現在、「弘前歴史街歩き」というタイトルの新たな本を出す準備をしており、大枠はほぼできた。文字数で10万字、写真100枚くらい、150−200ページくらいの本になりそうである。弘前駅から出発し、代官町、土手町、上白金町、弘前城、仲町、和徳町などを歩いて、そこに見える建物、商店などを解説するというもので、内容の細かい修正を後、3、4ヶ月して、その後、出版社と協議することになる。
「明治二年弘前絵図」、「新編 明治二年弘前絵図」、「津軽人物グラフィティー」、「須藤かく 日系アメリカ人最初の女医」の4冊を全て自費出版した。こうした地域限定の出版物では、出版社が企画して書くということはまずあり得ないので、ほぼ自費出版となる。
この自費出版の目標となるのは、まず本の完売で、印刷した本、全て売れるのが一番望ましい。ただこれは印刷数にも依存するので、まずどれだけ印刷するか決めるのが難しい。最初の「明治二年弘前絵図」は、300部ほど刷り、これはどことも契約しないで、直接、紀伊国屋書店弘前店に交渉し、持ち込んだ。家から近いせいもあり、積み上げられた本を2、3日おきにチェックし、冊数が減れば補充するという形で、自分用の50冊を除き、2、3ヶ月で完売した。次に出した「新編明治二年弘前絵図」は、500冊印刷し、今度は印刷した会社に販売も委託した。これも1ヶ月ほどで完売し、すぐに500部を増刷して、2.3ヶ月で売り切れた。地方雑誌、それも弘前に限定した本が1000冊売れるのはいい方だと思う。その後、「津軽人物グラフィティー」も、明治二年弘前絵図を買った人はこの本も買うだろうと考え、500部印刷したが、全く売れず、六年たった今でもまだ100冊以上余っている。さらに一番の力作、2017年に出版した「須藤かく 日系アメリカ人最初の女医」に至っては、500部刷り、四年経つが未だに300冊以上残っている。最近、出した2冊はいずれも200-300冊程度しか売れていない。
本の本来の価格は、印刷費、販売店の手数料、本屋の手数料、著者の利益で構成され、手数料は15%、25%のほぼ40%かかり、通常はこれに著者への印税の10%となる。そのため、発行部数の少ない、1000部以下の専門書などかなり高くなる。発行部数が増えれば増えるほど、一冊当たりの印刷単価は安くなり、300冊と1000冊でも編集、校正などを含めても、一冊当たりの単価は2/3から半分以下となる。
こうしたことを考えて、本の定価を決めるのだが、もとより自費出版の場合、利益は考えておらず、マイナス分をいかに少なくするのかが目標となる。「明治二年弘前絵図」の場合は、200冊、販売店を介さず、直接、本屋に持ち込んで売ったため、マイナスは少なかった。さらに「新編明治二年弘前絵図」では増刷した500冊の販売で、少し黒字になった。ところが、「津軽人物グラフィティー」は、当初から印刷費が高くなり、それに手数料の40%を加えると、2000円以上となる。これでは高くて売れないだろうと、200円赤字設定して1800円に定価をしたが、だいぶ売れ残り、かなりのマイナスとなった。さらに「須藤かく」に至っては、ほとんど売れずに、最大のマイナスとなった。
今回の本は、前回の本に比べて少し砕けた内容なので、もう少し売れそうだが、それでもせいぜい200-300冊が限界か。「津軽人物グラフィティー」より少し厚くなりそうだし、印刷費によってはカラー化も考えているので、印刷費は高くなりそうである。購買層は弘前に住む60歳以上の方が中心であり、年金生活者も多く、なかなか2000円以上の本は買わない。図書館で借りて読む人も多い。本を購入する人は、一部の本好きの人を除くと、仕事が忙しくて、なかなか図書館に行けない40-60歳の人は中心で、65歳以上の人は、新刊が出ても1ヶ月すれば図書館で借りられるので、買う必要がない。
発行部数と定価、これは本を出す側からすれば一番重要なもので、今のように若者が本を読まないような時代では、自費出版自体が減り、また発行部数も減り、定価が上がるという悪循環となり、ますます売れなくなっていく。まあ自費出版は、金と手間ばかりかかる趣味と言えるが、30年後も自分の本が古本屋や図書館に残っていて、誰かが読むという夢もあり、それが楽しい。
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