このブログでも何度も矯正料金を取り上げてきた。私も23年前に青森で開業した時、苦慮したのは矯正料金設定である。矯正料金は一度、決めるとなかなか値上げができないため、最初の設定をどうするかが非常に重要となる。すべての費用を含めた一括料金と基本治療+毎回の治療費の二つの方法が多い。例えば最初から最後まで(再治療費を含む)の治療を63万円とし、来院ごとには治療費はとらず、一括料金を2年、24回に分けて徴収する。この場合は、総額が前持って決まっているため、途中で治療を止める場合も少なくし、患者側からすれば、これ以上費用はかからないという安心感がある。もう一つの方法は基本治療費、私の診療所で言えば40万円と毎回の調整料、さらに保定装置料4万円といったもので、来院回数が増えると総額の費用は多くなる。上の例で言えば、基本治療費+(調整料3000円×30回=9万円)、保定装置料4万円で計53万円となる。最初の費用は安いが、総額がいくらになるかは不安である。
こうした矯正料金については、全く根拠はなく、実際の装置そのもの、例えばブラケットの費用は一個、数百円〜2000円くらいであり、すべての歯にブラケットをつけても材料費はせいぜい数万円くらいである。ただブラケットを唇側やリンガルブラケットをインダイレクトでつける場合やインビザライの技工料は10〜30万円と高いが、それでも一般的な矯正治療費のほとんどは技術料と考えて良い。この技術料というのは、きちんとした仕上がりを達成するだけでなく、後戻りに対する再治療費も含む。例えば治療が終了して保定に入って、数年たち、後戻りが起こればその再治療(調整料は除く)の費用はかからない。
一般的には技術料というのは、その先生のキャリアに依存する。世界的に有名な美容師であれば、その人にカットしてもらおうと思えば高額な費用がかかる。同様に欧米では医療分野であっても、その世界の権威であれば、莫大な治療費がかかる。ところが矯正歯科で言えば、全く矯正のキャリアがない先生でも200万円ということもあるし、本当に素晴らしいテクニックを持つ先生でも80万円ということが普通にある。日本矯正歯科医会には日本を代表する矯正歯科医が加入しているが、そのアンケート結果をみても、それほど高額な矯正費であるところは少なく、通常の唇側矯正で100万円を越えるところは少ない。
普通に考えれば、値段が高くて、技術が下手なところにいく患者はないだろうと思うが、それが実に多い。勉強不足でそうなるのはわかるが、インターネットでさんざん調べた結果、なんでこんなところに行くのかというところに行く。インターネットは、便利な反面、HPではいくらでも細工はできるし、同様に口コミもSEO対策で何とでもなる。インターネットで調べると、HPがきれいで、最新の治療法が載り、患者の評判もよければ、ついそちらに来院するであろう。ただこうした歯科医院をよく調べると、矯正の専門教育を受けていない先生や若手の矯正認定医であることが多い。ここで最初の矯正治療費は技術料ということに戻ろう。こうした若手の先生のところでの治療が安ければわかるが、その師匠に当たる先生のところより治療費が高いことが多々ある。以前、私の医院に東京の歯科医院で矯正治療中の患者がトラブルのため来院した。メタルブラケットがでたらめにつけられ、ひどい治療である。何でもワイヤーが飛び出て痛いので応急処置をしてほしいということで、すぐに処置は終了した、患者は青森県内に住む人で、奥さんも東京で治療を受け、自分も先月から治療を受けに青森から東京に通っているという。費用はというと一人200万円、二人で400万円となる。矯正治療の評価は、模型とレントゲン写真で完全に評価できるが、この先生はおそらく、この費用に見合う技術があるとはとても思えない。日本最高峰の先生でもこうした費用設定はなく、まさに怖いものしらずの価格設定である。まともな矯正歯科医であれば、青森から東京まで通わせる時点でアウトであり、通常、近くの矯正歯科医を紹介する。
矯正治療は高額な治療であるので、まず実際の治療を行う先生のキャリアをみてほしい。日本矯正歯科学会の認定医が最低条件である。さらにかかりつけの歯科医か紹介してもらうのがよい。これまでの紹介した患者からの評判や結果を充分に知っているからである。そして少なくとも二軒以上の、場合によっては数軒の歯科医院で話を聞くのもよいが、かえって混乱することもある。一番いいのは、矯正専門医から紹介してもらうのがよい。東京の大学に進学し、そこで矯正治療を受けたいなら、まず地元の矯正歯科医院を訪れ、そこから紹介してもらうのがよい。あるいは周りの友人で矯正治療をしてきれいな歯並びの人がいれば、その歯科医院を聞くのもいいかもしれない。少なくとも高い治療費=いい治療とは考えないでほしい。
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