2020年7月5日日曜日

矯正治療をする先生へのアドバイス 2

こうした単純な治療前後の写真のHP上の掲載は、医療広告ガイドラインで禁止されている。また将来的には日本矯正歯科学会の認定医の資格違反となる可能性があり、バイトにいく矯正医、雇う歯科医院双方が、医療広告ガイドラインを遵守しないといけない。単純な治療前後の写真はダメだが、一方、治療費の記載は必要となる。注意が必要である。



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5.     矯正歯科医のバイトは雇わない
 自分では矯正治療はしないが、矯正歯科医を雇って治療をさせているケースがある。自分でも経験があるが、1週間に一回くらいであればまだいいが、1ヶ月に一回くらいの治療であれば、その間にブラケットを取れた、装置が壊れたなどのトラブルがあり、なかなか治療が進まないし、それに伴い患者からのクレームが多くなる。費用もバイトの先生のところ料金なので、安くはない。また土日が自分の矯正歯科医院の患者が多いので、バイトには行けず、バイトに行くのは平日となる。月1回の矯正治療日で、一人の矯正歯科医が見られる最大患者数は40人くらいなので、年間の受け入れ患者数は20人くらい(マルチブラケット10名、その他10名)となる。マルチブラケット患者が月に一度の来院で、年間10名が2年間で20名、早期治療では5年間、2、3ヶ月に一度は来院するので、月に20名くらい来ることになる。ただし、実際に月一度の矯正治療日に40名も患者が来る医院はほとんどなく、せいぜい1020名くらいであろう。その場合の年間の新患数は5-10名くらいで、矯正歯科医へのサラリーを払えば儲けは少ない。それなのに、一度始めれば、矯正医も一般歯科医も、一人でも患者がいる限り、途中で止めることはかなり難しい。かって地方では矯正専門医がおらず、東京などから来るバイトの矯正歯科医が珍重されたが、弘前市でいえば、私のところより費用が高くて、月に一度しか見られないのであれば、バイトの先生がよほどの名医でなければ行かないであろうし、そうした名医は自院の治療が忙しく、バイトに行く暇はない。

6.     成人患者は避ける
 成人患者は、要求が高いし、治療にはほぼ100%、マルチブラケット装置が必要となる。また多くは抜歯ケースで、場合によっては外科的矯正を併用することもあり、難度は高い。一部の歯科医院では、わずかなでこぼこなど簡単な症例に矯正治療を勧めることがあるが、そうしたわずかな問題を気にする患者は、神経質で難しい場合も多く、必ずトラブルとなる。下の歯のでこぼこだけの患者の場合は、よほどでなければ治療しない。また子供の場合は、装置を使ってくれなかったり、使用時間が少なかったりするため、治療結果をそのせいにすることもできようが、成人ではそうしたことができず、術者の技量に起因することになる。補綴を前提とした部分矯正くらいにしておいた方が良い。

7.     契約書を作る
これは矯正歯科専門医でもそうだが、検査をしたらその結果を文面にして費用も含めて必ず患者に説明する。ただし患者はいつでも契約を破棄することはでき、基本的には矯正治療の進行度合に準じて治療費を返金する。昨年も神奈川歯科大学が消費者機構日本の指摘により“いったん納入された料金は理由の如何を問わずお返しできません”の文言を消費者契約法により削除することになった。将来的に矯正歯科も特定商取引の適用となる可能性もあり、かなり複雑な契約書を書かないと、治療そのものの支払い義務がなくなる。つまり契約書がないと患者は治療を受けても治療費を払わなくても、いいことになる。

8.     患者を脅かさない
 これは最もしてはいけないことであるが、ごくごく一部、悪徳医と言ってもよいが、こうした先生は患者に矯正治療を勧めるために、脅すことがある。“不正咬合のそのままにしておくと、顎関節症になる”、“虫歯や歯周疾患になる”あるいはひどいのになると“肩こり、腰痛や、体調の悪さは歯並びからくる”などと言って、患者を脅して治療を勧める。いずれもエビデンスはなく、不正咬合と顎関節症の関係は否定されており、矯正治療で治ることはないし、歯並びが悪いとう蝕、歯周疾患が多いという研究もない、ましてや体調の悪さは歯並び以外の原因がはるかに大きい。医師は患者の不安を解消させるところであり、逆に不安を増長させるような行為は決してすべきでない。もっというなら、こうした考え、“体調の悪いのは歯並びのせいである”と信じている患者には絶対に矯正治療をしてはいけない。かなり難しい患者が多いし、矯正治療によりこうした主訴を治すことはできないからである。

以上、まとめると一般歯科医では、小児の矯正治療のみを、極めて安い装置代、できれば先生が作る、で、十分に治療の限界を説明して行うべきである。そして治療がうまく行かないときは、躊躇なく、矯正専門医にこれまでの資料、経過、費用などを含めて紹介すべきである。



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