日本でも漢字は覚えるのが難しく、廃止しろという声は明治の昔から盛んに唱えられてきた。太平洋戦争後も占領軍により、識字率向上のために漢字を廃止してローマ字にしろという計画もあったが、実際に日本人の漢字識字率を調べると非常に高く、そのまま計画はうやむやになった。それでも森鴎外など江戸時代を知る明治の文筆家は、現代人に比べて驚くほど漢文の素養があり、かなり達筆で書かれた書物なども読みこなせた。そうした点では今の日本人は昔の人に比べて漢字、漢文の読解力は低下したと言ってもいいだろう。ただこれは何も日本人だけではなく、漢字圏である中国人や台湾人にも当てはまり、彼らとて古代の書は読めないし、草書や隷書で書かれた掛け軸などを読むことはできない。それでも中国人留学生に聞くと、日本の大学などで使われる教科書も、平仮名がわからなくても、2/3は漢字で意味はわかるし、街の標識からレストランのメニューは何となくわかるようだ。そうした点では、中国人、台湾人からすれば日本は海外であっても、ある程度漢字で理解できるため、気安く旅行にいける国であるようだ。現在では、ワープロ、コンピュターの普及により簡単に漢字変換ができるために、廃止論の声もなくなってきている。
ところが隣国に、漢字を廃止した国がある。韓国である。この国は議論、理論先行で、一旦その方向に行くと躊躇なく進む国であり、日本、中国で何度もあった漢字廃止を一気に進めてしまった。もともと李朝朝鮮時代は、ハングル表記もあったが、基本的には漢文が主体であり、日本統治期にようやくハングルの普及が進められ。日本の平仮名、片仮名、漢字の混合表記と同じく、ハングル、漢字の混合表記が一般的となった。ところが独立後に、ナショナリズムの台頭により漢字廃止の機運が一気に盛り上がった。それでも新聞、本などでは表現が便利なためハングル、漢字混合であったが、1972年に漢字廃止宣言があったのち、急速に漢字が廃止されるようになった。その後、漢字をほとんど知らない世代が中心になるようになると、新聞や本などからすべての漢字がなくなった。最近では漢字復活との声も上がっているが、もはや手遅れでベトナム同様にハングルのみの国家となった。
ベトナムの漢字廃止は韓国より早く、19世紀後半にフランスのカトリック宣教師が作った“クオック・グー”と呼ばれる表記法が一般的となり、1945年以降は漢字教育も廃止された。そのため、ベトナムでは19世紀以前の古文書はもはや専門家以外には全く読めない言語であるが、これは歴史書の分野となり、現在のベトナム人からをそれほど問題はない。一方、韓国は1980年頃までまだ漢字を使っており、新聞、書物、手紙なども漢字混ざりとなっており、今の韓国人はこうした文書を一切理解できない。日本に置き換えると、ベトナムの例で言えば、一般の日本人が江戸時代の文書を理解できなくても全く問題はないであろうが、韓国の例で言えば、1980年以前の文がほとんど読めないことなる。家の物置にあった古い平凡パンチも一切読めないことになる。これはある意味、すごいことで、文化的な断絶と言って良い。最近の調査では韓国民の30%は自分の子供の名前を漢字で一文字も書けなかった。さらに大学生でも“大韓民国”と漢字で書けるのは25%しかいないという。
文在寅大統領、外務大臣やそのブレーン、さらに裁判官も漢字が読めず、もちろん日韓請求権協定の文書も読めず、慰安婦、徴用工関係の古い文書も読めない。盛んに歴史問題を取り上げる隣国であるが、その国こそが自国の歴史を全く理解できない国となっている。最近では、韓国の歴史学者すら漢字を十分に理解できないため、自国の近代史資料を十分に理解できず、日韓史の歴史学者による共同研究は日中以上に難航している。全くもってわけのわからない国である。
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