむかず、どちらかというと引きこもり傾向があって、家にいることが多い。家でテレビを見たり、コンピューター、ゲームをして時間を過ごす。親が元気なうちは問題ないが、子供がこのまま30,40,50歳になっても、この状態では、親としては死ぬに死なれない。この先行きの見えない状況は親にとっても子供にとっても本当につらい。どんな仕事でもいいから、何とかそれで食べていってほしい、親の正直な気持ちであろう。

 私は、すべての子供には何らかの長所があると思う。不登校の子供達も何か、向いた仕事が必ずあるはずである。うちの親類の子供も中学生の時に2年程、不登校になった。今のシステムでは教師からの関わりは少なく、学校側から積極的な関与はなかった。ただ親類の子は友人に恵まれ、何とか復帰することができたが、先生からの接触はほとんどなく、放任された。

 小学校、中学校からの長期の不登校は、義務教育の放棄となり、結果的に基礎的知識の欠如に繋がる。このような状況では、職業選択の幅が非常に狭まり、将来、働きたいと思っても、大きな障害となる。ひいては、税金を収める側から、税金を受け取る側になり、ある意味、国として大きな損失となる。

 国の障がい者教育への投資はまだまだ少ないが、それでも過去に比べると随分充実してきている。それに対して、不登校の子供達への予算はまるでエアーポケットにはいったように、忘れ去られている。将来の納税者としてみる時、それがプラスとマイナスでは国にとっても大きな違いとなることを考えると、個人的意見だが、一人当たり、復帰するまで数百万円かかっても、安いくらいである。カウンセラー、家庭教師、コンピュータでの遠隔教育、予算があれば、いろいろなことができよう。さらには種々の職業を体験させ、子供に合った職業を見つける助けも必要であろう。コンピューターオタクの子供であれば、政府のハッカー対策要員に使えるかもしれない。手先が器用な子であれば、後継者のいない伝統産業を学ばせれば、人つきあいも不必要で、案外いい仕事をするかもしれない。高齢化の進む農家もいいかもしれない。いろんな可能性がある。


 長女のいた小学校では立派な校長先生がいて、校長先生自らが、不登校の子供を2年間、校長室で教え、一緒に二人で体育をしていた光景も目にした。こういった個人的な努力もすばらしいが、国力を考えた時、税金を払う人を増やすことが重要である。現役を引退した先生の活用、ITによる遠隔教育、職業体験など、いくら金をかけてもいいから、国、県、市町村のもっと積極的な対応が求められる。貧困、不登校、ひきこもり、生活保護といった負の連鎖を絶つには、早い時期での対応が必要であろう。また以前にも述べたが、国立大学の教育学部附属小中学校が医学部附属病院に該当するなら、若い先生の教育機関だけでなく、高次医療機関に相当する、難しい問題を抱えた生徒を教える場であってもよい。いくら大学で学生に不登校児の研究を教える教授でも、こういった子供をうまく教えられないようでは、頭でっかちの先生である。一クラス5名でもいいので、不登校の子供を付属小中学校に集め、大学の教官が直接教え、その教育結果を公立学校に広めるようなシステムがあってもよさそうである。優秀な子供だけを集めて教える附属中学校は、もはや何の社会的な意味はない。

 ここに挙げた動画は以前NHKで放送された「学ぶことの意味を探して」であるが(変な団体があげていますが、無視してください)、こういった少人数のきめ細かい指導で、何とか不登校の子供達たちの学力を高めてほしいものである。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

全くその通りだと思います。中学1年の娘がおりますが、入学して間も無く、不登校になり今現在も全く学校へ行っていません。カウンセリングも1度だけ受け。フレンドシップも見学しただけで行きたくないと話し、塾も人がたくさんいて無理。勉強もせず、ただ毎日家にいるだけ。
どうする事もできず、日数がすぎるばかりです。親としては、心配や悩みをとうりこしてしまい、勿体ないなと思ってしまいます。なんとかできる機関、医療、教育ができる事を切に願います!

広瀬寿秀 さんのコメント...

障害者教育については国の大きな予算がついていますが、ポッカリと空いているのは不登校児の扱いです。日常的にかなり多くのケースがあるのですが、あまり問題視されていないような気がします。とりわけ中学生での不登校は、義務教育ですので、一定レベルの教育に達していなくても卒業させてしまいます。基礎学力の不足を招き、大検取得などに際しても大きなハンディとなります。
今は不登校でもいつか学びたいという気になることもあります。その時に、基礎学力が不足していれば、例えば、英語が全く出来ないなど、その時点で挫折してしまいます。アメリカでよくやられるような自宅学習なども一つの方法で、最近はITを利用した学習方法もあるようです。学校、関係機関とよく相談され、不登校とは別に基礎学力の獲得は必要なことと思います。
何とか、いい方向に向かわれることをお祈り申し上げます。