2021年9月22日水曜日

矯正歯科医が足りない

 

 以前のブログでは、歯科医も高齢化が進み、あと10年くらいで今の半分くらいになるようなことを書きました。特に専門分野が限定されている場合、例えば、矯正歯科についていえば、数年前まで、矯正歯科のトレーニングを受けて専門開業していた先生は、八戸市に2名、十和田市の1名、青森市に2名、弘前市に2名の計8名いましたが、八戸の先生の一人は亡くなり、青森市の1名の先生は診療の拠点を青森から奥さんが開業している東京に移しました。さらに八戸のもう一人の先生、青森市の一人の先生、十和田市の先生は私と同級生で、あと5年くらいでは引退する可能性があると思いますし、すでに十和田市の先生は半分、リタイヤしています。そうなるとあと10年後には、青森県の矯正歯科専門医院は、八戸市が0名、青森市が0名、弘前市が1名となります。

 

  新しく開業する先生はどうかというと、今のところ、青森市の先生の息子さんが大学矯正歯科学講座で修練し、親の跡を継ぐので、青森市は1名となります。それでも青森県の矯正歯科医は計2名で全く足りません。何とか、こうした事態を回避したいのですが、まず一人前の矯正歯科医を育てるには、歯科大学卒業後、1年の研修医、その後、矯正科の医局に残り、最低6、7年の研修で認定医、さらに数年して専門医の資格を得るとなると、少なくとも卒業後10年以上かかります。この間、給料をもらえればいいのですが、なかなか助教などの職を得るのが難しく、結局、矯正歯科専門医は、全国で29校ある歯科大学で、各校で毎年、2名ずつの先生を出しても、60名くらいで、その多く札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡などの都市部や学校のあるところで開業するので、なかなか青森のような地方に来ることは少ないと思います。

 

 アメリカでは卒業後、3年の専門大学院での修練で、一応、専門医の資格ができるので、日本よりもっと簡単に、専門医の資格を取れます。日本の国立大学歯学部では、矯正歯科講座に入局する条件として、大学院に入ることを求めます。この大学院は簡単に言えば、基礎の講座に行って、研究を行い、その合間に矯正歯科の教育を受けるもので、あくまで、将来の研究者を育てるコースです。教授になるなら、こうした基礎研究もいいのですが、将来矯正歯科の臨床をするのであれば、基礎研究は全く必要ありません。アメリカで矯正歯科の専門医になるためには、歯科大学卒業後、3年の矯正歯科のコース(大学院)に入り、ここで朝から晩まで、厳しい、教育を受けます。大学病院は民間の歯科医院の半分くらいの費用で治療を受けられるために、矯正歯科治療を希望する患者さんも多くいて、矯正歯科を専攻した学生にも多く配当されます。一般的なコースでは、基本的な文献の読破、そこの大学を卒業したOBによる実習などかなりぎっしりしたカリキュラムがあり、ここの集中的に矯正の臨床技術を学びます。学費が大変高く、日本円で毎年500万円から1000万円かかるために、卒業後は、引退した先生のオフィスを買い取り、稼いで、授業料を返却します。あるいは優秀な先生のところで働いて、さらに経験、技術を学びます。青森県の三沢の米軍基地でも卒業したての矯正歯科医が働いていました。軍人は治療費が無料なので、多くの治療ができるためです。

 

 国民が最良の医療を受けられるためには、近くに高度な専門性を持つ先生が必要で、こうした医師不足の状況を考えると、一刻も早く、国立大学歯学部の大学院大学を、法科大学院のような専門職大学院にすべきだと考えます。歯科研修医制度もあまり意味のないものですが、廃止にはならないようなので、少なくとも研究者を養成する大学院大学は、即刻やめて、3年の臨床コースを作るべきで、その後、日本矯正歯科学会の試験に合格すれば認定医、さらに開業、勤務でもう少し経験を積んで、日本矯正歯科専門医機構の専門医に資格を得るようにしたらどうでしょう。現行のシステムでは、卒業後、10年かかるのが、4年ほどで矯正歯科医になれるので、希望者も増えるでしょう。毎年、全国で300名くらいの認定医になってくれないと、全国の矯正治療をカバーできないように思えます。

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