2024年5月23日木曜日

津軽地域の顎変形症患者

 


前回のブログでは、青森県、津軽地域の唇顎口蓋裂患者のことを書いた。その後、顎変形症患者についてもようやく集計が終わったので報告する。

 

開業した1995年から2023年までの、顎変形症患者数は414人、年平均では14.8名となる。これは検査に入った患者の数で、初診で説明を受けて、手術までしたくないと諦めた患者は含まれない。この患者を含めれば、450人以上となる。また414名のうち、検査だけして、治療に入らなかった、あるいは動的治療途中で転医、稀に来なくなった患者は20名くらいで、ほぼ90%以上は手術を受けて保定に入った患者である。

 

不正咬合別に見ると、下顎前突(反対咬合)が最も多く、359名(86.7%,次に多いのは顔面非対称(顎のずれ)で30名(7.2%,そして上顎前突の25名(6.0%)となる。下顎前突の中には顎のずれを併用する患者も多い。また近年は、上顎前突の患者も多くなっている。推移をみていくと、多少の増減はあるものの、年間15名程度の患者が確実にいて、また近年は上顎前突の患者も増えて、20名近くになっている。

 

地域別に見ると、弘前市からの患者が205名(49.5%,青森市の患者が28名(6.8%,

五所川原市が36名(8.7%,弘前周辺の市町村が124名(30.0%)、県外(主として北秋田)が21名(5.1%)となっている。弘前市とその周辺の市町村、黒石、藤崎、板柳などで全体の80%近くになっている。

 

コナロが流行する2022年以前は、18歳以下の患者が多く、成人患者の割合は20-30%であったが、その30-40%が顎変形症例であり、比率は高い。つまりインビザラインのような主として成人を対象にする歯科医院では、その30-40%が顎変形症患者といえよう。

 

連携機関は、2010年頃までは、ほとんどが弘前大学医学部附属病院、歯科口腔外科で手術をしてもらい、たまに東北大学病院や大館市立病院(秋田大学)で手術をしてもらった。近年では弘前大学で研修を受けた先生が八戸市立市民病院で受け入れているので、ほぼ半分の患者はこちらでしてもらっている。弘前大学医学部歯科口腔外科の手術実績を見てみると、顎変形症の年間手術数は20-30症例なので、うちと青森市のI矯正歯科のケースがほとんどだと思われる。県南の八戸市の患者はおらず、八戸のN矯正歯科で矯正治療をしていると思われる。そのほか、青森県の大きな病院として青森県立病院などの他の医療機関での症例はいない。

 

手術を受けた年齢については、今回調べていないが、女子では高校一年生頃から術前矯正を行い、高校二年生で手術、高校三年生で保定というスケジュールを組めるが、男子では成長が終了していない場合も多く、高校卒業後に始めることも多い。県外に進学、就職する場合は、そちらに紹介することになる。

 

Skeletal Class Iというのは、上下のアゴの前後的にずれがない状態をいい、Skeletal Class IIは主として下顎が小さい場合、Skeletal Class IIIというのは下顎が大きい場合をいう。平均よりズレた症例が手術の対象になるならば、下顎のずれ、大きい症例と同数の小さい症例もいるはずで、理論的にはSkeletal Class IIIIIの外科矯正症例は同数にならなくてはいけないが、実際はClass IIIの方が圧倒的に多く、今後、Class IIの外科矯正患者も増えると思われる。またSkeletal Class Iであっても正面からの顎のずれ、顔面非対称の症例もそこそこいてこれも外科矯正の対象となる。

 

外科矯正を受ける多くの患者さんにとって、歯並びより顔の形の方がコンプレックスがあるため、ボーダラインの症例で、手術を併用した治療法と、歯の移動による代償的な治療法の二案を提示しても、ほとんどは外科矯正を選択する。多分、費用も保険適用になるからだと思うが、今後も患者数はさらに増えそうである。ただ大学病院の問題は、教育機関であるため、公立病院のように同じ先生がいつも手術するわけではなく、専門医を取るために若い先生が手術をすることも多く、結果に少し波がある。仕方がないことかもしれないが、せっかく顎離断の手術をマスターしても、一般歯科で開業するのは勿体無い。東京には顎変形症専門医院があり、数千症例の手術をしており、こればかりは大学病院で十数例の手術をしたところで、手術時間、出血量、結果もかなわない。

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