2020年7月9日木曜日

矯正歯科における医療広告ガイドライン



 日本矯正歯科学会では、HP上の医療機関の広告に関して、かなり厳しいガイドラインを設けて、その周知徹底を図っている。具体的にいうと、矯正歯科専門医の取得に際しては、症例審査、試験などと一緒に、医療機関のHPも日本矯正歯科学会の倫理規程委員会が審査して、その修正を求めることになった。

 私のところのHPもチェックされ、修正した上、何とか認められた。まず“最新”、“県内唯一”、“最先端”などの表現はできず、同様に“症例数○○例の経験”も一年ごとの集計したものを複数年にわたって示す必要がある。また“比較的痛みが少ない”、“治療期間が短い”、“抜歯をしない”、“不定主訴が治る”などの言葉は誇大広告に該当するので掲載できない。体験談や口コミ情報なども禁止され、治療前後の写真などについても限定解除条件を満たさないと掲載できない。ここでの限定解除条件とは、治療内容、費用などの関する事項や、治療上のリスク、副作用などの詳細な説明を行った場合のみ、治療前後の写真が掲載できる。もちろん、内容も含めて患者からの同意書が必要となる。また矯正装置の商品名をそのまま載せることはできず、インビザラインのような未承認品については、かなり詳細な説明が必要となる。費用については、無料相談や検査などの費用を強調するものは品位を損ねるものとして禁止されるが、一方、大まかな矯正治療費については必ず記載しなくてはいけない。

 私のところのH Pでは、まず掲載不可能な語句は全て削除し、治療前後の写真もやめた。ただ料金の項目で“兄弟割引10%OFF”と小さな字で書いていたが、これについては品位を損ねるものとして削除を求められた。すぐに削除して、一応HPの審査は通った。他の矯正専門医のHPを見ても、皆さんなかなか苦労しているようで、やはり治療前後の口腔内写真は臨床レベルを示すために必要と感じているようで、限定解除条件に合わせてHPを修正しているところが多い。HPをみる人は、矯正治療でどれだけ良くなるか、矯正治療前後の写真は見たいものである。ただ限定解除条件の書き方が定型化して、これもどうも▲?であり、またあまり詳しい説明が必要となると、患者にHP上の掲載許可を求めるのが難しくなる。自分の写真がHPに載るのは誰も嫌なもので、そうしたお願いをするのに謝礼や治療費のディスカウントが行われるとすると、それも問題である。またこうしたHP上のガイドラインは、バイトなどに行っている一般歯科医のHPにも適用され、矯正歯科医が月1回バイトに行っている歯科医院のHPも修正を求められる。こうしたこともあり、当院のHPには治療前後の写真はやめ、不正咬合の種類を示すに止まる。

 こうして日本矯正歯科学会の医療広告ガイドラインに沿って、HPを修正すると、広告としては非常に魅力の少ないものとなり、逆に無視した歯科医院のHPの方に患者の注目が集まることになり、不公平かなあと思ってしまう。何も医療広告ガイドラインは、矯正歯科のみに適用されるものでなく、すべての歯科医院に関わるものであり、こうしたガイドラインに当てはまらないものは医療法の規定違反となると言える。もちろん患者に被害が出るような悪質で誇大な広告は厚労省の指導が入るが、例えば治療前後の写真を入れているHPはたくさんあり、こうした歯科医院は、そもそも医療広告ガイドラインそのものを知らない場合やこれくらいは大丈夫と思っている場合が多い。結局はルールのない広告は業界自体の品位を下げることになり、その自浄は業界が責任を持たないといけない。

 最近では、当院の新患の7割くらいはインターネットを介してものであり、いかに患者はこうしたツールで病院を選択するのかがわかる。レストランの場合は、食べログなどで調べ、実際に食べてみればいいだけだが、矯正歯科の場合は、結果が出るのは少なくとも二年先であり、なおかつ一旦治療を開始すると、基本的には他にはいけなくなる。それゆえインターネットだけで病院を決めるのは、かなリスクがあり、できれば実際に治療をしている友人、知人に聞くのが一番いいと思う。よく見ると矯正装置をつけている人は案外、周りにいるもので、そうした人を見つけて今行っている矯正歯科医院のことを聞いてみれば良い。

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