2019年10月3日木曜日

光ミュージアム 近現代日本画の軌跡

この絵以上に陳腐な作品であった(横山大観)


弘前博物館では、現在特別企画展として「光ミュージャム 近現代日本画の奇跡」を開催している。岐阜県高山市にある光ミュージアムのコレクションから、明治初期からの著名な日本画家の作品を展示している。

この時代の日本画家は比較的で好きで、興味があるため、本日、早速行ってきた。平日の2時過ぎということもあり、あまり来場者もなく、ゆっくりと観賞できた。光ミュージアムというのは世界真光文明教団の初代教祖、岡田光玉の業績を讃えるために作られた美術館で1999年に開館した。実際に誰が作品を購入したかは不明であるが、美術館コレクションとしては一般的な個人美術館に比べて作品テーマーが雑多で、今回の企画展もその傾向がある。

菱田春草などはいい作品であったが、巨匠、横山大観のものは大型の屏風も含めてつまらない。ことに昭和14年作の蓬莱山という作品は完全な駄作で、一瞬偽物ではないかと思ったほどである。川合玉堂の作品も横山大観ほどではないが、金があるんだったら、もう少しいい玉堂の作品を購入してはと思った。一方、美人画は、内容は濃い。上村松園は、あちこちの展覧会で見ているが、彼女の絵は本当に上手で、今回のコレクションの作品も見事である。特に明治35年作の「夏の夜図」は、線描が本当に細くて美しく、女性の柔らかい曲線を表現している。ただ昭和12年頃、年齢でいうと62歳頃の作品「美人之図」は顔部分で、綺麗に描かれているが、どうも着物部分の描写が太くなっていて、絵の雰囲気を壊す。他には鏑木清方や伊東深水の作品も見事である。

明治期の日本画の優れた作品は、ほぼ国立博物館や海外の主要美術館に収められ、また戦前の金持ちの個人コレクションとなっている。そのため横山大観でもいい作品は横山大観記念館などの収められていて、明治大正期の大観のベストな作品はあまり世にでない。足立美術館の横山大観、ことに戦後の有名な富士山の絵はあまり評価できない。一種のお飾りのような絵であり、芸術性は乏しい。もちろん横山大観は近代日本画のリーダーであり、その才能はすごいが、晩年、名を挙げると、人々が期待する安易なテーマー、富士山、蓬莱山などを書くが、これはつまらない。

ただ一つ、ものすごくびっくりしたのは、ほとんどの作品は掛け軸だったが、その表装は立派で、金がかかっている。最高の表装をしているようで、これだけは流石に展覧会作品と思った。実をいうと、うちにあるオークションで買った掛け軸もそこそこいいと思っているが、それでも表装だけは比較にならない。日本画全体に思うのだが、作品の名を隠して作品を評価、それもできれば外国人に見方で評価した場合、どうであろうか。もちろん今回の展示会の美人画の評価はかなり高いと思われる。外国人から見た日本人女性の典型がそこにはあり、その表現や描写法も西洋画とは全く異なり、中国やインドなどの美術とも違う、日本独自のものであり、見所はあり、それはコレクションとしても価値がある。



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