東京などの大都会では歯科医の数が多くて、経営が苦しいという声を聞くが、弘前のような地方では、そろそろ歯科医院の減少傾向が始まっている。弘前の例で言えば、昨年は2件の歯科医院が廃業したが、新規開業はなく、こうした傾向はここ数年続いている。
青森県の歯科医師会の名簿を見ていても、昭和30年代前後に生まれた先生が多く、私も昭和三十一年生まれで今年65歳になり, サラリーマンで言えば定年年齢となる。70歳くらいで引退したいという先生が周りにも多く、あと数年でこうした世代の先生は引退する。すると現在の歯科医院の半分くらいなり、新規開業のペースが落ちれば、地区によっては、全く近くに歯科医院がないところが出てくる。
最近の子供たちは、昔に比べて虫歯が本当に少なく、十数年前はまず3歳児健診で、虫歯も持つ子供が減ったと感じたが、最近では中学、高校の歯科検診でも同じような傾向があり、全く虫歯がない子供もそれほど珍しいことではない。うちに矯正治療にくる成人患者の多くもほとんど虫歯あるいは処置歯がなく、初めて来た歯科医が矯正歯科という患者も珍しくはなくなった。一方、40歳以上の患者さんは、それこそほとんどの歯が治療されていて、若者との差が大きい。
今回、新たにダイアグノデントという機械を購入した。これはプローブの先からでたレーザー光でう蝕の程度を探知する機械である。かなり前にでた商品で、こんな装置を使わなくても慢性のカリエスか進行性のカリエスがわかると考え、無視していた。ただ最近では若者の虫歯が少なくなり、虫歯の進行が遅いCOと呼ばれるものも多くなってきた。ほとんど虫歯がなく、大臼歯の溝の部分が若干黒くなっている症例である。こうした軽い虫歯はあまり進行せず、そのままの状態で変化のない場合も多い。ただあくまで主観的な判断であり、こちらがCOと思っていても、一般歯科医で虫歯とされて治療されることがある。ある時、27歳の患者さんがきて、矯正治療のために抜歯するので、近医を紹介すると、大臼歯全て虫歯で8本の治療が必要と言われて、かなりショックを受けたという。調べるとほとんどCOの歯で、すでに処置した2本のレジン充填歯の方が将来的に二次カリエスになりやすそうである。虫歯が少なくなったことで、こうした慢性の進行しにくい虫歯を治す歯科医院も多い。
医原性の疾患ということがあり、私も第二大臼歯3本の溝はすこく黒くなっており、COの歯であるが、ここ50年くらい変化はない。他の一本は学生自体にアマルガム充填の実習のために治したが、ここが少し虫歯になっており、治さなくてはいけない。おそらく他の3本の第二大臼歯のように何も治療しなければ、進行しなかったであろう。予防歯科の観点からが、こうした慢性のCOの歯については経過観察をして、進行するようなら処置するようになっているが、具体的な数値で示されない。ダイアグノデントは、こうした虫歯の程度を数値化できるので、その変化をみて、主治医に虫歯の依頼をしようと考えている。慢性の場合は、その数値を記載し、進行した場合にその数値変化を示して、治療を依頼する方が患者にとってもいいだろう。
測定結果の正確性などはしばらく使ってみて報告したいと思う。これまでの歯科治療を主として虫歯が中心であったが、今の若い世代が中心になる2040年以降は、歯周疾患や不正咬合が中心となり、虫歯については、下手な措置をするよりはこうした機器を用いて経過観察するのが普通となるだろう。いくら治療技術が進んでも、健康な歯よりいいわけではなく、必ず問題、具体的には二次カリエスのリスクは増加する。二次カリエスなどで再治療を必要とされる年数はレジン充填で3532日、メタルクラウンで3276日、およそ9年から10年でダメになる。違う研究ではレジン充填の耐用年数は2-3年、平均使用年数は5.2年で非常に短く、まちまちであるが、個人的な感触では、COの歯の中には10年や20年変化しないケースも多く、早くにレジン充填などをすることはかえって歯の寿命を早める要因になる。
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