昨年、医療広告ガイドラインができ、HP上での広告規制がかなり厳しくなった。それまでは看板、雑誌などで医院を広告する際には厳しい規制があり、患者誘導となるような表現はほとんど禁止されていた。ただ、ネット上のHPではこうした規制もかなり甘く、ほとんど何でもありの状態であった。こうした状態により患者トラブルも増え、さらには特定商法取引法に矯正歯科も含まれる可能性が出てきたため、矯正学会でもこうしたネット上での広告を監視するようになった。実際には、学会で広告規制の雛形を作り、それを周知させるために、学会でアナウンスすると同時に、認定医、専門医の取得あるいは更新の際に、医院のHPをチェックして、広告での表現に問題があれば、それを指摘し、改善するまで資格取得できないようにした。
例えば、私のHPでも以前は、患者さんの許可を得て、治療前後の口腔内写真を載せていたが、これは禁止となった。というのは全ての医療行為は、人間を扱っているために、必ずしも当初の目的通りに終了できるわけではなく、治療前後の写真を載せることは、患者に間違った情報を与えることになるからである。もちろん同様な理由で、治療終了した患者さんの声も載せられない。また“東北で唯一”、“最高の治療”などといった表現も禁止されている。そのため私のHPで載せていた“弘前で最初の矯正専門医”、“青森県で唯一の日本矯正歯科学会専門医”といった表現も、間違っていないが、禁止となり、消去した。またインビザラインなどのメーカーに依存した特殊な治療法なども掲載できず、例えば、自分の歯科医院では、オームコ社のデーモンブラケットを使って矯正期間を短縮しているといった表現もダメである。また治療患者数などを表示するのも難しくなり、私のHPでも”300人以上の口蓋裂患者“、“250名以上の顎変形症患者“などの表現も消した。逆に患者に与える情報として重要なことの一つに、矯正料金の明示がある。自費治療で、患者のもっとも知りたいのはいくらかということで、それはきちんと載せろというわけである。さらに日本矯正歯科学会の専門医、認定医の表示については、今のところ厚労省に認められていないため、表示は△となっているが、東北で数人とかの表現が×となっている。
こうした規制により私の医院のHPもかなりの部分を削除したが、逆に規制に無関心の歯科医院、認定医や専門医がいないところでは、日本矯正歯科学会の勧告はほとんど関係がないため、好き勝手にネット上で誇大広告をしている。つまり認定医や専門医を持っている矯正治療のプロは、広告規制を守らなくては学会から認定されないため、客観的な事実しか載せられないのに対して、広告規制に無関係な一般歯科が派手な宣伝をして、患者はそちらに行ってしまう、悪貨が良貨を駆逐する状況になっている。
どこの歯科医院がいいかなどほとんどわからず、患者さんの多くはネット上の情報から見つけるしかない。そのネット上の情報が、今のように野放しの状況で、かつ専門医のみ広告規制がある状態は非常に問題があり、一般歯科医においても広告規制の周知と何らかのペナルティーをさせるべきである。もちろん医療広告ガイドラインには中止命令や行政指導、罰金もあるが、未だ実施されたことはない。JAROのような機構を作るのも一つの手であるが、それ以上に日本歯科医師会、県歯科医師会で、自主的な指導や厚労省による開設取り消しなども必要かもしれない。おそらくは、過激な広告をしている歯科医院、一つを申し訳ないが犠牲になってもらい、厚労省からの指導、営業停止などの厳しいペナルティーを課せれば、一気になくなる。人間とは臆病な生き物で、ペナルティーがあれば、やめるものである。
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