2020年7月2日木曜日

誰でもできる水彩画 2

奈良光枝(昭和23年)

トレース画 この段階で全然似ていない

彩色するとさらに変になる


 トレース図を用いた人物画に挑戦した。最初は家内の写真を使って描こうと思ったが、こうしたブログで発表すると後で怒られるので、違う人物を使うことにする。輪郭のはっきりした欧米人の方が向いているように思ったが、日本人でいいモデルはいないかと思い、ふと思い出したのが、“青い山脈”などで有名な弘前市出身の歌手、奈良光世さんが、ほりが深くていいなあと思った。早速、ネットで写真を検索したが、あまりいい写真がなく、戦後すぐに地元、弘前に帰省した時の写真があったのでこれを利用した。素材自体はかなり小さな写真なので、A4に拡大したが、細部が全くわからない。髪は後ろにリボンで束ねているようだが、はっきりしない、また着物の柄も、さらに白黒写真なので着物の色もはっきりしない。おそらく白地に薄い紫の柄の入ったものだと思うが。

 まず前回の方法に沿って、A4普通紙にトレースしたが、この段階で、写真と全くイメージが違う。また着物の折れ具合がわからないし、髪型が黒くなってしまったので、ロングヘアーかショートヘアーかもわからない。このあたりは全く想像で、イメージとしてはショートヘアーが似合いそうなので、思い切って髪型も変えた。

 着色をしてみたが、影がうまく表現できず、ペン画で人物を描くにはかなり難しい。完成した絵は全くモデルとは似ておらず、タレントの高嶋ちさ子を美人にしたようなものとなった。黒のペンで輪郭を描いたが、女性のモデルの場合は、赤や茶色、青色など、もう少し優しい色の方がいいかもしれない。ただこうした技法のいい点が、簡単に、1時間くらいで描けるので、忙しくても何とか完成でき、私のようなせっかちな人にはいいのかもしれない。

 そういえば、線画といえば、日本の浮世絵が代表となるが、美人画は、瓜実顔、細い眉と目、そしておちょぼ口となっている。これは線画で顔を描こうとするとこうした表現しかできない。人間の顔は造形としてはかなり繊細な対象で、本物に似せようとするのは限りなく難しい。まして一本の線で表現することは不可能であり、重ね塗りができない浮世絵、あるいは日本画では、油絵のような立体的な表現ができなかった。ルネサンスの人物画はモデルとかなり似ているものであったが、浮世絵はあくまでその特徴を線で捉えた、ある意味、抽象画と考えても良い。ゴッホなどの印象派の画家が日本の浮世絵に憧れたのは、こうした抽象性、平面化であり、ペン画でもそうであるが、線画による人物表現は模写という点ではもともと難しいのだろう。おそらく線描画による江戸時代の最高の人物画家は士族出身の渡辺崋山と椿椿山で、両者ともかなり西洋的な手法を取り入れ、立体的な人物像を描いている。やはり陰影を用いた西洋的手法でないと具象的な人物像は無理なのだろう。下は椿智山が描いた渡辺崋山像。









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