悲しいことだが、金儲けのためにマウスピース矯正を始める歯科医がいる |
マウスピース矯正をビジネスとして始めたアメリカ・インビザライン社は、今やアメリカのベンチャ企業の成功例として有名である。1997年に創立、2001年にナスダックに上場した際の株価は18ドル、その後、リーマンショックの時は5ドルに、そして今は546ドルととんでもない株価となっている。従業員数は11600人、2018年度の売り上げは19億6650万ドル(2060億円)、そして営業利益も4.7億ドルと高い。現在、トータルのアライナーの出荷数は5億4500万個、患者数は680万人、インビザラインをする歯科医は16万人とされている。成人矯正市場ではすでに43%を占めて。さらに多くの似たような企業がこの分野に進出しているので、マウスピース矯正の比率はもっと高いのだろう。
このインビザライン社も、1998年頃から出された多くの特許が2018年頃から切れて、他のメーカーの参入を許すようになってきた。ただ現状ではアタッチメントなどを使った複雑な歯の動きはインビザライン社の特許であるので、インビザライン社以外のマウスピース矯正の会社は簡単な症例しか治療できない。一方、インビザライン社のアライナーはかなり広範囲の症例に適用できるようになったが、まだまだワイヤー矯正のレベルには達しておらず、ワイヤー矯正もまたデジタル化に進む傾向があるため、複雑で難しい症例はまだまだワイヤー矯正が主力であるし、簡単な症例は他の安いメーカーのマウスピース矯正に取って代わる可能性がある。
軽いでこぼこなどを含めると、日本人でも人口の70%くらいは何らかの不正咬合であるが、そのうち10%くらいが実際に矯正治療を受ける。ただ最近の傾向を見ていると、割合簡単な不正咬合でも矯正治療を希望するため、矯正治療をする患者数は増えるのかもしれない。また中国や東南アジアなどの国ではもともと歯並びに対する関心が高く、国の経済状態が向上するにつれ矯正治療を受ける患者も増えるであろう。こうした患者のいくらかはマウスピース矯正を行うので、世界的規模で見れば、まだまだインビザライン社の快進撃は進むであろう。
歯科器材の世界で最も大きな会社、Dentsplyの売り上げが40.3億ドル、従業員が16000人であるので、すでにインビザライン社はそれに匹敵する会社になっている。1997年の創業したベンチャ企業がここまで大きくなったのはすごいことである。ただ利用者が増えるにつれ、適用症例も増大し、それに対応するためにはアタッチメントの多用や途中での治療方針の変更、おそらくは今後はセファロ、CTデータの利用、一部、ワイヤー矯正の併用など、治療法自体が複雑になっており、全くの矯正治療未経験者には敷居が高くなってきているのも事実である。そうしたことから矯正歯科専門医は引き続き、インビザライン社のアライナーを使うだろうが、一般歯科では、もっと簡単な、何も考えずに患者に装置を渡せば良いようなマウスピース矯正を好むであろう。”Smile Change”というアメリカの“Smile Direct Club”のように、自宅に口の型をとり、歯科医院に行かなくても、患者さんにマウスピースが送られて治療をするところが日本でも出てきた。ちなみにこの”Smile Change”では矯正料金は20万円くらいなのでかなり安いが、本ちゃんの”Smile Direct Club”も日本に上陸すれば10万円以下になろう。日本でもエステと歯のホワイトニングを併設しているところがあるが、300万円くらいのデジタル印象の機械を購入すれば、こうしたところでも”Smile Direct Club”のようなことは可能なので、後数年以内に、多くのマウスピース矯正を行う歯科医院でない店が出るであろう。
ただ現状でもマウスピース矯正については、かなりクレームがあるため、こうした一般のエステなどで治療が行われるようになると必ず、消費者センターで問題となり、契約書、途中契約解除などを含む特定商取引法の適用になると思われる。日本人、アジア人では口元の突出感が気になる患者が多く、どうしても白人に比べて上下の前歯を中に入れる必要がある。そのため、でこぼこが軽度でも、口元の後退を希望する患者が多く、ディスキングだけでは空隙が足りず、小臼歯の抜歯症例が多い。マウスピース矯正では小臼歯抜歯症例では治療が難しく、個人的な意見ではディキング+マウスピースの症例は多くても不正咬合の半分くらいと思われる。
非抜歯、抜歯のボーダーラインケースで、非抜歯で治療してある程度でこぼこが取れてから、抜歯するか決めましようと治療したケースは50症例を超えるが、70%以上は最終的には抜歯治療による口元の後退を希望する。
0 件のコメント:
コメントを投稿