2015年9月13日日曜日

安保法案学習会(弘前大学)





 先日の朝日新聞で、弘前大学の学生らが、安全保障関連法案についてよくわからないということで、勉強会を開いたという記事が載っていた。わからないことを勉強することは大事だと思ったが、よく記事を読むと、安保法案反対の勉強会ということであった。小学校ならいざ知らず、大学生にもなって、勉強とは反対意見だけでなく、賛成意見も聞くことさえはわからないのだろうか。またこうした勉強会を企画した教員のレベルも低い。学生が自分で考えるという教育をするためには、一方的な意見だけを傾聴させる方法は最も避けるべきものである。

 本来なら、こうした勉強会は、反対派の学者と賛成派の学者(軍事評論家、軍人)の意見を聞き、それに学生が参加してディスカッションするか、私なら学生を2つのグループに分けて、一方は賛成派、一方は反対派に分けて、インターネットや本を読んで、自分たちの論旨を研究し、お互いディスカッションをしてもらう。こうすることで、初めて両者の問題点が浮き彫りにされる。片方の意見のみを聞き、それをデモといった行動にうつすのは、最も愚かな行為であるし、そうした愚かな学生を作り出すのが大学の使命ではなかろう。

 さらに言うと、本当に優秀な学生であれば、敢えてこうした安保法案反対勉強会に参加し、賛成論をぶちかまし、教官をやりこめてもよい。どのような事例でも表裏(おもてうら)、利点欠点、問題の有無があり、それらを総合して、どちらがより優れているか結論を出す。これが学問であり、教育である。教壇から一方向に先生の講義を聞くという態度に慣れてしまったのか、自分で考えることができない。こうした批判的な態度を大学4年間で身につけたいものである。

安全保障法案に対する見解は、大きく分けて次の3点である

1.戦争放棄  外交努力で戦争にならないようにするが、万一、他国から攻められたら、すぐに降伏する。憲法9条に沿って、自衛隊は解体し、防衛は沿岸警備隊程度にとどめる。イスラム国のような武力勢力が侵攻したら、奴隷になろうと、妻子がレイプされようと、ひたすら我慢して、非暴力抵抗を行う。

2.専主防衛、領域警備 日本本土のみを防衛する。敵が日本領土内に侵攻し、発砲した時点から戦争を開始する。太平洋戦争の末期の本土防衛戦に準じ、沖縄戦のような国内が主戦場となる陸戦が想定される。

3. アメリカ軍に助けてもらう 敵に攻められたら、防戦的な戦いをし、アメリカ軍が助けてくれるのを待つ。砦の籠もり、援軍を待つやり方である。戦後、日本の基本的な指針である。

4.自主防衛 アメリカ軍の助けがなくても自前の軍隊で国を守る。憲法を改正し、最終的には核保有を目指す。

社民党、共産党、一部の学者など左翼陣営の基本的なスタンスは1であり、日本は憲法9条に沿って軍隊を持たない。安全保障法案に反対する大学生らのグループSEALDsの意見もこれに近い。さすがにこれはだめでしょうというのが、民主党の基本的スタンスで2の見解に近い。日米同盟を基軸とし、日本に敵が攻めてきたら、アメリカ軍に助けてもらうというのが、これまでの日本(自民党)立場であり、逆にアメリカ軍が窮地に陥っても助けないという一方的なものであった。現在の自民党の目指す安全保障法案は、従来の専主防衛では主戦場が国内に限定され、地上戦により民間人も含めた多大な犠牲がでること、主要国として責任ある国際テロ、紛争への関与、アメリカ軍との相互連携を深めることが骨子となっている。戦前の絶対防衛圏とはいわないにしても、できるだけ国内での地上戦を避けるため、本土とは遠い地域での海上、空での戦いを想定している。3の見解を拡大したものである。


 国防は、生命保険に例えられることが多い。生命保険に入っても、死亡、病気にならなければ、掛け金は捨て金になる。高額な保険に入れば、それだけ保険料も高くなるため、生活に合わせて種々の保険の中から望ましい保険を選ぶ。これまで比較的安い保険料で済んだが、環境の変化により病気になる可能性、リスクが高くなり、より高額な保険に入ろうとしているのが、今の状況である。保険会社であるアメリカが裕福であった間は、安い保険料で済み、日本は余った金は他のことにも使えたが、アメリカ自体が最近はおかしくなり、そんな安い掛け金では、十分な保障は出来ないと言い出した。保険料の負担が高くなってもこれまで通りの十分な保障を得るのか、保険の負担は今まで通りだが、保障が減るのを我慢するかという選択なのであろう。高齢になるほど、病気や怪我に鳴る確率は高くなり、保険料の負担を減らすには預金を増やし、万が一の時は自分で守らなくてはいけない。ただ個人の生命保険は、いずれ死ぬのだから、高齢になれば保険に入る意味も少ないが、国は死んだら困る。

 先の大戦で日本では未曾有な犠牲を払った。その要因を突き詰めると、戦意高揚を図る一方的なマスコミ、新聞の報道、論調であり、そしてそれを無批判に受入れた国民の批判精神の欠如である。こうした反省に立つなら、新聞、マスコミも中国、韓国に遠慮せずに、国防に対する両論を報道すべきであるし、国民、特に大学生は自分で考える力をつける必要がある。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

いつも先生のブログを拝見しており、共感するところがあります。私が思うことは、中国は絶対に進出してこないっていいきれるのでしょうか。また、北朝鮮は絶対に攻撃してこないといいきれるのでしょうか。共産党や民主党の方々に聞いてみたいところです。もう一つは自分の国は自分でしっかり守る、自衛が当たり前と思うのですが。軍備は侵略ではなく、他国からの侵略を阻止するためにもつべきものと思うのですが。

広瀬寿秀 さんのコメント...

全くその通りです。しっかりした軍備こそ、最大の防衛となり、戦争を防ぐことができると思います。たまたま歴史上、初めて占領された国がアメリカだったからよかったものの、中国、北朝鮮だったら、どうなっていたでしょうか。今の生活をしっかり守りたいなら、それ相応の保険金を掛けるのは、当然と思えます。逆に周辺国の脅威が減れば、掛け金を減らせばよいだけで、状況に合わせて柔軟な姿勢を取るのが政治家の役目です。先の東日本大震災、原発事故における民主党のあたふたとした対応、これを見た我々はもはやこうした政党を信じることはできませんし、逆にこうした政党が再び政権を取るときこそ、周辺諸国は弱みに付け入る可能性は高いと思います。そうした状況下で、民主党は今の安全保障関連法案反対の論理で、処理できるか、見物です。