昨日、久しぶりに3歳児歯科健診に行ってきた。コロナ騒ぎのため健診は厳重で、まず体温が測られ、熱がないか調べ、さらに問診があってからスタートする。歯科でももちろんグローブ着用、デンタルミラーもディスポを使用、子供の頭を置くところには、これもディスポの敷布を使い、さらに一人検診するたびに清掃が行われる。
相変わらず、虫歯は少なく、ざっと30人くらいみて、虫歯のある子どもは三人くらいであったが、反対咬合は3人、将来、凸凹になる可能性の高い、乳歯の閉鎖歯列、叢生の子どもが10名ほど、かみ合わせが深い、出っ歯になる可能性が高い子どもが10名ほどいた。乳歯歯列での理想的、すなわち隙間が十分にあり、かみ合わせも切端に近い、浅い子どもはそれこそ、数名もいなかった。それ以外の子どもたちも大きくなると何らかの不正咬合になるのだなあと思った。
反対咬合のお子さんは、近医でムーシールドや他の矯正装置を使っているとのことだが、あまり使ってくれず、一向に治らないと言っていた。日本矯正歯科学会の反対咬合のガイドラインは出ていないが、おそらく3歳児への矯正治療は、長期的にはムーシールドを含めて効果がない、あるいは証明できないという結論になりそうである。当院でも以前、ムーシールドは10例ほど使い、いずれも乳歯の被蓋は改善したが、永久前歯が萌出する時期になると反対咬合となり、今度は上顎骨前方牽引装置、さらには叢生に対する治療も必要となり、ムーシールドだけで、理想的な歯並びになった症例はない。つまり従来の永久歯萌出時期(6-10歳)の一期治療の前に3-6歳の乳歯期の治療が必要となり、乳歯期治療、一期治療、二期治療の3期の治療が必要になる。これは管理上大変で、反対咬合の患者は少なくとも成長終了まで見ていかないといけないので、男子の場合、18歳くらいまでの15年間の管理が必要となる。こうした長期管理のため、うちでは子供の患者は最近では断ることが多い。
家内に言わせると、一般歯科の先生は、3歳児の反対咬合の患者がくれば、ムーシールドによる治療を行い、費用を単純に請求するだけで、18歳まで面倒をみるという気はさらさらないし、そもそもそんなことは考えないと言う。確かに日本の保険医療は全て出来高払いであり、症状があればそれを治療してその対価をもらう構成となっている。一方、矯正に費用体系は、世界中、概ね請負制度で、治すまでの費用を請求する。すなわち一期治療が20万円、二期治療が20万円とすれば、使用する全ての装置費用はこれに含まれる。よく考えれば、医療分野でこうした例はあまりなく、患者も歯科医も出来高払いの制度の方がむしろ慣れており、矯正のような請負制度には馴染みはない。
ただ一部の一般歯科の中には、こうした請負制度を理解せず、料金だけ矯正歯科医と同じような料金体系を利用している例がある。その場合、乳歯から治療を始め、永久歯が逆に生えれば。それを治し、さらに叢生になれば、マルチブラケット装置で治す。それら全ての加味したのが請負制度であり、料金体系なのである。それゆえ、請負制度の料金体系をするなら、成長期の一期治療で治らない場合、二期治療はできないとは言えない。例えば、一期治療でうまくいかなければ、請負制なので二期治療でカバーすることになる。こうしたことを理解せず、法外な治療費を請求する歯科医院があるが、無責任といえよう。請負制度を取りながら、途中で私の技術では請け負えないと言うのは話にならず、もし請負制の料金制度にするなら最初から、例えばマルチブラケット装置による治療はできない、外科的矯正はできないなど、自分の治療の限界を十分に患者に説明すべきであろう。
患者の方も、こうしたことも確認せずに、歯科医の言われるまま治療を行い、不満を言うのは問題で、矯正治療をするのであれば、何軒か、治療をしている歯科医院に相談し、よく説明を聞くべきである。装置ごとの費用であれば、仕方ないが、基本治療費として大金を請求されるなら、それがどこまでカバーしているのか聞くのは、当たり前のことであり、それさえしないで、後で文句を言うのもおかしい。乳歯列で反対咬合の治療行うのはエビデンスの点では問題があるが、やること自体は別に構わない。ただ最終的には永久歯のかみ合わせが正常になることが目標なので、まず1。永久前歯が逆になった場合、どうするのか、2。永久歯が全て萌出して、でこぼこ、あるいは反対咬合の場合はどうするのか、3。いつまで治療、管理をするのか、この三点については必ず質問し、その費用について尋ねておくべきである。正解は、1。永久前歯が逆になれば、その時点で再度、違う装置で治療する。2。抜歯も含めて、その時点で、もう一度検査して、マルチブラケット装置による治療を行う、3。骨格性反対咬合の場合は、下顎の成長が終了するまで、男子で18歳くらい、女子で16歳くらいまで見ていく必要がある。もし永久歯になり、マルチブラケットによる治療が必要なら、矯正専門医に紹介すると言われたなら、もちろんそこでの治療費は全くの新患扱いになり、これまでかかった費用は無駄になる。そうした場合の返金があるかも確認すべきであろう。早期治療費が30万円かかり、マルチブラケットによる治療が必要な場合は矯正専門医に紹介するなら、最初から矯正専門医に行った方が結局は安く済む。
矯正治療は緊急性が全くないので、もし子供の歯並びが気になるなら、あちこちの歯科医院を受診し、色々な質問をして納得してから歯科医院を決めるべき、そして一旦、治療を始めたら、その先生を信頼して治療を最後までやってほしい。
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