もし日本という国が世界になかったら、存在しなかったら、世界はどうなっていただろう。大胆な仮説であるが、興味深い。
世界の中の日本をみると、明治維新前に、世界史に日本の名が出ることは少なく、最初に現れるのは日露戦争、その後の太平洋戦争であろう。日露戦争は有色人が白人に勝ったら戦争として世界史に残るものであり、太平洋戦争もその規模において歴史に残るものである。それ以外に世界に影響を与えたメイドインジャパンはほとんど文化面にものとなろう。
1. 科学、工業
アジアのノーベル賞受賞者数(文学、平和賞を除く)は、日本が23人、中華民国が3名、中国が1名で、圧倒的に日本が多い。例えばアフリカの受賞者数は南アフリカが1名、エジプトが1名なので、日本からの受賞者がいなければ、アジアとアフリカの差は少ない。日本がアジアの科学を牽引し、それを模倣して台湾、中国、韓国などの東アジアが工業国として発展した。もし日本がなければ、今日のような東アジアの発展が見られただろうか。
2.浮世絵、北斎
19世紀の欧米でのジャポネスクの影響は非常に大きく、ゴヤ、ゴッホ、モネなどの印象派画家に浮世絵や北斎など日本美術は、決定的な影響を与えた。おそらくは印象派自体が起こらなかった可能性もあり、現代絵画史は今とは違ったものになった可能性がある。
3.アニメ、漫画、コンピュータゲーム
アニメ、漫画とも日本人の発明ではないものの、手塚治虫など日本の漫画家あるいは漫画文化、宮崎駿のアニメがなければ、随分今とは違ったものとなったであろう。さらにニンテンドーのファミコンやゲームボーイやソニーのプレイステーションもアニメ、漫画という文化の上に立ったもので、多分、日本がなくてもアメリカが同様なものを作ったと思うが、今とは全く違う状況になっていたに違いない。
4.陶磁器
古伊万里は17世紀に、ヨーロッパに輸出され、その出来栄えに驚き、その模倣としてドイツのマイセンやデンマークのロイヤルコペンハーゲンなどができた。もちろん日本がなくても中国の優秀な陶磁器があったので、その影響は限局的にはなるが、それでも余白の多い日本式の構図はなかったであろう。
5.靴を脱ぐ、日本食、柔道、空手、俳句、折り紙、生け花
欧米では日本を真似て家では靴を脱ぐ習慣が広まっている。中東などでも靴を脱ぐ習慣はあるものの、これとは関係ない。また日本食、柔道、空手、俳句、折り紙、生花など日本発祥の文化、スポーツは、今では世界的に広まっている。まあ、これらは別になかったとしても、特にどうってことはないかもしれないが、それでも悲しむ人は世界中にいる。
6.カメラ、ウオークマン、スマホ
戦前、カメラといえば、ライカ、コンタックスなどのドイツ製であったが、それの劣化コピーから日本のメーカーが発展した。そしてニコン、キャノンなど数社のカメラメーカーの切磋琢磨から、デジタルカメラが誕生、普及した。おそらく保守的なドイツメーカだけなら、ここまでのデジタルカメラの発展はなかった。さらに音楽を外で聞こうというソニーのウォークマンは、アップルのi—podから、さらにI-phone、スマホに繋がったのは間違いない。
7.ソビエト、中国、韓国
日本のないアジアを考える場合、アフリカのことを見れば良い。イギリス、オランダ、フランスなどの植民地であったアジアは、太平洋戦争がなくても、おそらくは1950年代には独立したと思われる。この中には北朝鮮、韓国、中国も含まれ、近代化の遅れた清王朝や朝鮮王朝は、ロシア、イギリスなどの植民地になっていた可能性がある。またロシアもおそらくは日露戦争がなければ、革命は起こらず、ロマノフ王朝が続いていた可能性がある。日本に最も近い、韓国、台湾、中国がアジアの中でも最も近代化が進んだことから、日本がないアジアは、おそらく言い方は悪いが、日本から離れたアジア、フィリッピン、マレーシア、ミャンマーあたりの水準であったろう。孫文、日本のいない中国でも清王朝は崩壊し、外国植民地、あるいは軍閥による戦国時代のような分割国家となっていたろう。
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