2023年9月14日木曜日

矯正治療を受けている人はどれだけいる

 



歯並びの悪い人は、種々の研究によっても違いますが、およそ半分、厳しく評価して20%くらいの人が治療をした方が良いという結果になっています。ただこれについては軽度の不正咬合、特にでこぼこや、口元の突出(上下顎前突)を含めると80%以上が不正咬合となります。普通の人が見て凸凹もなく、口元もキリッとしていて、理想的な咬合となると、1%もいないくらいで、多くは矯正治療をした人です。

 

これに対して、実際に矯正治療を受けた人の割合というと20%くらいで、さらにマルチブラケット装置による本格的な矯正治療を受けた人はさらに少ないと思います。ただこの数値もどうやら地方によってかなり違うように思えます。そこでどの程度の人が実際に矯正治療を受けているか、矯正歯科専門医、あるいは認定医の数から推測してみます。

 

まず東京の人口は約1400万人、矯正歯科認定医に数は751名、18600人に一人となります。一人の矯正歯科認定医の歯科医院で、1年間で治療を開始する患者数を80名、一般歯科で矯正治療を受ける人が同数いるとすると合計160名、人口の0.86%が矯正治療を開始することになります。累積するとおそらく矯正治療経験数は20-30%くらいになるのでしょう。

 

これに対して、例えば青森県の人口は125万人、歯科矯正認定医数は9名なので、139000人に一人となります。東京の約7.5倍になります。東京と同数の人が矯正治療を始めるとなると、一軒あたり600人ということになりますが、もちろんそんなに患者さんは多くなく、一軒当たりの新患数は80-120名くらいと思います。弘前市が最も矯正歯科認定医が多く、18万人の人口に対して4名いて、45000人に一人、東京の2.6倍くらいとなります。少ないのは青森市で、人口28.8万人に対して1名、288000人に一人、さらに八戸市は23.1万人に対して隣の三沢市を入れても2名しかなく、これも116000人に一人と、かなり少ない状況です。さらに人口の多いところでは、十和田市(6万人)、五所川原市(5.1万人)には矯正歯科医はおらず、むつ市(5.4万人)には一人います。総じて矯正認定医の数は少ないと思います。

 

お隣の秋田で見ると、人口は96.6万人で、認定数は9名で青森県と同じですが、人口の多い秋田市(30.7万人)に5人いて、60000人に一人くらいとなっています。また二番目に人口の多い横手市(8.6万人)に一人、由利本荘市(7.5万人)に一人、大館市(6.9万人)に一人いますが、大仙市(7.7万人)にはいません。ただ秋田市で開業している友人の矯正歯科医院には年間600人以上の新患が来るようで、これは全国でもトップクラスと思いますが、青森よりは秋田県の方が矯正治療を受ける人が多いように思えます。県民所得の最下位の沖縄県(145.7万人)でも17名の矯正歯科認定医がいるところも見ると、沖縄も青森より矯正治療を受ける人は多いのでしょう。同じく、青森県の隣県の岩手県でも認定数は38名と多く、大学にいる先生を除いても25名の認定医がいることから、青森県が認定医の数も少ないし、治療を始めようとする患者も少ないように思えます。

 

 

当院の2022年度に顎変形症の患者数は18名、そのうちに4名が他院からの紹介患者でした。実はこの18名のうち、子供の頃に矯正治療を受けた、あるいは経過を見ていた患者は4名でしたが、これは全て他院からの紹介、すなわち県外の患者さんでした。残りの14名は県内の患者さんで、かなり重度の不正咬合(4名は上顎前突、10名は反対咬合、下顎前突、顔面非対称)でしたが、子供の頃に治療は受けていませんでしたし、そもそも歯科医院に相談に行ったこともなかったようです。反対咬合の場合、上の切歯が萌出する8歳頃にはすでに反対咬合になっており。学校歯科検診でも指摘されていると思いますが、それでも歯科医院を受診することはないようです。このことは、青森県の場合、矯正歯科専門医も少ないが、治療を受ける患者も少ないことを意味し、今のところそれほど患者が多くて困るという状況ではないのかもしれません。

 

例えば県庁所在地の青森市の場合、矯正歯科認定医は1名で、この矯正歯科専門医院も週に3日の診療で対応している、できています。人口29万人の都市で一軒の矯正歯科医院、それも週の半分、すなわち0.5人で対応できているのが現状で、この人口で言えば東京では15人の専門医がいることになります。もちろん一般歯科医院で矯正治療を受ける患者も多いのですが、単純に考えれば、矯正治療を受ける患者数は東京の1/30と言えるのかもしれません。この理由として、若者の都会への流出が多く、地元で治療しないでそちらで治療を受ける、給与が安くて治療できないなどもありますが、同様なことは全国の地方にも当てはまります。おそらく一番関連するのは子供の教育費で、一人あたりの教育費は、一位の東京が455000円に対して、最下位の青森県は104667円でほぼ1/5しかありません。子供の矯正治療まで手がまわらないのでしょう。また女性の洋服購入額も青森県は全国最下位、年間29700円で、一位の徳島県71890円のほぼ半分以下で、化粧品購入額も46位、22000円、一位の広島県が38000円ですので、あまり見た目に気にしない、結果、歯並びが悪くても治療しようと思わないでしょう。

 


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