2018年12月14日金曜日

Smile Direct Club 歯科医院に行かなくても矯正治療できる?


こうしたキットで自分で型をとるか、上のスマイルショップで肩をとってもらう


 最近のアメリカの矯正学会で最もホットな問題は、“Smile Direct Club”社による歯科医師が介在しない矯正治療である。この会社は以前、歯の漂白をするためのマウスピース、漂白剤、さらにLEDによる照射装置からなるキットを通信販売、アマゾンなどで79ドルくらいで売り、評価を見てもそこそこ漂白されるようで結構人気があった。

 十数年前からインビザライン社が透明なマウスピースを用いた新しい矯正治療法を開発した。これは歯科医院で型取った模型をコンピュータで解析して、最初の不正咬合から正常咬合までの過程を48くらいに分割して少しずつ動かすようなマウスピースを作る。2週間ごとに患者に与え、1日に20時間程度使ってもらい、少しずつ歯を移動する方法である。比較的簡単な症例であれば、この装置だけで治るために、アメリカでは人気があった。ただ費用は製作費が高額なこともあって60万円以上になった。

 最近、インビザライン社の治療法の特許が切れたため、新たに参入してきたのが、先のSmile Direct Clubである。Smile Direct Clubのホームーページから登録すると、患者さんに79ドルで印象トレーとシリコン印象剤、説明書が入ったボックスが送られてくる。まず患者自身がトレーを口に合わせ、同封のシリコン印象材を練って、それをトレーに入れて上下の口の印象をとる。基本的には2セットとり、他にはスマホで噛み合わせの写真も送る。印象に問題なければ、後日、最初から終了までの48くらいのマウスピースが大きな箱で送られてくる。最初のパックからマウスピースを出して装着し、順次2週間ごとに次のものと交換していく。全くインビザラインと同じであるが、その間、歯科医院には行かない。費用は一括払い1850ドル、分割の場合は最初は250ドル、その後は毎月80ドルの24回払いとなる。治療終了後の保定装置は99ドルとなる。さらに最近では全米各地に、Smile Shopが開設され、ここでは無資格の店員が、30分くらいで各種の説明、口腔内写真とデジタル印象をとる。ここでのミソは、店員は歯科医師、歯科衛生士の資格がないため、口腔内に手を入れることはできず、口角鈎も患者が自分で引っ張り、店員がスマホで写真を撮る。デジタル印象では、デジタル撮影機を口の中に入れて、全体の歯列を撮影して、三次元データーを取っていく。これであれば、店員でも印象が取れるというわけである。費用は全体の治療費の中に含まれる。

 歯科医師会や矯正歯科学会では、かなり反対をしており、訴訟もあったようだが、今の所、禁止とはなっておらず、民間の健康保険会社もこちらの方が矯正歯科医院で治療を受けるより保険会社の負担が少ないため、利用が可能である。最大限保険を使うとなると、1850ドルの治療費のうち、保険会社が1100ドル負担するため、実質の負担額は750ドルとなる。かなり安い。

 こうした歯科医院を全く介さない治療法は何か問題があればと危惧する声も多いが、一方、私からすれば、従来のインビザラインを使っている歯科医院では、患者が来れば、新しいマウスピースを渡して、その経過を見ているだけなので、あまり変わらないように思える。ただ症例によっては、歯に透明な付属品をつけたり、ゴムを併用する必要があるため、コンピュータ上で単純にマウスピースが作られても治らないケースもある。それでもマウスピースのよる治療の最適用が非抜歯のちょっとしたデコボコであるなら、きちんと使えばSmile Direct Clubのキットで十分に治るし、そうした体験者の声も多い。日本では、医療法の問題もあり、こうした治療法は今後も認められないと思うが、それでもアメリカに行く折に、近くのSmile Shopに行って、1850ドルを払えば、日本にキットを送ってもらい、治療も可能であろう。

https://smiledirectclub.com

*アマゾンに矯正用セラミックブラケットが売っていました。一症例分(20歯で)で1091円、むちゃくちゃ安いです。中国製にしても安すぎる。誰が使うのでしょうか。





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