2021年2月25日木曜日

東奥義塾 英語を重視した中学校 新設

 



 弘前の東奥義塾高校では、来年4月に英語教育を重視した中学校を新設すると発表した。従来の英語授業のほか、数学、理科、社会の3教科を英語で行い、週4時間の英語学習を11時間程度に拡大される。中学生から英語を大いに学ばせ国際的な人物を養成しようということであろう。ネット時代、世界はますます距離のない、ボーダレスの世界になっており、その共通言語としての英語の価値が高まっている。大学、ことに私立大学の入学試験を見ても、英語の比重が高く、文系学部では英語の成績が悪いとなかなか有名私立大学に進学することは難しい。こうした社会変化に対応した東奥義塾の試みは評価できる。

 

 授業を全て英語で行う学校といえば、以前から日本に住む外国人を対象にしたインターナショナルスクールがあり、本来、日本人の入学は許されなかったが、一部の日本人の親がわざわざ無理して自分の子供を入学させていた。確かこうしたインターナショナルスクールは日本の高校として認可されていないので、もし日本の大学を受験するなら、大検を受けなければいけなかったと思う。基本的には海外の大学進学を前提とした学校であった。その後、国際バカロレアというスイスにある団体の教育スケジュールの沿ったカリキュラムを実践する学校が登場し、国際バカロレア認可校として認められると海外への大学進学に有利となる。日本政府もサポートする教育システムであり、方式もいろいろあるが、現在日本国内で認定校は35校くらい、東北では仙台育英学園高等学校がある。

 

 実はこうした取り組みは、明治時代にもあり、東奥義塾でも授業のほとんどを英語で行い、同校の卒業生で陸軍中将となった浅田良逸の談話では、陸軍士官学校に入学してもしばらくは数学や化学の授業がさっぱりわからなかっという。というのは、浅田は東奥義塾でこれらの授業を全て英語で授業を受けていたので、日本語の授業についていけなかったようである。逆に弟の笹森順造は、弘前中学、早稲田大学卒業後に渡米したが、英語が当初、ほとんど分からず、地元の小学校のクラスに入学して学んだようである。兄の笹森卯一郎は、東奥義塾を卒業し、そのままアメリカのデポー大学を優秀な成績で卒業し、哲学博士号を取得したのに比べ、苦労している。他にも横浜共立学園も、明治の初め、学生の多くは寄宿生活、また英語のみの授業であったので、ここの卒業生、岡見京、菱川やす、須藤かく、阿部は留学した女子医大でも優秀な成績で卒業しており、渡米した直後でも綺麗な英語を話すと地元新聞でも書かれている。

 

 こうした事例でわかるように、国際バカロレアのような英語による授業を受けることはアメリカの大学に留学する際には大きなメリットとなりそうである。ただ問題は、こうした優秀で、海外の大学に進学する学生にとっては優れたシステムであっても、普通の学生にとっては英語の授業はかなり大きな苦痛となる。明治時代に東奥義塾でも、英語の授業はさっぱり分からんと不満をいう生徒も多く、こうした授業についていけ、進級する生徒はわずかで、初期の卒業生は毎年、数名足らずであった。これでは入学する生徒も減るため、少しずつ英語による授業を減らし、再興した大正期からは通常の学校となった。同様に横浜共立学園も外国の宣教師が減少するにつれ、日本語の授業が増えていった。

 

 国際バカロレアの中学生からの教程を持つMYP(Middle Years Programme)は、認定校の中でも少なく、インターナショナルスクールを除けば、11校しかなく、東北では仙台育英の中学校、今年4月開校の秀光中学校が最初の試みとなる。東奥義塾も将来的にはこうした国際バカロレア認定校を目指していると思うが、積極的な留学生の受け入れと生徒の海外留学なども必要と思われる。さらにいうと、国際バカロレア認可校の多くは、最近の国際化に伴った新たに開校した学校で、宗教的バックボーンがある学校といえば関西学院千里国際中等部、高等部くらいで、ここも母体は東奥義塾と同じプロテスタント系の関西学院大学であるが、中高の開校は1991年にできたばかりである。東奥義塾は、伝統あるプロテスタント系学校としての特徴を生かし、欧米、アジアのプロテスタント系学校と提携を結び、相互学生交換なども視野に入れた方が良い。また一度は挫折したが、中学新設を機会に、本多庸一、阿部義宗、小坂ガン城(父親が弘前出身)、笹森順造の4名の院長、第3代理事長、平田平三ら、東奥義塾と関係が深い青山学院大学との提携、推薦枠の増加を図りたい。また初期の留学生がいったアメリカ、デポー大学にも、将来、東奥義塾から卒業生が進学したらと思う。

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